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平和で豊かな小笠原の生活 〜旅の風に吹かれて〜

 
ツアーや講座など、風に欠かせない各方面の専門家の皆さんに、自分のフィールドの魅力を語っていただく連載の第7弾。今回は豊かな自然が残る小笠原です。小笠原を知り尽くしたホエールウオッチング協会の佐藤文彦さんに小笠原での豊かな生活の魅力を語っていただきます。


■貴重な自然の残る島

小笠原諸島は東京から真南に約1,000km南下した、太平洋上に浮かぶ亜熱帯の小さな島々です。現在、人が居住するのは父島と母島の二つの島で、父島に 1900人、母島に450人が暮らしています。島の誕生以来、大陸と一度も陸続きになったことがないため、地球上で小笠原にしか生息しない動植物が存在します。そのためここは「東洋のガラパゴス」と称され、国立公園にも指定される美しい島です。最近では世界自然遺産の国内候補地やラムサール条約(主に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約)の登録候補地になったりと、貴重な自然が残されていることが一般的に知られるようになってきました。この素晴らしい小笠原の自然の紹介はガイドブックにゆずるとして、ここでは小笠原の人はどんな暮らしをしているのか?僭越ながら父島での私の生活を交えながらご紹介したいと思います。

■東京都だけど亜熱帯

父島に降り立つと、立派な舗装道路には品川ナンバーの車がバンバン走り、快活な若者たちが往来しています。それに小さな赤ん坊を連れた若いお母さんが随分多く目立ちます。椰子の木の建物など南の島らしいものはほとんど無く、どれも特徴のない近代的なものばかり。およそ離島の街並みとはかけ離れた光景に驚かされます。都営住宅があって、都立高校があって、テレビのスイッチを入れれば東京都内で見られる全チャンネルに衛星放送が2チャンネル、MXテレビまで見ることができます。トイレはもちろん水洗。使用言語はほぼ標準語。地球上でも極めて希な自然環境にありながらも、ここ小笠原は疑う余地のない東京都なのです。

■島のサラリーマン

私の日頃の暮らしを少し紹介しましょう。小笠原ホエールウォッチング協会の勤務は朝8時からですが、私の住む都営住宅から職場までは愛車のスーパーカブに乗って5分程度しかかかりません。もちろん通勤ラッシュとは無縁です。私はよく夜明けとともに起き出して、出勤前に魚釣りや波乗りをしたり、家庭菜園の手入れをしたりします。衛星放送のチャンネルでNHKの朝のドラマを見てからのんびり出勤。午前中の事務仕事をそこそここなすと、正午から午後1時30分までのお昼休みに入ります。小笠原の昼休みはどこも大抵1時間半はあって、家に帰って昼食をとり、お昼寝をする人が多いようです。私も昼寝派ですが、台風が近づいた時などは事務所のすぐ目の前の海岸で波乗りを楽しむこともありますし、ザトウクジラのシーズンには、展望台でクジラを見ながら家族でお弁当を食べるのは最高の楽しみです。夕方は会議でもないかぎり、なるべく早く家に帰るようにしていますが(この会議がやたら多いのが今の悩みです)、3月〜5月のアオリイカ釣りのシーズンには夜釣りに出かけることもしばしば。1日中遊び疲れて夜10時にはもう夢の中ということが殆どです。

■高い物価でも低い生活費?

小笠原の物価は?と良く尋ねられますが、実は「全てにおいて東京都内の約1.5倍」というのが大まかな線だと思います。ガソリンに至っては1リットル204円と2倍近いものもありますが、小笠原までの運賃を上乗せせざるを得ないので仕方のないことでしょう。ちなみに母島では231円とさらに高く、「世界で一番高いガソリン」は母島の人たちの自慢?になっています。これだけ物価が高い島ではありますが、一年中温暖な亜熱帯であるため衣料費はほとんどかかりませんし、島そのものが小さいのでガソリン代が高くても消費量は少ないのでそれほど燃料代もかかりません。さらに大型家具やベビーカーなどの子育て用品も島内での貸し借りで済んでしまうことが多くあるため、出費を抑えられるのです。夕方の美味しいビールさえ飲み過ぎなければ、全体的な生活費は低く抑えることが出来るのです。

■東京で一番安全な場所


木陰でお昼寝
(クリックで拡大します)

我が家もそうですが、小笠原の人は外出するときに多くの人が家の鍵を開けっぱなしにしています。おそらく8割近くがそうだと思います。さらに自動車の鍵は付けっぱなしが常識になっており、以前私が乗っていたバイクなどは、鍵を紛失してしまったために、配線をいじくってキーボックスにON/OFFのスイッチをつけていたこともあるくらいです。都内に住む友人たちにこの話をすると大変驚かれるのですが、小笠原と本土との連絡には定期的な船便しか乗り入れていないために、不審者が入りづらく、泥棒などの心配は殆どありません。さらに、島の中ではほとんどの人が顔見知りなので、怪しい人がいればすぐにわかってしまいます。島全体が家族や親戚のような関係なので、子供たちにも目が届き、安心して遊びに出すことができます。私にも4歳の娘がいますが、このような安全な環境は現在の私にとって最も大切なことであり、小笠原に住み続ける大きな理由となっています。小笠原の素晴らしい自然環境はもちろんですが、安心して暮らせる島の環境は次の世代にも残さなければならない貴重な宝ものだと思います。

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