Daisuke Murakamiのラサは今日も快晴

ラサ再発見 [LHASA・TIBET]

 

毎度ながら、チベットの暦は面白いものだな、と思う。
夏の終わりを告げるショドン祭の始まり(8月25日)とともに、急に雨が少なくなった。

少し前までは、夜から午前中にかけて長雨続きで、
雨季慣れしているラサ人も、さすがにこれは異常気象だと口々に言っていた。
なかには冗談好きな者が、「空が腹を下しているんだよ」、と僕に教えてくれたが、
ほんとうに、そうだったのかもしれない。
そう空に毒づきたくなるほど、ひどい雨だったのである。

しかし、ショドンが始まるとともに、雨が急に少なくなった。
空の腹は持ち直したようで、ついに雨季=夏が終わり、秋が始まった。
ショドン祭が、毎年、季節の節目となっているのである。

ところで今日は、最近撮った写真を少し紹介したい。

ショドン祭の大タンカ開帳といえば、みなさんはデプン寺やセラ寺を思い出すかもしれない。
だが上の写真は、どちらでもない。
僕はショドンのこの日、デプンでもセラでもなく、ラサ郊外にある、
ある小さな村のショドン祭に行ってきた。
観光客は一切おらず、地元のチベタンだけの小さな祭であったが、
写真にあるようすごい熱気であった。
やんちゃそうな地元の若者たちが、老人たちにまじって、
タンカが掲げられた瞬間何度も何度も五体投地していたのがとても印象的だった。

ん?ここの場所の名ですか?
来年の風のチベットのパンフをご覧ください(笑)。

ごちゃごちゃしたラサのバルコルの路地裏を歩く。
そこでふと上を見上げると、透明な青空。
<ラサ感>が高揚するのは、こういう瞬間である。

チベット好きのみなさんは、それぞれラサに対する感覚・情感は異なるかもしれないが、
やはり、空(そら)、というのがどこかみなさんの深いところにまで広がっているのではないだろうか。

トルコ石で包まれたガゥー。
ガゥーとは、御守や護符の入れ物のことで、
信心深いチベット人はこれを首にかけては、心身を常にblessingするのだ。
それにしても、このガゥーは、立派だった。
あと、非常に重い。
こんなのを首にかけてると、肩がこってきそうだが、
体躯のよいチベタンには、あまり関係ないのかもしれない。
いや、でも、やはり、「重い聖なる塊」という物的感覚が重要なのかもしれない。

「ションバ・ラチュ」(神水のたらい)と呼ばれる泉。
ラサの西方に湧き出る泉で、様々な病気に効くと言われている。
日本の弘法大師の如く、昔々グルリンポチェが杖で地面を叩き割って生み出した泉だ。

地元チベット人はこの泉は「甘い」などと言うが、飲んでみると甘さよりも硬さが際立った味がした。
それよりも僕が印象的だったのは、この泉の静けさである。
泉の底からぼこぼこと聖水が湧いているのが見え、水全体がトルコ石色に美しく澄みきっている。
そして、こちらの心まで丸ごと洗われるような、なんとも静かな水面を湛えているのだ。
こういう場所に、チベットの龍神(ル)は好んで棲む。
実は先日、思いがけずルにお会いしたのだが、それはまた回をあらためて書く。

見よ! これがチベットのランドスケープの遠近画法だ!

以前どこかで書いたかもしれないが、
数年ほど前から僕は、チベットの民間信仰の護符の版木を集めるのを、小さな楽しみとしている。
今まで20種類以上は蒐集したであろうか。
上の写真の版木は、今回バルコル近くで発掘したもの。
よくよく解読すると「空と大地の扉が開く」のを防ぐためのものらしい。
人類学魂が揺さぶられる瞬間である。

今回のラサ滞在中、
ある理由があって、そして複数の縁が重なって、
ある心身蘇生の仏教儀式を知り合いのお坊さんにしてもらうことになった。
特にこちら側に強い意志があったわけではなく、また、
なにかに憑りつかれているような感覚はなかったのだが、「なりゆき」でそうなってしまったのだ。
チベットではそういうことはよくある。
まぁ、いいか、という感じである(笑)。

儀式催行のため、フクロウの羽やら羊肉の特定部位やら、
いろいろ怪しげなアイテムを集めないといけなかったのだが、すべてバルコル周辺で手に入った。
さすがバルコル、といいたいところだが、祈祷・呪術用品専門ショップ街の
バルコルでは当然だろう。

* * *

ところで、僕の生業である人類学は自分の体も心も言葉もすべてを
対象世界に投げ打って全面展開させていくことが多い。
そうやってやっと少し垣間見えるものを、拾い集める、という感じなのである。
それは役に立つ場合もあるが、そうでない場合のほうが圧倒的に多いのだが(笑)。

さてさて、今夏の滞在ではどうであっただろうか。
それは時が熟さないとよく分からないものだが、
僕の直感では、たぶん良質の狩猟採集ができたような気がする。
ラサ再発見だ。

いつか将来、風のカルチャー講座でそれら「獲物」を前に、
みなさんと「饗宴」する機会を楽しみにしています。
いつも講座では、整理しきれない「半ナマ」の状態のままそれらをご紹介することが多く、
それもジャスト・ナウ!の新鮮な情報ではないのかもしれませんが、それはそれでいいのかもしれません。

半ナマどころか、少し熟したナマ肉を美味とするチベットの遊牧民の味覚が僕の目指すところです(笑)。

Daisuke Murakami

8月29日
(ラサの)天気: 雲時々晴れ (夜中~朝方に雨か)
(ラサの)気温: 11~22度
(ラサでの)服装: 昼間は厚手のシャツ、フリースなど。 夜はフリース、ジャンパーなど。 日焼け対策は必須。 空気は非常に乾燥しています。雨具は持ってきたほうがよいでしょう。また、風も強く吹くことも多いので、マスクなども役立ちます。