カトマンズに新しい『風のいえ』
風ダルバール・カマルポカリがオープンします!

「古いレンガを集めてきて使っています。でも、なかなか集まらなくて大変でした。」プリスビー(Nepal Kaze Travel社長)は、完成間近の「風ダルバール・カマルポカリ」に着いた途端に瓦の話を始めた。
瓦は一辺が約15cmの正方形で厚さが2cm位。中庭やロビーに敷き詰めて使っている。70年ほど前に建てられたラナ家(*注)の館で使われていたものを、あちこちから集めてきたという。「一度、2階から最近の瓦と一緒に落してみたら、最近の瓦は割れてしまうのに、この瓦は割れないんですよ。」昔は、混ぜ物を入れずに質のいいものを作った証拠だという。現在の日本のマンションは35年ほどしか持たないが、明治初期に作られた建築物は200年持つと言われているのと同じだ。コンクリートの質がまったく違うのだ。最近のものはまがい物といっていい。
*注:1846年から1951年までネパールを支配した宰相家。王政復古まで104年にわたり代々宰相として独裁権力をふるった(ラナ王朝)。

ネパールの伝統と良さを伝えたい

ネパールの伝統的な建物の趣をそのまま残し、できるだけ伝統的でオーガニックなものを使い、その良さを未来に引き継ぎたい。そんなコンセプトで風ダルバールは始まった。約1年弱の工期を経て、古いラナ家の館をホテルに改造し、この11月初旬に風ダルバール・カマルポカリがオープンする。
ダルバールは館、カマルポカリは蓮の泉という地名である。ポカリとは水、池のことを指す。場所は、トリブバン空港とタメル(カトマンズの最も人通りの多い繁華街)のほぼ中間で旧王宮の東になる。タメルまでは歩いて20分ほどかかるが、観光客は来ない場所で比較的静かである。
前回、訪れたのは、今年の2月。既に工事は始まっていたが、完成は遥か彼方と思われた。9月末に再訪したら、なんと客室はほぼ完成しているし、運び込む家具も出来上がっていた。エントランスや食堂などの工事は少し遅れているが、「大丈夫です。11月にオープンできます」というプリスビーの自信に満ちた言葉が、私を安心させた。

館を改装してホテルに

瓦の後は、客室を見ながらあれこれ説明をしてくれた。ベットなどの大型家具は、カトマンズ近郊の古都バクタプルの家具職人を招いて作ってもらったそうだ。家具は全てこげ茶色で統一されている。ツインベットの間に敷く絨毯は、羊毛の絨毯作りで有名なとある山の村に特注したもので、生成り地に淡いベージュと薄いブルーで模様が描かれている。建物全体の基本カラーは白、茶とレンガ色だ。
客室は、全部で22部屋。日本人客のために5部屋だけバスタブをつけた。小さなバスタブで、直方体の形をしている。もちろん特注品である。脚は伸ばせないが肩まで浸かって温まれる。もっと大きなものの方が良いのだが、水が慢性的に不足し、高い燃料を使ってボイラーで湯を沸かさなければならないカトマンズでは、それは贅沢と言えよう。また、風呂桶と腰掛を置いてバスタブの外で体を洗うようにするという。それなら、シャワーを据える場所を低いところにも付けてほしいと注文をつけた。風呂桶と腰掛も本当は木製がよいのだが、タイルが壊れる可能性があるので残念だけどプラスチック製にするそうだ。
部屋にはテレビも置かないし、冷蔵庫もない。夏は、さすがに館というだけあって、建物の中はとても涼しくエアコンを置く必要がない。冬場は電気ヒーターを使う。本当は、暖炉をつけたかったが火を使うのは危険なので止めにしたそうだ。
ネパールの伝統的な家に中庭があるように、風ダルバール・カマルポカリにも中庭がある。そこに椅子とテーブルをおいてゆっくり過ごしてもらおうという趣向だ。庭の真ん中には、トレッキング中にもよく目にする「チョータラ」という休憩所を模して1本の大きな木を植え、ゲストも座って休めるようになっている。

受け継がれていく伝統

ネパールの伝統的な文化を感じ取りながら、落ち着いた雰囲気の中でゆったりと過ごしてほしい。そんなプリスビーの思いが伝わってくる。7年前に他界した弊社のオーナー・比田井 博が、オーガニックなものと伝統的なよい物にこだわってアスタムコットに「はなのいえ」を作ったときのあの表情が、まるでプリスビーに乗り移ったかのようだ。
プリスビーは、比田井 博の有能なアシスタントとして一部始終を見てきた。彼の心の中にじっくりその経験が蓄積され、消化して、自分のものにしたに違いない。ダンプスの「つきのいえ」から始まった『風のいえ』構想が、今、比田井 博からプリスビーに引き継がれ、大きく花開いたといえよう。モンゴルでも「ほしのいえ」、「そらのいえ」がそのコンセプトを引き継いでいる。実に嬉しいことだ。
弊社では、順次、風のネパールツアーで風ダルバール・カマルポカリを使うとともに、2、3月にはオープン記念のツアーも企画中だ。どうぞご期待ください。


※風通信No48(2013年11月発行)より転載

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