ツアー関連情報

新疆の石窟寺院-鑑賞のポイント-

 

千仏洞(石窟)は、岩場に穿たれた無数の洞窟からなる礼拝用の施設のことをいいます。仏教圏には広く分布しており、中国では、三大石窟として、敦煌の莫高窟、河南省の龍門石窟、山西省の雲崗石窟が有名です。またインドのアジャンター遺跡など、ご存知の方も多いことでしょう。

新疆ウイグル自治区以東のシルクロードの観光でも、ぜひ押さえておきたいキーワードの一つです。残念ながら保存状態はよいとはいえないものも多いのですが、悠久の歴史の中で、今私達の目に触れることができる新疆の大切な遺産なのです。

断崖絶壁に約2㎞にもおよぶクチャのキジル千仏洞
キジル千仏洞(内部)青の色彩ラピスラズリが鮮やか



新疆ウイグル自治区は中国でも一番西に位置する地域です。イスラム教を信仰するウイグル族など多くの民族が暮らしています。そんな新疆には、下記のようにたくさんの千仏洞が残っています。

トルファンのベゼクリク千仏洞

・クチャ:キジル千仏洞、クムトラ千仏洞、クズルガハ千仏洞
・トルファン:ベゼクリク千仏洞、勝金口千仏洞、トユク千仏洞

そして、新疆の千仏洞には下記のような特徴があります。
1.仏教徒がほとんどいない地域にある
2.早期の仏教美術が残っている

千仏洞は石窟寺院とも言われ、寺院として造営されました。でも新疆の千仏洞は普通の寺院とはちょっと事情が違います。現役の寺院ではなく遺跡になってしまっているという点です。新疆では現在イスラム教が広く信仰されています。千仏洞はずっと昔、仏教のほうが盛んだった時代に作られたもので、今は地元から参拝をする人はいません。新疆の千仏洞は生きた宗教施設ではなく、今は遺跡として公開され、歴史を伝える役割を主に担っているのです。

壁画がほとんど残っていない石窟壁画がほとんど残っていない石窟

仏教がなくなれば千仏洞は廃れます。絵が剥がれ落ちていたり仏像の頭がなかったりするのは、異教徒による破壊だったり、自然崩落、いたずらや金目当ての破壊、探検家による資料収集のための持ち去りなどが原因です。要するに千仏洞を受け継いでいく仏教徒がいなくなり、千仏洞が大事にされなくなったことで引き起こされました。中国の東のほうでは今でも参拝の煙が絶えない千仏洞もありますが、仏教が廃れてしまった新疆では、保存状態の良い千仏洞に出会うのは難しいことです。

そのため、(興味がなければ)何が面白いのか分からないといった意見も聞かれる新疆の千仏洞ですが、新疆ならではの見どころもあります。傑作だけを見るのではなく、いろいろな地域にある千仏洞を追っていくと(または遡っていくと)、同じようなモチーフに表現上の違いが見えたり、日本との仏教の繋がりを感じたり、と面白い発見に出会えるのです。

特にシルクロードと日本との関わりが色濃く見える石窟の一つに、クチャのキジル千仏洞が挙げられます。クチャは古代、亀茲(きじ)国として、仏教を篤く信仰する人々が暮らしていました。中国で最も早く3~9世紀にかけて開窟されたといわれる新疆最大の石窟寺院ですが、現在でも200以上の窟が確認されています。
キジル千仏洞の壁画は、仏伝や供養、説法、涅槃図など小乗仏教にちなんだものが多く描かれています。また亀茲楽という、管弦伎楽も盛んな土地だったこともあり、音楽にまつわる壁画もあります。そんな中でも、是非見学が可能なら見ておきたい窟が、第8窟です。
5弦琵琶を弾く飛天が描かれていますが、なんと世界に現存する5弦琵琶は、日本の正倉院所蔵の1つのみ、ということ。この一つの壁画からも、仏教の東漸、日本とのつながりを改めて感じずにはいられないでしょう。