モンゴルの旧正月 ツァガーンサル豆知識

モンゴルの旧正月「ツァガーンサル」は家族で祝う

モンゴルの旧正月「ツァガーンサル」は家族で祝う

ツァガーンサル(2024年は2月10日)

モンゴルのお正月は旧正月で「ツァガーンサル(白い月)」と呼ばれます。 旧暦に従って決められるので日取りは毎年変わります。(2024年は2月10日が元日) ツァガーンサルには家族、親戚などが集まりごちそうを囲みながら、厳しい冬を乗り越えて春を迎える事に喜び、一年間の幸せを祈ります。「ツァガーンサル(白い月)」の白はモンゴルでは純粋さを表現し、モンゴル人が尊ぶ乳の色でもあります。お正月は何も悪いことがない真っ白な月という意味もあるそうです。
元旦には日の出前に起き、きれいな服に着替え、それぞれの幸運の方向に歩き、功徳の方向から戻ります。この儀式の後、大地にミルクを捧げ、日の出とともに家族と挨拶を交わします。家族との挨拶が終わると知人、友人、親戚 とのあいさつに1日何軒もまわります。自分の家に挨拶に来た訪問客をもてなすのも大切な仕事です。家の中は一年で一番大切な日を祝う、それはそれは賑やかで幸せに満ちた空間ができあがります。 ツァガーンサルが終わるとモンゴルには春が訪れ、季節の挨拶も「良い冬を」から「良い春を迎えていますか」に変わります。

<モンゴルの大晦日>

日本の大晦日にあたる日は「ビトゥーン」とよばれ「閉じる」などの意味があります。大晦日は家族が集まりお腹いっぱい食べます。小麦粉の皮で肉を閉じたボーズを食べるのも、幸せを包み込むという縁起かつぎから。この日の夜から、ボーズ責めの日々がはじまります。

準備

この大行事に備え、1ヶ月も前から準備を始める家庭がほとんど。 1990年の民主化以降、つい数年前までウランバートルの人々はツァガーンサルに渡すプレゼントや食料などを中国内モンゴル自治区の二連浩特(ニレンホト)という町に国境を越えて買い付けに行くことが多く、ウランバートルのツァガーンサルの準備は二連浩特から始まると言われたほど。今ではウランバートル市内も大型スーパーが増えて便利になりました。遊牧民や多くの人々は大量の肉を仕入れるために、ウランバートルのナラントールザハという一番大きな市場で正月準備を始めます。ツァガーンサルの重要な料理ボーズ(モンゴル蒸し餃子)は皮から作って肉を包み、外で凍らせていきます。一家庭で千個くらいを家族総出で作り準備します。その他、ごちそうの準備、買い物、大掃除・・・一年で一番大切な日を迎える準備は続きます。

家族総出でボーズ作り
家族総出でボーズ作り
次々とボーズを蒸していきます
次々とボーズを蒸していきます

〜 ボーズのつくり方 〜

ツァガーンサルをいただこう!

ツァガーンサルはモンゴルのお祝いのごちそうでいっぱい。 あいさつ回りをすればそれぞれの家でもてなされます。 アツアツのボーズは最初に3個以上自分の皿に取るのが礼儀、アルコール度数が強いアルヒ(ウォッカ)も3杯飲むのが礼儀、その他サラダに乳製品、モンゴル版お赤飯(?)、飴、チョコ、ワインなどなど!とにかく薦められます。 これが一日に何軒もするあいさつ回りの一軒一軒で繰り広げられるのです! 誰も止めてはくれませんので、くれぐれも自分の身体と相談しながら食べすぎ、飲みすぎに注意しましょう。

ツァガーンサルのごちそう

ボーズ(蒸し餃子)

刻んだ肉を小麦粉の皮で包んで蒸した小龍包のような料理です。お祝いには欠かせないモンゴル料理の代表。

オーツ(羊の丸茹で)

ツァガーンサルには欠かせない、いかにもモンゴルらしい料理。肉はしきたりにそって盛り付けられています。大きな部分は腰からお尻の脂肪でまずここからナイフを入れます。

ヘヴィンボーブ(巨大ビスケット)

木製の型(へヴ)で形をとった平たい楕円形の揚げ菓子。下から「幸せ・不幸せ・幸せ・・・」と数えるので奇数段積み上げて、乳製品や飴、角砂糖などで飾ります。

オーツとヘヴィンボーブ
オーツ(写真右) ヘブンボーブ(写真左)

[その他]ウゼムテイボダー(モンゴル版お赤飯?)

干しぶどうを入れて甘く炊いたご飯です。家によっては乳製品で炊くものもあり、モンゴル人は大好きですが、普段のお米を食べなれている日本人には少々キツイかもしれません。

アイラグ(馬乳酒)

真っ白なアイラグも「白い月」にはかかせません。 この時期に出されるのは秋から保存しておいたものです。 酒といってもアルコール度数は1~2%ほど。

シミンアルヒ(乳蒸留酒)

日本酒のようで飲みやすいので、飲みすぎに注意!

アルヒ(ウォッカ)

3杯飲むのが礼儀ですが、アルコール度数は40%以上も。要注意!!

あいさつをしよう

ツァガーンサルは仏教に従った行事で、ごちそうを口にする順番から挨拶のしかたまで、決まり事が多いです。 しかし、モンゴルの文化を一年で一番感じられる行事! 積極的に参加してモンゴルのお正月ツァガーンサルを楽しみましょう。

  1. その家の年長者が上座に座ります。
  2. あいさつの順番待ちの列に並び、順番がきたら、決まり文句で「アマルバイノー」と言いながら、脇を軽くしめて肘を曲げ、手のひらを上に向けて年長者の腕の下に差し入れて、右、左と順番に頬を近づけます。 (ひょっとしたら軽くキスされるかも!)
  3. プレゼントを両手で差し出します
    お金の場合はお札を広げて両端に手のひらを上にして添えて差し出します。

※あいさつの時にハタグ(青布)を持っているとなお良しです。

※この後、同席者入り乱れてのあいさつとなりますが、この時はプレゼントの受け渡しはありません。 年長者には差し出した腕を相手の腕の下に入れて、年少者の場合は自分の腕が上に来るようにします。同じ位 の年の人には同等ということで、左右の腕が互い違いになるようにします。あいさつの時やプレゼントを差し出すときは必ず手のひらを上に向けましょう。

あいさつのタブー

  • 夫婦間ではあいさつを交わしません。
  • 妊娠している女性同士はあいさつをしません。
  • あいさつの時は帽子をかぶります。
  • 袖をまくったままあいさつをしてはいけません。
  • プレゼントを片手(特に左手)で受け渡ししてはいけません。