【バードウォッチングツアー添乗報告記】
5/2発 渡りの本流!春の韓国・離島7日間

ツアー名:渡りの本流!春の韓国・離島7日間

2017年5月2日(火)~8日(月)
文●ツアーガイド:大西 敏一(おおにし としかず)

風の海外バードウォッチングでも定番となった春の韓国・離島の探鳥も今年で6年目。今回は島に4泊する滞在型のゆっくり・じっくりと渡りを堪能するツアーです。北朝鮮絡みでキャンセルが出たため、参加者5名に五百澤さんとのダブル講師という贅沢な旅となりました。

 

 シークレットはワシミミズク!


ワシミミズクワシミミズク


参加者の皆さんとは仁川空港で合流。挨拶もそこそこに、定番となっているシークレットポイントへと向かいました。シークレットなのでこれまでどんな鳥かは明かしていませんでしたが、もう出し惜しみはやめましょう。ずばり「ワシミミズク」です。例年なら初日にクロツラヘラサギの繁殖地にも立ち寄るのですが、ワシミミズクの場所まで時間を要するため、今回は思い切って最終日に回しました。結果的にこの判断が吉と出ることになろうとはその時は思いもしませんでした。

ワシミミズクは海外探鳥でもなかなか簡単に観察できない種です。しかしこれまでの我々のツアーでは100%の確率で見られています。早る気持ちを抑えつつ現地へと向かいましたが、いつものポイントで探せどその姿はありません。五百澤さんとかなり捜索しましたが、いつものペアは6年目にして繁殖が途絶えてしまったようです。


ワシミミズクを探してワシミミズクを探して

それならということで、これまで培った現地研究者と通訳ガイドさんのネットワークで新たなポイントへ急ぐことに。最初に訪れた場所は車で10分ほどのところでした。既に幼鳥も分散していたためかここも姿がありません。もう1ヶ所は40㎞ほど離れた場所のため思案しましたが、ぎりぎり間に合いそうなので最後の望みを託して走りました。

着くと民家裏の小ぢんまりした崖に親鳥と合わせて4羽を確認することができました。皆さん心ゆくまで観察・撮影し大満足されていました。しかし、いつも通りクロツラヘラサギの繁殖地に寄っていたら間に合わなかったことを考えると、ツアーリーダーの一瞬の判断が吉にも凶にも出ることに気が引き締まる思いでした。

 

 離島の渡りを堪能

昨年は爆弾低気圧のせいで渡島はかなわず辛い思いをしましたが、今日明日の予報は晴天で風も穏やか。欠航の心配はなさそうです。朝食前にホテル周辺を散策。カラフトムシクイやキマユムシクイなどがいました。韓国では街中にカラスの代わりにカササギが住んでいます。ショウビン系の声がしたものの姿は確認できませんでした。


観察風景観察風景

船は8時に無事出港。途中2つの島に寄港し、2時間ほどで目的の島へ到着。宿に荷物を置いて早々に探鳥にでかけました。韓国ではこのところずっと晴天続きだったため、鳥がいるか心配でしたが、歩き始めるとその不安も吹き飛びました。マミジロキビタキ(雄ばかり!)とサンショウクイの群れが出迎えてくれ、周辺の林からシマゴマやシロハラ、コウライウグイスの大合唱が聞こえてきます。年によって優占種は異なりますが、(シベリア)アオジとコホオアカはいつもながら多数目につき、今年はシマゴマとシロハラホオジロが特に多いようでした。


サンショウクイの群れサンショウクイの群れ
シベリアアオジシベリアアオジ

当初、滞在2日目の夜に雨が降る予報でしたが、結局島での5日間は晴天で汗ばむ陽気でした。流石にこれだけ晴天が続くと鳥影が薄くなっていきましたが、それでも時々“波”が来るのは大陸の渡りならでは。ブッポウソウ30+、ツメナガセキレイ20+、キマユホオジロ50+などが群れで降ってくる場面も見られ、渡りの楽しさを実感できます。


サンショウクイサンショウクイ

いつも鳥が集まる菜の花畑や湿地跡などのポイントを中心に徒歩で探鳥をし、シマアオジ、シマノジコ、キマユホオジロ、アカマシコ、オジロビタキ、ムギマキ、カラアカハラ、クロウタドリ、コイカル、アカガシラサギ、ブッポウソウ、オウチュウ、カラムクドリ、ギンムクドリ、アムールムシクイ、カラフトムシクイ、マミジロタヒバリ、セジロタヒバリなどを観察しました。


キマユホオジロキマユホオジロ

この時期は様々小鳥たちが囀っている姿を見られるのも魅力の一つです。カラフトムジセッカをはじめ、ムジセッカ、シマゴマ、シロハラホオジロ、コホオアカ、シマアオジ、ムギマキ、カラアカハラ、シロハラなどの囀る姿が見られました。今年は晴天続きで湿地がほとんどないためシギチの姿は少なかったですが、港ではウミネコに混じってモンゴルカモメや脚の黄色いホイグリン系のカモメが観察できました。五百澤さんと常緑林の小山に登ったチームはミゾゴイやアオバズクが見られたそうです。


シマゴマシマゴマ
コホオアカコホオアカ

今回は夕方発の便で本土へ戻るので、最後までじっくり探鳥ができたのも良かったです。鳥が多いポイントの一つである発電所近くでは、ムギマキの群れに混じってオジロビタキの雄がいたり、公園脇の土手にいるハリオシギをじっくり観察しました。昼前からヒタキ類とホオジロ類が増え始め、シマアオジとシマノジコの綺麗な雄やギンムクドリ、ホオジロハクセキレイなども。ツメナガセキレイ10数羽の群れはキタツメナガ、シベリアツメナガ、マミジロツメナガでキマユが1羽もいないのも興味深かったです。今回は超目玉の珍鳥には出会えませんでしたが、渡りの本流を楽しめた結果だったと思います。

 

 本土での探鳥

ツアー最終日は本土での探鳥です。昨年、訪れた場所が最高に良かったので今年はその場所の前に立つホテルに宿泊しました。次の朝、霧が立ち込める中、期待して朝探に出掛けましたが、残念なことにポイントの一部では道路工事が行われ、多くの鳥がいた畑も無くなっていました。それでもシマノジコ、コイカル、ギンムクドリ、ダルマエナガなどを観察できましたが、朝霧も深くこれ以上は望めそうにないので、次のポイントの浅水湾へ向かいました。

途中、シギチが見られるいつもの海岸に寄り、カラシラサギ(婚姻色が美しい!)やミヤコドリなどを観察。オオソリハシシギの群れには亜種コシジロオオソリハシシギがいくつか混じっていました。


韓国の海鮮料理韓国の海鮮料理

昼食後、浅水湾に到着。浅水湾は韓国でも有数の探鳥地です。土手に設置されているハイドの中からクロツラヘラサギやツクシガモ、シギチの姿が見えます。トウネン群れの中にヘラシギを期待して探しましたが今年は出会えずでした。後背地の水田にはエリマキシギ、ツルシギ、オグロシギなどもいました。


本土での観察風景本土での観察風景

もう少し見ていたいところでしたが、最終日は時間との戦いのため、後ろ髪を引かれる思いで最後の探鳥ポイントのソンドへと移動しました。ソンドは韓国ツアーでは必ず立ち寄るポイントです。調整池の人工島にはクロツラヘラサギとモウコセグロカモメがひしめくように繁殖しています。ちょうど今は両種とも雛が孵る時期で可愛い雛に給餌するシーンもじっくりと観察ができました。その他、アカツクシガモやシマアジ、ダルマエナガなどを観察し、今回の探鳥ツアーは終了となりました。

 

 最後に

今回のツアーでは164種の鳥達と出会えました。島は例年に比べ鳥影が薄く、大物の珍鳥も出なかったものの、渡りの醍醐味は堪能できたと思っています。島での探鳥の良い所は、じっくりと腰を据えて観察・撮影が出来るということでしょう。海外探鳥に慣れておられる皆さんもその点を挙げておられました。

とはいえ船には欠航が付きものです。GWあたりは低気圧が通過する時期でもあるので、注意は必要です。でももし、荒れた後に渡れれば目のやり場に困るぐらいの光景を目の当たりに出来ることでしょう。そのシーンを期待し、来年も足を運べたらと思っています。


【今回確認できた鳥達】


コウライキジ、ヒシクイ、マガン、ツクシガモ、アカツクシガモ、オカヨシガモ、ヨシガモ、ヒドリガモ、マガモ、カルガモ、ハシビロガモ、シマアジ、コガモ、ホシハジロ、スズガモ、カイツブリ、カワラバト、キジバト、カワウ、ウミウ、ミゾゴイ、ゴイサギ、ササゴイ、アカガシラサギ、アマサギ、アオサギ、ダイサギ、チュウサギ、コサギ、カラシラサギ、クロツラヘラサギ、クイナ、ジュウイチ、セグロカッコウ、ツツドリ、カッコウ、アマツバメ、ムナグロ、ダイゼン、コチドリ、シロチドリ、メダイチドリ、ミヤコドリ、セイタカシギ、ハリオシギ、チュウジシギ、オグロシギ、オオソリハシシギ、チュウシャクシギ、ダイシャクシギ、ホウロクシギ、ツルシギ、アオアシシギ、クサシギ、タカブシギ、キアシシギ、ソリハシシギ、イソシギ、キョウジョシギ、オバシギ、トウネン、ハマシギ、エリマキシギ、ユリカモメ、ズグロカモメ、ウミネコ、セグロカモメ、モウコセグロカモメ、ホイグリンカモメ、コアジサシ、ハチクマ、アカハラダカ、ツミ、ハイタカ、サシバ、コノハズク、ワシミミズク、アオバズク、ブッポウソウ、アカゲラ、ヤマゲラ、チョウゲンボウ、チゴハヤブサ、ハヤブサ、サンショウクイ、コウライウグイス、オウチュウ、モズ、アカモズ、オナガ、カササギ、ハシブトガラス、シジュウカラ、ダルマエナガ、ショウドウツバメ、ツバメ、コシアカツバメ、イワツバメ、ヒヨドリ、ウグイス、チョウセンウグイス、ヤブサメ、ムジセッカ、カラフトムジセッカ、カラフトムシクイ、キマユムシクイ、バフマユムシクイ、アムールムシクイ、センダイムシクイ、チョウセンメジロ、メジロ、セッカ、ヒレンジャク、ギンムクドリ、ムクドリ、コムクドリ、カラムクドリ、マミジロ、カラアカハラ、クロツグミ、クロウタドリ、マミチャジナイ、シロハラ、アカハラ、ツグミ、オガワコマドリ、ノゴマ、コルリ、シマゴマ、ルリビタキ、ノビタキ、イソヒヨドリ、エゾビタキ、サメビタキ、コサメビタキ、マミジロキビタキ、キビタキ、ムギマキ、オジロビタキ、オオルリ、ニュウナイスズメ、スズメ、ツメナガセキレイ、キセキレイ、ハクセキレイ、マミジロタヒバリ、ビンズイ、セジロタヒバリ、ムネアカタヒバリ、アトリ、カワラヒワ、マヒワ、アカマシコ、シメ、コイカル、イカル、シロハラホオジロ、ホオアカ、コホオアカ、キマユホオジロ、シマアオジ、シマノジコ、ノジコ、アオジ 計164種


 

風の鳥日和