「スマホネイティブ」という驚異の新世代

2014年に開かれたダボス会議(世界経済フォーラム)で、ある世代が価値観、社会行動、消費行動で世界の「新しい潮流」になるとして大きく取り上げられた。アメリカで最初に注目され始めたこの世代の特徴は「スマホネイティブ」。SNSを使って自身がメディアとなり高い発信力を持つ。年齢は国によって少々異なるが、およそ18歳から30代前半。彼らの呼称は「ミレニアル世代(Millennials)」。日本では、“ゆとり世代”と重なる。

この世代が世界を牽引する

何故この世代が注目を集めているのか。その理由の一つは、圧倒的な人口の多さにある。いまだ、世界の人口ピラミッドは正三角形に近い。U.S. Census Bureau(アメリカ合衆国国勢調査局)によれば、ミレニアル世代および、それ以下の世代が世界の労働人口に占める割合は、2015年に約50%、2025年には75%になると推計されている。少々驚きの数字である。
しかも、アメリカでの数字だがオンライン上の友人数は平均250人とかなり多い。知り合いを6人以上介すれば世界中の人間とつながるという「6次の隔たり」という仮説があるが、ミレニアル世代では「4次」で可能となる。人類史上、これほど人がつながった世代は存在しない。彼らがもつこのグローバルネットワークの広がりこそが、注目を集めている第二の理由である。
アメリカのミレニアル世代をもう少し詳しく見てみると、顕示欲が強く、自信家で、ポジティブな自由主義者で変化を厭わない。FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアのアカウントを一つは持っていて「セルフィ*」の意味を知っている。ネットで情報を収集し、新聞やテレビでニュースを見ない。固定電話は使わず携帯電話だけ。他人の言うことは信用せず、すぐにググってしまう。自由な思想を持ち、特定の宗教や政治的な組織とのつながりはもたない。日本のミレニアル世代は、もう少し遠慮がちで、共感型が多く一人でもみんなとつながっていたい。他人を意識し流行は押さえておきたい、という日本特有の傾向があるようだ。
しかし、面白いことに、スマホを使いこなす日本のミレニアル世代が、旅行を思いたったきっかけや、旅行を決めるのに影響を与えたことをたずねると、前者は68.7%、後者は61.2%が“友人や家族との会話”を挙げており、全世代平均(前者62.0%、後者54.1%)を上回っている。二番目に多い“テレビ”でもミレニアル世代は、前者13.4%、後者12.9%。多そうに思える “ポータルサイトの検索”でも前者6.0%、後者10.0%であるから“友人や家族との会話”が如何に多いかがわかる。
“口コミほど強力な宣伝媒体はない”と昔から言われている。ネットで情報が誰でも手に入るようになって口コミを凌駕するかと思いきや全く逆である。むしろ、ツアーに参加したお客様がSNSで発信してくれることで口コミ効果がもっと大きくなっているようだ。
以上は、JTB総合研究所の『ミレニアル世代(19~25歳)の価値観と旅行に関する調査』と『訪日インバウンド市場で存在感を高める、中国やアジア新興国のミレニアル世代』及び、INNOVATION INSIGHTSのwebに2014年10月13日に配信された『世界は、ミレニアル世代の「自己顕示欲」が社会を揺るがす時代に突入している』からまとめたものである。

シームレスになった“世界”

その後2年弱。最近、ますます、ネット社会が私たちの生活の深部にまで浸透してきたと感じる。技術的な進歩はすさまじく、あれこれ抵抗感があったはずのeコマース(電子商取引)も、もはや当り前になった。一番驚くことは、ネットによって世界がシームレスになり、個人でも海外とのやり取りが抵抗なくできるようになってきたことだ。
海外旅行に行く場合も、日本の旅行会社を使わない人が加速度的に増えている。ネットですべて自分で手配してしまうのだ。もし、ハワイの市場が旅行会社から離れたら多くの旅行会社は窮地に立つといわれているが、既にグアムはそんな状態になりつつある。
弊社は、現地のスタッフたちと共同して独自性に富んだいい旅を作り、お客様に喜んでいただきたいと願ってきた。本当にいい旅なら、きっとお客様がSNSを通じて拡散してくれるに違いない。弊社でしかできない独自性が明確にあれば買っていただけるに違いない。まだ弊社を使ったことのない皆さんにも、是非、使っていただきたい。だから、今後もwebにも心血を注いでいく。

私も、スマホを持っているが、最近は、Yahooでの検索を辞書や百科事典代わりにして使っている。分からないことをその場ですぐ調べお気に入りに登録し繰り返し見ている。この便利さには感嘆する。SNSはやらないが、もはやスマホなしでは過ごせなくなりつつある。目がいつまでもつか心配である。

*セルフィ … 自撮り、自分撮りのこと。


※風の季節便(2016年秋〜春号)より転載

シェアする