添乗報告記

添乗員報告記●西ブータン四都周遊とパロ・ホームステイ9日間(2007年12月)

 

2007年12月29日~2008年1月6日  文●荻原文彦(東京本社)

冬のブータンは、お祭りもないし、寒くて、地味なのでは??
でも、そんなの関係ない!?
年末年始の9日間、12名のお客様と一緒に歌い、笑い、踊り、そしてボーっと冬のブータンを楽しんでまいりました。

バンコクから噂に名高い大旋回の後、パロ谷の空港に到着。1時間半の遅延からブータンの旅は始まりました。
空港では日本語ガイドの“ウゲンさん”と、日本語がちょこっと解るドライバー“ニマさん”が笑顔で迎えてくれました。「クズ・ザンポー!」

冬のブータンで春を先取り ~ウォンディ・フォダンとプナカ~

先ず向ったのは、ウォンディ・フォダン(標高約1,300m)。バナナやサボテンも花をつける温暖なところ。緩やかに流れるプナカ川を望むホテルに1泊した後、ロベサ村と「冬の都」プナカを訪れました。
ロベサ村は谷筋に水田が連なり、中国の雲南省南部やミャンマーを思わせるところ。村の外れの丘の上に建つ「チミ・ラカン」は、子宝の寺として知られています。冬とは言え、パロやティンプーより1,000mも低く、早くも菜の花の一種、マスタードの黄色い花が咲いていました。数名が花畑の前に集まっています。「聞こえますよ。ミツバチの羽音、、、。」
集落を抜け、あぜ道を行くこと20分程ですが、日本から空・陸移動で運動不足気味だった私たちの体を程よくほぐしてくれました。
プナカ・ゾンはポ川とモ川2つの中州に建ち、初代国王の戴冠式や第1回の国会が行われた場所。見事な彫刻と赤・黄・橙・青、、、と装飾され、ブータン随一と称されるゾンに一同「お~!」。(春には、ジャガランタの紫色の花で彩られます。)


子宝の寺への道中(ロベサ村)

祭りの準備中(プナカ・ゾン)


ブータンでの年越しは二度おいしい ~ティンプーにて~

プナカを訪れた後は、ドチュ・ラ峠を越え首都ティンプーへ。峠から中国チベット自治区との国境を成すブータンヒマラヤが望めました。
夕食後、有志で私の部屋に集まると、「うわ!何この部屋広~い。」。そう、年末年始のドンチャン騒ぎに対応すべく、大きな部屋をあてがっていただいたのです。夜9時、つまみやお菓子を持ち寄り、NHK放送を見ながら、まず日本時間(時差3時間)で年越しのカウントダウン。
その後、白い息を吐きながら町のバーへ移動して、ブータン時間でカウントダウンを楽しみましたちなみにブータンの正月はブータン暦(陰暦)で今年は2月7日。
首都ティンプーでは、国王の政庁でブータン仏教の総本山であるタシチョ・ゾンへ(初詣?)。ナンバープレートに番号もなく、「BHUTAN」とだけ書かれた、ランドクルーザーとすれ違いました。中には上品な顔立ちの女性が乗っていました。「今のは、王妃さんです。」とウゲンさん。ものものしい護衛もなく、あまりにも何気ない大事件に、再び「お~!」。
なんとも言えぬ厳かな雰囲気の石畳や、荘厳なたたずまいに息をのむ。尊いお顔の仏像に手を合わせ、疲れる程マニ車を回し、高貴なご尊顔をふたつも仰げた初詣を終えました。

古きよき生活風景が残る ~ハ~

今回は、西ブータン3都(パロ・ティンプー・プナカ)に、古きよき生活風景の残る「ハ」を追加した4都周遊です。
「ハ」は、外国人に解放され始めてまだ7年の町。ティンプーから、松林、段々畑や渓谷を見ながら約4時間の山道ドライブ。春~初秋には、実に緑豊かで素朴な景色が広がることでしょう。「ハ」はホテルが1~2件しかない静かな町。菩薩三山(金剛手菩薩山・観音菩薩山・文殊菩薩山)が均等に連なっているのが印象的で、ラカン・カルポ(白寺)、ラカン・ナクポ(黒寺)、断崖のお堂ジュネダなどがありますが、「何かを見に行く!」というよりは、観光開発の進んでいない古きよきブータンを垣間見れたこと自体が一番の収穫でした。
「ハ」から自動車道の最高地点チェレ・ラ(3,800m)を越えられればパロまで2時間半程度。春が来て、チェレ・ラが通れれば、ブータンの聖峰・チョモラリ(7,314m)やジュチダケ(6,809m)の展望が楽しめるよいドライブコースになります。


ティンプーから「ハ」への道中

なつかしい風景が広がる「ハ」


タクツァン僧院トレックでブータン人? ~パロ~

唯一の空港があるパロは、観光開発も早くから始まりました。しかし、首都ティンプーに比べ、国際社会と接しながらも、「心の豊かさ」を最優先に、自国の伝統と文化を守っている様子が感じられる町でした。見所としては、パロ川にかかる屋根のある木造の「カンチ・レバー橋」から山側に連なる、パロ・ゾン、タ・ゾン。ブータン最古の寺院キチュ・ラカン、ブータンヒマラヤを望む今は廃墟のドゥゲ・ゾン。そしてタクツァン僧院と盛り沢山です!
いずれも見ごたえがあり、甲乙付けがたいのですが、ここではタクツァン僧院参拝トレッキングを紹介いたします。
ブータンの写真で必ず目を引くのが断崖の寺院タクツァン僧院です。北部パロの集落や、リゾートホテル「ジワ・リン」など眺めつつトレッキング開始地点までは、町から車で20分程度。そこから森の中(主に松、木蓮)を歩き始めると、途中の小川で水力を利用したマニ車が静かに、まるで時を刻むかのように回っています。できるだけスローペースを心がけ進むと、徐々に頭上を覆っていた枝や葉が少なくなり、乾期の見事に澄んだ青空が現れます。一番後ろを歩いているウゲンさんが「みんな早いねぇ。ゆっくりねぇ!」と笑っています。
少しでも見晴らしのよい場所に着くと、一息入れます。「空、、、青~い」、「気持ち~い!」、「あっ、飴どうぞ」。ブータンの旅も終盤になり、皆すっかり穏やかなブータン的顔つきです。
今回は健脚の方が多く、歩き始めて1時間ちょっとで見晴らしのカフェテリアに到着。ここでビスケットとお茶をいただき、いよいよ切り立った岸壁沿いの道を進みます。谷から冷たい風が吹き上げ、少々足がすくみます。カフェテリアから1時間でタクツァン僧院に到着。カメラなど身に付けているものを入り口で預けて中へ入ると、2004年に修復完了しただけあり地味ながらも荘厳、グル・リンポチェにありがたく手を合わせて参りました。下りは、来た道をカフェテリアまで30分、さらに駐車場まで40分程度でした。「下りが滑りそうで変に緊張してしまった」、「日本に帰ってから筋肉痛出そう。。。」、「日に焼けた」。困っているはずなのに、なぜか皆笑顔。「今夜、石焼風呂で疲れを癒しましょう!」。
注)乾期は特に下りで、先行者の砂埃がすごいのでマスク必携。お堂の中もかなりひんやりしていますので、重ね履き用靴下も必携です。途中、石楠花もあるので春はさぞ綺麗なこどでしょう!


パロ・ゾンにて

タクツァン僧院


焼け石に星 ~ホームステイ~


村人たちも踊りに加わる
(クンガさん宅)

ホームステイ先『クンガさん宅』は、パロ川沿いの水田地帯にあり伝統的なブータン民家です。ここで2連泊。最初「民家に2泊は、ちょっときついかなぁ。。。」ともらした方も、帰りには「1泊じゃ物足りなかったかも!」と言っていただけました。
盛り上がりを見せたのはやはり、最終日。タクツァン僧院トレッキングから戻り、まずクンガさん一家が準備してくれた石焼風呂(ドツォ)に入ります。木と焼け石の香りでまさに極楽!木の囲いの隙間から、白い湯気が夜空に流れて行くのを見ていると、「心の豊かさ」をブータンがたくさん教えてくれたような気がしました。
夕食後には近所の方々が集まり、ドライバーのニマさんと一緒に歌と踊りを披露してくれました。その中の一人の歌声が、なんとも伸びがあり美しく、いまでも耳に残っています。お返しに私たちからも「上を向いて歩こう」や「森のくまさん」などぐるぐる踊りながら披露しました。夜が更けてから、数名で夜空を見に外へ出ました。白い息を吐きながら、飽くことなく空を見上げていると、首が疲れてしまい、最後にはとうとう、乾いた冬の田んぼに寝ころがって眺めていました。

パロ谷の 冬の田んぼに 寝転びて 空に吸われし 三十路のこころ


ホームステイのお茶タイム
(クンガさん宅)

民族衣装でパチリ
(クンガさん宅)


心残り ~お別れの時~

今回のメンバーは九州、関西、関東、そしてオランダ在住の方、アメリカ国籍の方、普段は個人旅行で、ツアーに参加するのは初めて、という方が多く、旅行中色々な話ができました。
季節的には冬の山村風景が広がり、乾期のブータンの空は予想以上に青く、年末年始に日本の田舎に里帰りしたような暖かい気持ちになれました。
一つ心残りは、あの青空に皆で『影送り(※)』をしたかったこと。
バンコクでは地下鉄に乗り“ナイトバザール”を訪れたり、ティンプーのバーで迎えたカウントダウン、田んぼの真ん中で寝転んで星を眺めたり、皆でひと時童心に帰り歌い、合宿気分で過ごしたホームステイなど数々の思い出が残る旅となりました。
パロの空港で、ウゲンさんとニマさんと別れる時のお客様の感動的な代表挨拶に一同胸が詰まりました。

「ブータンの良さは?」と聞かれても、風の販売部の私もうまく言い表せません。実際に訪れて、そして帰国してからじわりじわりと感じてくる良さがあります。花の綺麗な春、緑豊かな夏、賑わうお祭りの時期、収穫の秋、澄んだ空気と空の冬、それぞれにも良さがあると思います。
「ブータン、良いですよ!」

※『影送り』は、あまんきみこさん作「ちいちゃんのかげおくり」という絵本にも出てくる遊びです。絵本のストーリーはちょっと悲しいお話ですが、ぜひお勧めです。