開講記

[自然を知る]地球と対話・ジオウォーキング-和泉山脈・岩湧山 太古の生物界と火成活動の探索-

 

地球の鼓動を感じよう! そんな視点で歩くジオウォーキング。今回は関西において身近なハイキングルート「ダイヤモンドトレイル(以下ダイトレと略)」を紀見峠からスタートし岩湧山山頂を経て、巨木林立する修験道の古刹岩枠寺へと下山するルートです。

地球史の中でも有数の生物大繁栄の時代である白亜紀、その時代の大陸棚に堆積した浅海性の地層、和泉層群に生物の痕跡を探します。その下部には一連の火成活動で形成された花崗岩、流紋岩、凝灰岩などが基盤をなしています。マグマの冷却・上昇過程の様々な現象を観察しながら歩きます。

[開講日]2013年11月16日(土)
[講 師]田中 宙
●添乗記 報告者●竹嶋 友(東京本社)

当日は南海高野線紀見峠駅で集合。気持ちのよい青空が広がりジオウォーキング日和です。
講師の田中さんから本日歩くルート地図と地質図が手渡され、今日の観察テーマの発表がありました。
「紀見峠から西へ岩湧山山頂へと至る道は、地質学的には、未来から過去へのタイムスリップ。白亜紀の地層からアンモナイトなど生物の化石を探してみよう」という、ワクワクするようなテーマです。

そんな中、講師の田中先生から「もし僕自身が化石になりたかったら、まずは沖に出て…船の上でじっと待って、それから…(省略)」というようなユニークな語り口に一同笑ってしまいました。
ストレッチで体を伸ばして、タイムスリップのジオ旅へいざ出発!

気持ちのよいお天気の中、岩湧山山頂を目指します
気持ちのよいお天気の中、岩湧山山頂を目指します
学生の頃から愛用されている岩割ハンマーで地層の境界線を示す講師の田中先生
学生の頃から愛用されている岩割ハンマーで地層の境界線を示す講師の田中先生



スタート直後、田中先生より、道にある露頭(露出している地層)を見ながら、これから歩いて行く際に、地質学的にはどんな視点で周りの景色を見ていけばよいか、早速レクチャーがありました。まずは帯状になっている層を探し、その層と接する別の色の層がないか、それらの地層は水平方向に続いているか、それとも湾曲しているか、などが着眼点だそう。崖や石の断面に見える黒いものは炭素を含む生物(動植物)の化石である可能性が高いが、ほとんどの場合は木片などが多いようです。う~む、アンモナイトの化石発見までの道のりは、そう簡単ではなさそうです。

そうです、この日は山登りを楽しむだけではなく、地質学的な視野を持ちながらのジオウォーキング。普段であれば、ただの崖にしか見えないであろう崖が、ちょっとした意識と地質学的な視点を持つだけで、素通りできない気になる崖になるから不思議です。ふと周りの景色を大昔へと置き換え想像してみると、「え~と、白亜紀ということは約1億4000万年前~6500万年前はここは陸に近い浅海の中で、そいで、えーと、その時代に形成された層を見ている! なんということだ! その層の中からかつての生物の痕跡をこの目で見たい!」と、少し高揚した気分になるのも、きっと私だけではないでしょう。

萱葺き屋根が特徴的な時代を感じさせる古民家
萱葺き屋根が特徴的な時代を感じさせる古民家
美しい紅葉に思わず足を止めます
美しい紅葉に思わず足を止めます


サルノコシカケ発見!
サルノコシカケ発見!
真ん中の山道を隔てて左半分が人工林、右半分が天然林。もし自分が鳥だったらどちらに住みたいかな~。
真ん中の山道を隔てて左半分が人工林、右半分が天然林。もし自分が鳥だったらどちらに住みたいかな~。



石に眠るアンモナイトの化石を発見すべく、道中気になる石(主に泥岩)を拾っては眺めを繰り返しながら歩いていると、岩湧山三合目を登ったあたりから、砂岩よりも石に含まれる石粒の大きさがより大きい礫岩が多くなっているのに気づきました。通常地層が形成される際には、粒の大きいものほど早く海に堆積するので地層は粒が小さい層よりも下層に形成されるはずです。しかし、標高を上げるにつれて粒が大きくなるという矛盾が生じています。
「一体なぜ…?」
さらに、標高を上げるにつれ角が取れ丸い形の石が多くなってきます。通常石は川の流れで角ばった角が取れていき下流に行くにしたがって丸くなる、というのは皆さんも何となく覚えがあると思いますが、反対に上流であろう標高の高い場所に登って行くにつれて丸くなってきているのです。
「一体なぜ…?」
こんな疑問をすぐに近くの講師にぶつけられるのもとても嬉しいものです。

粘土質の地層の中に風化が進みポロポロになった御影石などが含まれていました
粘土質の地層の中に風化が進みポロポロになった御影石などが含まれていました
根古峰付近で北方向の大阪平野を見下ろす
根古峰付近で北方向の大阪平野を見下ろす


漆の木。さわらないようにと。
漆の木。さわらないようにと。
赤色が鮮やかなマムシグサの実
赤色が鮮やかなマムシグサの実



また、田中先生が道中、「スロースリップ」と言われる、プレート運動によって生まれる小規模の断層を見つけた際には、「こういう小規模な断層はプレート移動のエネルギーを発散させ大きな地震を緩和する役割を担う一方、近年の地震研究では大規模地震の前に確認された小規模断層のある一定の振動波形が大規模地震と連動している可能性が指摘され、地震予知に生かせないか研究が進められている」という、専門家ならではの解説もありました。

岩石観察や植物観察に熱が入り、山頂到着後の昼食は予定より遅い時間となってしまいましたが。山頂一帯の約8ヘクタールのススキ原を眺めながら、お弁当をいただきました。

もうすぐ山頂(でお弁当)だー!
もうすぐ山頂(でお弁当)だー!
岩湧山山頂付近はススキの名所
岩湧山山頂付近はススキの名所



おいしいお弁当で各自のお腹を満たした後は、「きゅうざかの道」を北へ下りて岩湧寺を目指します。1時間ほどで岩湧寺へ到着。そのまま舗装路を歩いて帰路につくバス停を目指すのですが、まだまだジオウォーキングは終わりません。山頂付近ではあまり見られなかった火成岩の石を見つけ、その付近の露頭の様子から「ここは不整合面ですね」という解説が入ります。不整合面とは、安定した環境に中で形成された平行で連続的な地層(整合)ではなく、接している地層に連続性がない地層同士の境界面のこと。平たく言うと、普通ではないなんらかの事情がある地層ということになるでしょうか。

また、お客様の1人が道端にツチグリをみつけ全員で大興奮。ツチグリは担子菌類腹菌類ニセショウロ目ツチグリ科のキノコで、星型のその不思議な見た目とその星型の中央にある無数の胞子が納まった袋が特徴的です。思わず胞子が入った袋を指でプニプニとつまんで、胞子が出るか生物の実験をしてしまう一行なのでした(笑)。

講師の手にはツチグリが。田中先生は生物分野も精通しています
講師の手にはツチグリが。田中先生は生物分野も精通しています
山道近隣の民家には南天が多く植えられていました
山道近隣の民家には南天が多く植えられていました



今回は、地球史の中でも生物大繁栄時代である白亜紀の大陸棚に堆積した和泉層群を歩き、生物の痕跡を追うジオウォーキングとなりました。麓から山頂にかけて変わっていく石の種類や地形、植生などを観察しながら人間では想像しがたい長い年月をかけ堆積、循環を繰り返し形成されてきたその場所に思いを馳せ、自分なりの考察をし講師にその答えを求める。
こんなワクワクした経験ができるのもこの講座ならでは。田中先生のしっかりとした知識に裏打ちされた解説の中にも、ユーモアを交えながら分かりやすくお話される雰囲気もまた、この講座の魅力の大きな一つといえるでしょう。
この講座に参加した後は、普段歩いている皆さんの身近な道が、少し違う角度で見えるかもしれません。

道中のバス停でしばし休憩中のひとこま

※私が当日書き留めたメモが元になっています。専門的見地では、食い違う理解がある場合もあります。予め、ご了承願います。