アジアングルメ

*風のメルマガ「つむじかぜ」694号より転載


ベトナムにはパイナップル専用の塩すらある。ホーチミンの取引先の旅行会社事務所で塩の話をしていたら、次々に○○用、□□用の塩だといって見せてくれた。

「これもそうですよ」といって持ってきたのは、赤いラベルに「MOUI OT TOM」と書いてある容器で、直径5cm、高さ8cmくらいの円筒形の透明なプラスチックに塩と乾燥した極小の海老が入っている。つまんで食べてみた。旨み十分。でもしょっぱい。確かにふりかけではなくて正真正銘、塩である。「塩、唐辛子、海老」という意味だ。

夕方からその会社の代表と一緒に食事をしたが、ザボンの横にもちゃんとザボン用の塩が用意されており、指先で摘むように持ってその塩をつけながら食べた。甘みを引き立てるためのものだろうが、暑いベトナムならではの食べ方だ。私には少々塩分摂りすぎで危険な食べ方でもある。

ベトナムといえばタイのナンプラーに当たるヌクマム(魚醤)が有名だが、今回は、紫色をしたマムトム(MAM TOM)という酒盗のような塩辛風の調味料に挑戦した。魚醤に海老の粉末(?)を混ぜたものだ。これをつけて食べるのは、ブン・ダウ・マムトム(BUN DAU MAM TOM)という料理だが、BUNは米の麺、DAUは豆腐(厚揚げで出てきた)の意味だそうだ。これにマムトムをかけてミントの葉っぱを混ぜて食べる。かなり臭みは強いが慣れたら癖になりそうだ。

ベトナムに来る前にカンボジアでプラホック(魚醤)を使った「プラホック・ティス」(単に、プラホックと呼んでいたが)という料理を食べた。プラホックに豚の挽肉、ココナッツミルクなどを入れたソースに野菜をつけて食べる。カンボジア版バーニャカウダだ。もちろんご飯にかけて食べても美味しい。観光客用にマイルドになっているそうで全く臭みがなくて少々寂しいくらいである。

日本人は臭みが強いものは苦手な人が多いが、最初は臭いがきつくても慣れたら病み付きになる。そんな食べ物は世界中にある。パクチーも含めて慣れの問題だと私は思うが、臭いがきついと口に入れられず、慣れる前に拒否してしまう人が多いのは残念だ。この臭みを楽しめると東南アジアの旅は楽しみが増えるのに。

かくいう私も、最初は、タイ米の臭いすら苦手だった。今はむしろいい香りだと感じるようになったしパクチーも大好きである。とにかく、食べられるものは何でも口に入れてみることにしている。特に、現地の人が美味しいというものは無理をしても挑戦してみたいと思う。慣れるに時間がかかるが楽しみでもある。


★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。


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