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ベゼクリク千仏洞を楽しむツボ

 

ベゼクリク千仏洞は新疆ウイグル自治区のトルファンの東約50kmのところにある、トルファン観光の目玉ともなる代表的な遺跡のひとつです。今回は、知らなければ20分で見終わってしまうが、知っていれば倍楽しめるベゼクリク千仏洞の鑑賞のポイントをご紹介します。

ベゼクリク千仏洞の歴史

火焔山の中腹に造られたベゼクリク千仏洞火焔山の中腹に造られたベゼクリク千仏洞

ベゼクリク千仏洞が作られたのは6世紀中頃であるとされています。それからイスラム教がトルファンにやってくるまでの間、仏教を信仰していたトルファンの歴代王国の寺院として使われていました。イスラム化が進むと、寺院は使われなくなり荒れ果てていきます。砂の中に埋もれてしまった千仏洞が再び人の目に触れることとなったのは、19世紀の探検家たちの発掘によってでした。それから20世紀にかけて文化大革命など多くの危機を経て、ようやく文物局の保護管理下に入り私たちのような一般人に公開されるようになりました。

千仏洞の概要

一般開放窟はよく変わります一般開放窟はよく変わります

千仏洞とは「千(つまり無数の)仏がいる洞窟」という意味。その名のとおり、ベゼクリクに限らず千仏洞にはたくさんの仏が描かれた石窟が残されています。現存する石窟の数は約60。その中で見学可能なのはほんの5,6窟のみです。そのため見学は長居をしたとしても1時間くらいをみておけば十分です。石窟は河岸の断崖に掘られていますが、今は崖の上部に大きな駐車場が作られ車でアクセスが可能で、駐車場から階段を歩いて下階におり、石窟の見学をします。


ベゼクリク千仏洞のツボ1-「参道に祈りの河と火焔山

千仏洞とムルトゥク河千仏洞とムルトゥク河

ベゼクリク千仏洞でぜひ注目して頂きたいのが周りの環境です。実はベゼクリク千仏洞は、西遊記で有名な火焔山の谷間にあります。真っ赤に燃え立つような色をした山が千仏洞に迫っており、なかなかのダイナミックさです。ベゼクリクの駐車場では「ラクダで火焔山に登ってみんかね〜」と、ラクダ引きのおじさん達も待ち構えています。
ベゼクリク千仏洞の隣にはムルトゥク河という河が流れています。昔この寺院が実際に使われていた頃は車道などありませんから、このムルトゥク河の河原を歩いて、千仏洞まで行き来をしていたそうです。今は駐車場から階段を下りて石窟の見学をしますが、昔は千仏洞は河辺から見上げるものでした。石窟へと登る階段は、限られた高貴な身分の人や僧侶しか登ることができなかったとか。ムルトゥク河を参道として意識しながらベゼクリクに向かうと、ルートが整備された今では味わうことのできない当時の趣と神聖さが感じられます。

ベゼクリク千仏洞のツボ2-「過去仏が釈迦の前世を物語る」

第15窟の請願図(復元)第15窟の請願図(復元)

石窟の中は、赤色を主とした壁画で彩られています。昔はさぞ美しかっただろうと思いますが、今は完全な姿で残っている石窟はなく、ところどころ(または、半分以上)剥がれ落ちてしまっています。ですが、不完全な壁画であっても、そのいくつかは私のような素人でも意味を知ることができるはっきりとした特徴を持っています。

ベゼクリク千仏洞でぜひ探して頂きたいのが、過去仏と前世の釈迦の姿が描かれた壁画です。見つけるポイントは、大きな赤い衣をまとった2mくらいの大きさの仏と、その周りに供物などを持ったたくさんの人物像が描かれていることです。一見するとこの真ん中の大きな仏が釈迦のようですが、そうではなくこれは『過去仏』といって、釈迦が現れる前の仏なのだそうです。仏の周りに描かれた人物像のどこかには、何かいいことをしている前世の釈迦がいます。たとえば過去仏の足元が汚れないように、長く伸びた自分の髪の毛をぬかるんだ道に敷いて、どうぞお通り下さいと言っている前世の釈迦。仏の道に入るべく髪の毛を剃ってもらっている前世の釈迦など。来世にはブッダとなりたい、と前世の釈迦が祈りをたてている様子を描いたもので、この種のテーマの絵画を「請願図」といいます。ベゼクリク千仏洞では特に作例の多いテーマです。ぜひ見つけてみてください。

ベゼクリク千仏洞のツボ3-「涅槃図にシルクロードが溢れてる」

第33窟の涅槃図『各国王子挙哀図』第33窟の涅槃図『各国王子挙哀図』

涅槃図は釈迦が亡くなった(入滅した)ときの様子を描いた絵です。仏教絵画ではよく扱われるテーマで、日本にも多くの作例があります。入滅のときには、釈迦は沙羅の樹の下に手枕をして横たわり、弟子、天人、動物までもがやってきてその死を悲しんだと言われています。ですから涅槃図を見分けるときは、横たわる釈迦や沙羅双樹や見舞い客に注目することになります。

ベゼクリク千仏洞33窟の涅槃図の特徴は、まず釈迦がいないことです。残念なことに釈迦の姿は剥ぎ取られ少しも残っていません。剥ぎ取られている部分は何か大きなものが横たわっているように見えます。そして図の上部には樹(沙羅双樹)が描かれています。そして周りには嘆き悲しむたくさんの人々の姿があります。この人々の顔はベゼクリク独特のものです。一見して分かるとおり肌の色、容貌、装束は様々。まるでシルクロードの民族の多様さを表しているようです。この涅槃図は各国王子挙哀図と名づけられており、まさに東西文化の往来の場となったシルクロード諸国の人々が(トルファンの有力者が描かれているという説も?)描かれた世にも稀なエキゾチック涅槃図なのです。

このように千仏洞には知らなければ通り過ぎてしまう様々な鑑賞のポイントがあります。ここにご紹介したのはほんの一部で、千仏洞の芸術には知れば知るほど、そして見れば見るほど新しい発見があります。みなさんももっと楽しい鑑賞ポイントがあれば、是非お知らせくださいね。