もっと魅力を知ってほしい!あの場所この場所
奥深いソウルミュージック・グナワ

 
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世界遺産に代表されるいわゆる観光名所は、その国や地域のほんの一部でしかありません。広く知られる観光名所が良くないというわけではありませんが、それにもまして魅力に溢れる「光をあてたい」場所や物事がたくさんあるということです。そんな「あの場所、この場所」をご紹介します。初めてでも、2度目、3度目の国でも、訪れればきっと確かな光を感じることができるでしょう。

ラオスネパールキルギストルコチベット文化圏ブータン


文●竹嶋 友(東京本社)

ハミリア村のグナワ演奏
ハミリア村のグナワ演奏

ベルベル人は、北アフリカのサハラ砂漠以北を中心としたマグレブ(日が没するところ)と呼ばれる地域に暮らす、ベルベル語を母語とする人々の総称です。サハラ砂漠の民ベルベル人といってもその人種は様々で、現在は割合の多数をアラブ人が占めるようになりましたが、アマーズィーグ(自由の人)を自称する先住民族が、今もなお独自の文化を保ち続けています。
そんなベルベル人のソウルミュージックとして、人々の生活に根差し、モロッコ全土で愛されている「グナワミュージック*」。16世紀後半に西アフリカ諸国からモロッコに連れてこられた黒人奴隷やその子孫たちが、宗教儀礼や精神療法などのをする際に奏でる音楽(グナワ)が基になり、それとベルベル人の音楽とが混ざりあった音楽だといわれています。
グナワミュージックは、伸びやかな歌や躍動的な踊りと共に主に3つの楽器(太鼓、弦楽器、金属製カスタネット)を使用するのが基本です。その中でもカルカバと呼ばれる金属製のカスタネットのような楽器は形が独特で、その当時黒人奴隷がモロッコで従事したのが主に鍛冶職人だったことに由来する、という説もあるそうです。


村経営の旅行者用ベルベル式テント
村経営の旅行者用ベルベル式テント
瞳が印象的な少女
瞳が印象的な少女

そんなグナワミュージックが、ベルベル音楽と混ざり合う前のグナワそのものを現在でも残している村が、サハラ砂漠の麓メルズーガ近郊にあります。その村の名はハミリア。アラブ人やベルベル人との混血を避け、今も正統なグナワの流れを汲むアフリカ系黒人が多く暮らす村です。ハミリア村は、そんな“真のグナワ”を聴くことのできる唯一の村といっても過言ではないかもしれません。まだあまり知られていない小さな村ハミリアを訪れ、モロッコで愛されるグナワミュージックの核となる音楽を体感してみませんか? 


*グナワ:音楽、踊り、歌詩、宗教儀礼、演者の全てをグナワと呼ぶ。グナワミュージックはその中の音楽部分のみを指す。ギナワと呼ばれることもある。



風通信」47号(2013年4月発行)より転載