第2話 スタンジン君[LADAKH]

空港を出ると現地ガイドのスタンジン君が待っていた。

スタンジン君とは、二年前はじめて会い、ラダック調査に協力してもらった。
ホテルに着いて仕事の打ち合わせをした後、このブログのためのインタヴューをした。(会話は日本語)

スタンジン君

私 簡単な自己紹介をしてくれませんか?
スタンジン君(以下 ス)わたしの名前は、スタンジン・ワンチュクと言います。ザンスカールのリンシ村出身で、いま28才です。兄と弟、姉の4人兄弟です。去年の6月に結婚しました。男の子が一人います。結婚式には、600人くらいの村人が来てくれました。小学校から高校まで、レー市郊外にある私立のランドン校に入り、卒業後デリー大学オーロヴィンド校の政治学部に入りました。

私 日本語はどこで学んだのですか?
ス デリーにいるときに、私立の日本語学校で二年間学びました。

私 どうして、日本語を勉強しようと思ったんですか?
ス 子供のとき、テレビで日本のことを紹介した番組や雑誌を見て興味を持ちました。日本の歴史や伝統文化について関心があります。また日本人の仕事熱心なところを尊敬しています。大学生のとき日本へ行きたいと思っていました。

私 どうして旅行の仕事をすることになったのですか?
ス 大学時代、夏休みにラダックに戻ってきたときに、アルバイトでトレッキング・ガイドをしました。このとき、トレッキングが好きになり、旅行の仕事をしたくなりました。

私 去年、卒業したんですよね。
ス はい、去年卒業し、冬の間六ヶ月間だけですが頼まれてザンスカールの中学校で教師をしました。現在、旅行会社を設立する準備をしています。

私 以前、聞いたんだけど、お父さんは、カリギル地区開発委員会の観光局の局長ですよね。政治学部を出たのだから、お父さんのコネで役所に入ろうとは思わなかったんですか?
ス 役人になるためには試験があり、結婚してしまったので、勉強する時間がありません。現地でお客さんの世話をするほうが性に合っています。旅行の仕事を通してわたしのふるさとのザンスカールを紹介したいです。ザンスカールを中心にホームスティとトレッキング、真冬の凍った河のツアーを主にやっていきたいです。

私 ザンスカールの王様とは親戚でしたよね。
ス ザンスカールには、二つの王家があります。ひとつの王家は、パドム村にあります。もうひとつの王家はサングラ村にあります。わたしの曽祖父が、今生きているザンスカールのサングラ村のニマ・ナムギャル王の父と兄弟だったそうです。

私 ザンスカールのよいところを紹介してください。
ス ザンスカールの村人たちは、ラダックの人たちよりも伝統的な衣装を着ています。人々は素朴で信仰熱心です。ザンスカール地方の馬は、速くて強くて有名です。

車道がまだ発達していないので、女性や子供でも馬を乗りこなしています。夏になると、未婚の若い女性たちが高地でテント生活をして家畜をつれて放牧し乳を搾ります。男性は、あまり放牧に行きません。家畜がいなくなったときには、男性が遠方まで探しに行くことがあります。ヨーグルトとバターが有名で冬になると凍った河を通ってレーまで売りに来ます。

洞窟に隣接したお寺、プクタル寺が特に有名です。

レーに来ている多くの外国人ツーリストは、ザンスカールに行きたいと思っていますが、長距離で道路事情が悪いため、断念しています。でも、現在、レーからザンスカールのパドム村までおよそ180kmの車道を建設中です。2010年に完成予定だそうです。車道が完成したらレーから半日で来ることができます。ぜひ、ザンスカールまで来てください。