添乗報告記

古都の路地裏歩きレポート(2011年12月)

 
街角での出会い
街角での出会い

ツアー名:暮らしにふれる古都カトマンズ散策6日間
2011年12月29日〜2012年1月3日 文●平山未来(東京本社)

古きものと新しきもの、神々と人間、それらが決して溶け合わず、それぞれの姿のまま同じ時間に存在する場所・カトマンズ。ネパールは「人々の数より神様のほうが多い」ともいわれ、その伝統としきたりの中には、敬虔に祈る神々への信仰心があり、中世の時代や、もっとずっと昔から、変わらず現代にも受け継がれています。

なんだかまるで神話のような世界にいる彼らがいったいどんな生活を送っているのだろう。いったいどんなものを食べて、どんな服を着て、どんな家に住んでいるのだろう・・・?きっと誰もが興味をひかれずにはいられないでしょう。

今回のツアーはカトマンズ盆地の旧市街の路地裏の世界を巡り、彼らの日常の暮らしを垣間見ることで、メインストリートや観光地を巡るだけでは見えてこない、ネパールに暮らす人々の素顔にふれる旅となりました。


神々の国ネパールの中でも、カトマンズ盆地は特に神様の数の方が多いと言われ、いたるところに神々が祭られています。そんなカトマンズ盆地の裏通りを歩いていると、祈りの跡が其処此処で見られ、様々な場所で敬虔に祈る人々の姿があります。人々の日課の祈りの声とともに手にした鐘を鳴らす音、寺の鐘をたたく音、そして焚かれる線香の香り。カトマンズの朝は、祈りの鐘の音で始まり、古い住宅地に入ると、その佇まいが中世をそのままに思い起こさせるだけでなく、そこには昔のままの暮らしを守る人々の姿があります。


ほのかに漂う白檀の香り
ほのかに漂う白檀の香り
開運を祈るマンダラ
開運を祈るマンダラ
神々に祈る人々
神々に祈る人々


神話のような世界に入り込んでみたい!と思っても、人々や車が混沌と行き交い、クラクションが鳴り響く喧騒のカトマンズでは、旧市街をただ歩くことすら容易にできるものではありません。今回のツアーでは、カトマンズ散策の達人こと白井有紀さんに同行していただき、迷路の様な裏路地やローカルフードの小店に立ち寄ってみたり、日常の祈りの風景を見たりと、ネワール族の街の中で最も賑やかな“動”のカトマンズと、街中が美術館の様なネワール族の伝統が息づく“静”のパタンを「ローカル目線」でナビゲートしていただきました。

ネパール在住20年!白井有紀さんによるカトマンズの魅力紹介記事

  描ききれない魅力、 神々と人間が同居する町 〜カトマンズ〜


チョークの路地裏へ
いざ、旧市街の路地裏へ!



幾十もの異なる民族が暮らし、“民族のるつぼ”とも言われるネパールでは、言語ですらも30以上の種類があり、宗教も、ライフスタイルも、文化も、なにもかもが多種多様に混在しています。今回は、カトマンズ盆地の路地裏歩きを通して垣間見た、ネパールの人々の暮らしの極々一部分を掻いつまんでご紹介します。


その日のものはその日のうちに!
首都カトマンズでは、大抵の物はスーパーなどで揃いますが、路地裏の青空野菜市場は健在です。小さな市場には近場で採れたものが売られていることが多く、ズラッと並べられた野菜を見ると、周辺の畑でどんなものが採れるのかがわかります。ブロッコリー、ナス、キュウリ、ほうれんそう・・・。日本の奄美大島と同じ緯度に位置するネパールは、思いのほか暖かく、日本の夏野菜も並んでいるのには驚きます。

停電の多いネパールでは、庶民の生活において冷蔵庫の普及もまだまだ少なく、その日に食べるものを買うというのが基本の生活なので、葉物はその日に使い切ってしまうそう。野菜の重さを計るのは昔ながらの天秤!「今はホウレンソウがおいしいよ!」「もうすぐお祭りだから、そろそろ山芋も買わなくちゃね」そんなやりとりが聞こえてきます。何気ない会話をしながら、その日の献立を決めている(?)様子が、なんともほほえましいのでした。

路地裏の野菜市場
路地裏の野菜市場
冬でも日本の夏野菜が並ぶ
冬でも日本の夏野菜が並ぶ

水牛や魚は食べる?食べない?
野菜市場が人々でにぎわいを見せる中、肉と魚を並べるお店では、なんだか人影もまばら。なぜなら、ネパールの一般家庭の多くは、肉や魚は日常的に食べているわけではありません。ネパールで食べられている肉の種類は、一般的に水牛、ヤギ、鶏の3種類(牛は食べない、豚を食べる人は限られている)。ネパールのヒンドゥー教徒は雄牛は神聖な動物として絶対に食べませんが、水牛は食べます。肉の中でも最もご馳走といわれているのがチキンで、お祭りや来客のもてなしの料理としてチキンカレーがよく出されます。もちろん、食べるものは宗教によっても異なり、まったく肉を食べない人々もいます。また、ネパールには海がないので、魚は食べないかと思いきや、コイなどの川魚は食卓に出てきます。しかし、基本的に白身で淡白なものが多いので、たいてい揚げ物料理として食べられることが多いようです。


豪快に切り分けるのがネパール流!
野菜ならまだしも、ネパールでは魚でも肉でも丸ごとそのままの状態で陳列されていたり、路地裏の片隅で解体している様子も日常茶飯事。もちろん骨はついたままで、日本のように事細かく肉の部位を指定することもできません。日本のスーパーでしか肉を買ったことがない日本人には、「おぉ!」と唸ってしまうほど豪快に並べられた肉や魚たちを見ていると、「命をいただく」という意味を改めて考えさせられる、路地裏のひとコマでした。


川魚が並ぶ魚市場
川魚が並ぶ魚市場
お肉を解体中
お肉を解体中


ネパールのお菓子のお味は?
小さな路地を行くと、昔ながらの小さな店が軒を連ねているエリアがあり、そういった小道ではネパールの食文化を垣間見ることができます。カトマンズの隣町のパタンには、創業100年にもなる老舗のお菓子屋さんがあり、店中真っ黒く煤けていて、見るからに歴史深そうな趣をしています。ここで白井さんがすかさず、「バルフィ食べてみませんか?」と差し出してくれた菱形のお菓子。このバルフィとは、牛乳から作ったあまーいお菓子のこと。散策途中で小腹が空いた様子のみなさんは、見たことの無い白いお菓子に興味津々。「これ、(おもいのほか)おいしい!」と一瞬でぺロリ。パタン町に暮らすネワール族の儀式には、こういったお菓子が欠かさずお供えされているんだそうです。

黒糖菓子をみんなで試食
黒糖菓子をみんなで試食
甘くておいしいバルフィー
甘くておいしいバルフィー



その後、また別の街角にある漢方薬屋さんで、今度は黒糖菓子を発見。こちらは「マーグ・サンクラティ」という祝日に食べる黒糖とゴマのお菓子。ヴィクラム暦(ネパールの暦)の10月(マーグ)の1日(サンクラティ)は、この日から少しずつ寒さが和らぐので、残る寒さに備えて身体を暖める食べ物(とろろ芋やサツマイモ、黒糖など)を食べる習慣があるのだそう。「うん、これもおいしい!」とみなさん口々に。これで、日本の冬も元気に越せそうですね!


素焼きのカップを使い捨てる理由
カトマンズの旧王宮広場周辺の路地裏を抜けると、そこは素焼き物がズラッと並べられた陶器屋街。この陶器はお祈り用のろうそくや、食べ物を入れるカップ(容器)として使われているものです。これらが、はたして地面にまっすぐ立つかどうかもあやしいほど曲がっていたりするのはご愛嬌。実はネパールでは、同じカップを用いるわけにいかないという浄不浄の観念による習慣があり、素焼きのカップは再利用はせず、一回ぽっきりの使い切りです。使用後は地面にたたきつけて割り、元の土へと帰っていくのです。


素焼き物店
素焼き物店
おいしいヨーグルト
おいしいヨーグルト



日本人からするとなんだかもったいない気もしますが、素朴な土の香りとしっくりと手になじむ感触が、素焼きカップならではの味わいを醸し出してくれていました。

カトマンズ支店スタッフによる、おすすめのレストラン

  ラジェシュのナマステ! タメルのおいしいローカルレストラン

ネパールトレッキングの食事について

[ネパール]トレッキング中の食事はどんなもの?


美術館のようなネワールの町をじっくり覗いて見てみよう
カトマンズの隣町パタンは、古い呼び名で「ラリトプール(美しい町)」と呼ばれ、現在も金・銀・銅・木工細工の職人が多く暮らしている町です。そんな美の都パタンに一歩足を踏み入れると、手工芸品や美しい建築物が至るところで見られ、まるで町全体が美術館のよう。寺院などはもちろんのこと、人々が普通に暮らしている民家すら美しく、目を奪われてしまいます。

パタンには、ネワール族と呼ばれる民族が多く、彼らの多くは「トール」と呼ばれる同じ氏の家族で構成される地域の中に暮らしています。住居は、寺院や水場など公共の広場を中心として、「チョーク」と呼ばれる中庭を取り囲んで四方に密集しています。それをつなぐ路地は家の中を通っているようでも、公共の立派な通路。家々の狭間には、人が一人しか通れないような無数の生活路が蜘蛛の巣のように張り巡らされています。

中庭で大量の生姜の皮をむく人々
中庭で大量の生姜の皮をむく人々
水を汲みに通りがかる住人
水を汲みに通りがかる住人


大きな一つの家ともいえる「トール」のチョーク(中庭)を我々のような余所者が通れば、必然的に注目を浴びることになるわけですが、彼らはまるで何事も無かったかのように、いつもどおりの様子で洗濯をしたり、水を汲みにいったり、料理をしたりと、日常の風景を垣間見ることができます。

ネワール建築は一般的に4階建てで、1階は商店・倉庫、2階は寝室+リビング、豪華な三つ窓がある3階は客間、4階は台所+ダイニングとなっています。不浄とされるトイレは1階に、神聖とされる台所は最上階に設けられます。特徴づける最も美しい部分が木彫りの窓枠。3階の三つ窓に細やかな木彫りが施してあり、この窓が立派であればある程、裕福である事が伺えます。


ネワール建築の特徴が光る三つ窓
ネワール建築の特徴が光る三つ窓
美しいネワール彫刻
中に祭られている神様が描かれた
扉の上の彫刻
四方を家に囲まれた中にある中庭空間
四方を家に囲まれた中にある中庭空間
ネワーリを探せ!?
ネワーリを探せ!?



ネワールの街を歩いていると、よくこの窓から家の住人が通りの様子を覗いているのを目にします。「ナマステー」とこちらが手を振ると、必ず微笑み返してくれるやさしいネワールの人々。いつしか、「ネワーリ(ウォーリー)を探せ!」気分で、ついついみなさん、上ばかり見るようになっていました。



デレェ~ミートツァ!(とってもおいしい)家庭料理
パタンの旧市街に暮らす伝統的な民家にお邪魔して家庭料理をいただきました。こちらのラビさん宅はネワール建築がとっても美しい、築100年くらいという古~いお宅。まるで日本のお城のように狭い急階段を、キッチンのある4階まで登っていきます。なるほど、毎日この階段を登れば、ネパール人のように足腰が強くなるわけですね・・・。

今回、ご馳走になったのはネパールの代表的な家庭料理のダルバート。ネパールでは毎日食べられている定食のようなメニューで、ダル(豆スープ)とバート(米飯)の合成語。他に、カレー味のおかず(タルカリ)、漬物(アツァール)の2つを加えた4つがセットになった食事のことを主に指します。この日、ラビさんのお宅で出されたダルバートは、彩りも豊かでとっても豪華。お味はもちろん・・・デレェ、ミートツァ!この家庭料理が今回の旅でもっともおいしかったとみなさん一様に大絶賛でした。


伝統的なネワール建築の民家
伝統的なネワール建築の民家
おいしい家庭料理
おいしい家庭料理



1日2食でダルバートを食す
ちなみに、多くのネパール人の食生活は、基本的にこのダルバート(もっと質素なものですが)を1日2回の2食です。まず、朝おきるとチャ(ミルクティー)をのみ、朝9~10時頃に最初のダルバートを食べます。午後3時頃にはごくかるい軽食をチャを飲みながら食べ、そして夜に2食目のダルバートを食べます。スプーン等は使わず、右手のみを使ってごちゃ混ぜにして食べるのがネパール式。彼らが手で食べてる姿を見ていると、なんだかとってもおいしそうに見えます。その真相が気になる方は、ぜひ彼らに混じって現地スタイルに挑戦してみてはいかがでしょう?


気になるネパールのファッション事情
ネパールの女性は、洋服を着ている人も見られますが、クルタとスルワールとショールという3点セットかサリーを身に付けている人を多く見かけます。ネパール人女性にとって、アクセサリーは必需品!で、耳にはピアス、腕にはチュラという腕輪をいくつもつけています。庶民が集うインドラチョークの一角では、色とりどりのビーズで作ったネックレス、ブレスレットが所狭しとつるされています。ちなみに、ビーズのネックレスと腕輪、シンドゥール(髪の分け目に赤い粉を長く引く)の3点セットは、既婚女性の印なんだとか。

目に鮮やかな民族衣装を着た女性
目に鮮やかな民族衣装を着た女性
トピーを被り、民族衣装を着た男性
トピーを被り、民族衣装を着た男性

男性については、都会ではほとんどの人が洋服を着ていますが、民族衣装を着ている方も時々見かけます。男性の正装は、ダルワという上着とベスト、スルワールというズボンにトピーという帽子をかぶります。かつてネパールに王室があった頃、王宮の敷地内に足を踏み入れるネパール人は、民族服の着用が強制されていましたが、今はお祭りや特別な儀式の時を除き、着る人は少なくなってきているようです。

しかし、まだまだ田舎の方では、民族衣装を着ているおじいさんが多いので、ぜひトピーを被った人を見かけたら、伝統衣装をチェックしてみましょう。ちなみに私はいつも、彼らの足の美しさ(よく歩いている証)に驚かされ、つい羨望のまなざしで見てしまいます。


法事のときに着る服も赤色
法事のときに着る服も赤色

赤色は信仰の証
ネパールの路地裏を歩いていると、不思議と「赤色」をよく目にすることに気づく人も多いのではないでしょうか。赤い粉、赤い花、いけにえの赤い血など、礼拝に使うものは赤ばかり。なぜなら、赤色は神様のための色で、既婚女性の多くは、夫の幸運を願うために赤を身に着けています。

赤いものを身につけることは神への信仰の証でもあり、おばあさんも派手な赤色の花柄のサリーを身にまとい、赤いアクセサリーで着飾っている様子はなんともほほえましいものです。



信仰・祈り・風習

神様への挨拶はかかさずに
大小さまざま、町中にあるどこの寺院でも、参拝する人々がなにげなくしている仕草に気づきます。額と胸を3回結ぶ仕草、これは神々に対するいつもの挨拶。信仰深い彼らは、神様に挨拶なしに通り過ぎるなんて無礼はしません。無数の神が存在するネパールでは、人々の日常は神様への挨拶に忙しくも、それをかかさない敬虔な人々の姿が印象的でした。

お参りの時の挨拶の仕草
お参りの時の挨拶の仕草
灯明を灯し神々に祈る敬虔な人々
灯明を灯し神々に祈る敬虔な人々


餌をやり高徳を積む
仏塔や寺社などの広場で、よく見かけるのがハトの大群。仏教とヒンドゥ教の入り混じったネパールでは、この「餌をやる」ことが「高徳を積む」とされていて、毎日餌をやる人が後を絶ちません。この、何かを与えるということは、すなわち自分にも何か与えられるという精神で、徳を積むと同時に運もよくなるのだそうです。


住宅街の中にある仏塔
住宅街の中にある仏塔
ハトに餌をやることで高徳を積む
ハトに餌をやることで高徳を積む



今回ご紹介したことは、ネパールに暮らす人々の習慣や文化などの、極々一部にすぎません。現地に暮らしているからこそわかる、カトマンズ散策の達人・白井さんのナビゲートのおかげで、こちらにはまだまだ紹介しきれない、おもしろい発見をたくさん体験することができました。このように、ネパールの人々の暮らしや風習を知ることで、彼らとの距離もぐっと近づいたような気がします。

知れば知るほど、もっと知りたくなる国・ネパール。この国の不思議な魅力、こればかりは実際に体験していただかないと伝わらないでしょう。ぜひ一度、この路地裏の世界に足を踏み入れて、ネパールの魅惑の迷宮へ迷い込んでみませんか?