ネパール大地震 現地からの臨時報告(第1号)

*風のメルマガ「つむじかぜ」号外より転載

2015年4月25日のネパール大地震から10日目の5月5日、昼過ぎにTG(タイ国際航空)で、カトマンズのトリブバン国際空港到着。何十回もこの空港には降りているが、こんなに胸が締め付けられるような感覚は初めてだ。

2001年のネパール王宮乱射事件のあとNKT(NEPAL KAZE TRAVEL CO.,LTD)のスタッフを激励するために訪れたときも、ネパール人が受けた心の傷を思うと暗澹たる気持ちになったが、ネパールは、どうしてこんなにも過酷な目に遭わなくてはならないのか。思わず、天を仰ぐ。

今回は、TKT(THAI KAZE TRAVEL CO.,TLD)の社長であるサテシュもバンコクから同行してくれた。彼はネパール人で、元はカトマンズのタイ航空のスタッフだった。親・親戚はカトマンズで暮らしている。既に、連絡は取れており皆無事だったそうだが、いつもは陽気な性格だが、今回は、流石に表情がこわばっていた。機内は、日本人も含め外国人観光客らしい姿は見られなかったが、帰国するネパール人やNGOの団体などで6割程度搭乗客がいたから驚きである。

空港には、米軍のオスプレイが1機駐機していたが、その他はいつもと変わった様子はない。2日ほど前のテレビ報道では、空港に支援物資が山積みになり、混乱した様子が映し出されていたがそんな様子もまったくない。支援物資は広い空港敷地内のどこかに山積みになっているのかもしれないが見た目は平穏である。

余りの平穏さに少々拍子抜けしながらイミグレーションに向かった。空港の建物もダメージを受けた様子はない。一箇所だけビルの継ぎ目に当たる箇所で床にひびが入っていたがその他は全く変わらない。今回の地震で、この国唯一の国際空港であるトリブバン空港が被害を受けなかったことは大きな救いである。

空港を出ると、NKTのスタッフであるラジェシュがいつものように迎えに来てくれていた。いつもと変わらない笑顔に安堵した。空港から風ダルバール・カマルポカリホテルに向かった。道中特に変わった様子もなくいつものように建物は立っているし道に割れ目などありはしない。日本で見た報道では、カトマンズ中が崩壊したかのように映し出されているがそうではない。少し安堵した。

風ダルバール・カマルポカリは、NKTの社長であるプリスビーがかつてネパールを支配したラナ家の古い館を改修して2013年の11月から営業を開始したホテルである。ネパールの古き良き文化を伝え守っていきたい。それがこのホテルにかけた彼の夢である。

私は、地震の直後に国際電話で彼と話すことができた。「ホテルは門の塀が壊れましたが大丈夫でした」と彼の口から、いの一番にホテルのことが出てきた。無理もない。

幸いにも、風ダルバール・カマルポカリは、壁のモルタル等にひびがいくつか入ったが、建物自体はびくともしなかった。壊れたと聞いていた門塀だけは確かに見事に敷地内に倒れていた。今度は倒れない塀にしますとプリスビーも言っていたが、怪我人が出なくて幸いであった。

スタッフもいつものように迎えてくれた。チェックインを終えると早速、各部屋の被害状況を見て回った。一階のいつくかの部屋は被害がなくそのまま使える。壁にひびが入った部屋は、ひびの周りのモルタルを剥がして調べた後、問題がなければ綺麗に補修するという。

しかし、肝心の職人たちがインドに帰ってしまい、3人しか見つからなかったので時間がかかりそうだという。ネパールでは、建築の仕事はインド人の従事者が多く、風ダルバール・カマルポカリを造る時もインド人の村と契約し、同じ村から30人ほどをまとめて雇ったそうだ。ちなみに、今回の地震で多くのインド人がインドに帰国してしまい、床屋が街から消えたと話題になっているそうだ。

風ダルバール・カマルポカリは大丈夫と一安心し、すぐにタメルにあるNKTの事務所に向かった。マネージャーのスレシュは、自分の家の水のタンクが地震でずれてしまったのでそれを直しているとのことで不在だったが、その他のスタッフは、いつもと変わらず元気に私を迎えてくれた。

早速、いつものチャイ屋のおやじがミルクティーを運んできた。このチャイが実に美味い。私は、NKTの事務所に居ると何杯もこれを飲む。「みんな大丈夫だったかい?」「サンツァイ、サンツァイ!」(元気、元気!)チャイ屋のみんなも無事で何よりだ。

すぐに十数名のスタッフに集まってもらってミーティングを開始。みんなの無事を何よりもうれしく思う。これから大変だが、ありがたいことに、お客様から多額の支援金が集まってきている。これをどう使うのかを今回はみんなで考えたい。

赤十字や既に活動をはじめているNGOに渡すこともできるが、お客様も、私たち風のスタッフも、直接的で目に見える支援をしたいと考えている。風の旅行社とNKTを信用してお金を預けてくれたのだから、それに応えしっかりやろう。そんな趣旨で挨拶し、その後は、みんなから現状を聞いた。

カトマンズは、もう大分元に戻って来たが、周辺の村でもかなり被害が出いてなかなか支援が届かない。震源地に近い方の村はもっと酷い。ランタンは村ごと土砂に埋まってしまった。昨日も、カトマンズ近郊の知り合いの村に米を届けた。今、足りないのは米や塩だ。ブルーシートは、援助が来ているから大分足りてきている。週末にはまた米を届けたい。

そんな声が、みんなから出て来た。支援金の一部をこれに使おう。但し、誰彼かまわず配ったらきりがないし足りない。みんなが知っていて直接渡せるだけにしよう。そう提案し、週末の5/9にはNKTのスタッフたちで、再度カトマンズ近郊の村に届けることにした。

私が行く前から、彼らは動き出していた。助かって余裕のある人が困っている人を助ける。当たり前のことだが、なかなか難しいことである。

(つづく)

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