添乗報告記

添乗報告記●シルクロードの王道を巡る 天山南路紀行8日間(2012年4月)

 
火焔山!
火焔山の前で「火」のポーズ 真ん中が添乗員

2012年4月28日~5月5日
文・写真●田中真紀子(東京本社)

旅って最高だ!世界は広くて美しい!生きているって素晴らしい!そんな風に突き抜けるような感覚を味わった忘れがたい旅の数々。そんな場所のひとつが、新疆ウイグル自治区。その昔友人達と「カシュガル最高~!」と祝杯をあげ、歌い踊った土地へ、今回は14名の個性豊かな素敵な方々とご一緒することができました。


日曜日のカシュガルといえば、バザール!

サモサは釜の側面に生地を張りつけ焼く
サモサは釜の側面に
生地を張りつけ焼く
サモサの中には羊肉がたっぷり
(※クリックでサモサを拡大)

初日は移動日。ウイグル自治区の区都ウルムチに深夜に到着し、翌朝早朝にはカシュガルへ国内線で向かうという強行軍を経て、たどり着いた「ウイグル人の心の故郷」カシュガル。移動疲れと睡眠不足の皆さんをまずご案内したのは、家畜市場(バザール)。カシュガル郊外の屋外会場にて日曜日にのみ開かれる大々的な市で、その名の通りヤギ、羊、ロバ、ラクダ、馬、などの家畜が売買されている様子を見学できます。
家畜を見る前に、食いしん坊添乗員の口車に乗せられた有志の皆さんと、まず入口近くの食堂でサモサとシシカバブを味見。熱々のサモサをほおばりながら市場の様子を眺め、市場の雰囲気に身体が馴染んできたところで出発! 
人と動物でぎゅうぎゅうの会場を歩いていきます。トラックから下ろされる時は嫌がり、悲痛な悲鳴をあげる動物達も、縄につながれ整列させられると諦めの境地に達するのか、虚ろな目をこちらへ向けてきます。中には目が潤んでいるものもいたりして、複雑な思いも。いきなりの先制パンチで皆さん眠気も吹っ飛び、異国へ来たことを五感で感じていただけたようです。

毛刈り済のぷりぷりお尻の羊達
毛刈り済のぷりぷりお尻の羊達
買われるのを待つ羊達。目が、虚ろ
買われるのを待つ羊達。目が、虚ろ

漢方薬に使われるハリネズミの皮
漢方薬に使われるハリネズミの皮

日曜日はカシュガルが活気づく特別な日。街の中心近くの市場でも日曜バザールが開かれます。普段は人手もまばらですが、日曜はバザール周辺に人が溢れ返っています。日用品、自動車・バイク用工具、食品など、ありとあらゆる物が売られており、ドライフルーツ、ウイグル女性がしている色とりどりのスカーフ、バラの紅茶、山盛りのサフラン、など日本の市場ではあまりお目見えしないものも多数売られています。
私もここで殻付アーモンドと干しいちじくをお土産に購入。ナッツは列車の車中や、この後夜な夜な繰り広げられた宴会のつまみにも活躍しました。ただ10年前は「安い!」と両手離しで喜んだドライフルーツの量り売りも、最近の中国、特に地方都市の物価高騰で、日本とさして変わらない値段になっているものもあり、ここカシュガルでも生活のやりくりが大変という話がリアリティを帯びて感じられる時間でもありました。

バザールの入口。極僅かだが、まだロバ車の姿も見られた
バザールの入口。
極僅かだが、まだロバ車の姿も見られた
なつめ、くるみ、アプリコットなどドライフルーツ、ナッツが並ぶ
なつめ、くるみ、アプリコットなど
ドライフルーツ、ナッツが並ぶ


旧市街散策は楽しい!

今回の旅で全体を通して、遺跡観光以上に好評だったのが、風の旅行社の十八番ともいえる「旧市街散策」です。カシュガルの職人街や旧市街散策、特にクチャの旧市街散策は人々の生活風景が垣間見られて楽しい時間となりました。百聞は一見にしかず!写真とともに街の様子をご覧ください。

【カシュガル:職人街】

カシュガル職人街のチャイハナ(茶館)の外観
カシュガル職人街のチャイハナ(茶館)の外観
強面な店の主。話すと気が良く笑顔も優しい
強面な店の主。話すと気が良く笑顔も優しい
チャイハナの店内でくつろぐウイグル人のおじいちゃん達
チャイハナの店内でくつろぐウイグル人のおじいちゃん達
(写真提供:鈴木博文様)
職人街に古くからあるシシカバブ屋。地元でも美味しいと評判の店
職人街に古くからあるシシカバブ屋。
地元でも美味しいと評判の店

【カシュガル:旧市街】

メンコで遊ぶ子供達。日常生活が見られるのも旧市街散策の魅力
メンコで遊ぶ子供達。
日常生活が見られるのも旧市街散策の魅力
足元のレンガ
四角レンガは「この先袋小路」、
六角レンガは「道続く」の意。足元にも先人の知恵
民家の内装(一例)。中の広さは入口からは想像できない
民家の内装(一例)。
中の広さは入口からは想像できない
家の中には工房も。ウイグル絣(アトラス)の織り機
中に工房を構える家も。
ウイグル絣(アトラス)の織り機

【クチャ:旧市街】

別名クチャバスと呼ばれるロバ車。旧市街を多く行き交っていた
別名クチャバスと呼ばれるロバ車。
旧市街を多く行き交っていた
クチャ名物、特大サイズのナン
クチャ名物、特大サイズのナン
サモサ屋さん「写真撮られてる、恥ずかしい~」といいながら作業中
サモサ屋さん「写真撮られてる、恥ずかしい~」
といいながら作業中
クチャは石鹸でも有名。原材料は綿花の種の油と羊の油
クチャは石鹸でも有名
原材料は綿花の種の油と羊の油

2008年のウルムチ騒乱以降、ウイグル自治区内の集会の取り締まりなどが厳しく、カシュガルの職人街、各町の旧市街も、街の雰囲気、人々の想いも少しずつ変化しています。それでも日本人に対して好意的に接してくれるウイグル族は多く、今回もたくさんの笑顔に出会えました。道で遊ぶ子供達は、はちきれんばかりの笑顔で元気一杯。
そんな出会いの影には、ウイグルの言葉、習慣、想いを共有するカシュガル出身のベテランガイド・ヤリクンさんが同行してくれたことで醸し出された安心感も大きかったと思います。風の旅の要は現地スタッフ、と常々日本で働く私達スタッフも思っているのですが、今回も改めてその思いを強くしました。



シルクロードは景色も魅力

カシュガル市街から崑崙山脈を望む
カシュガル市街から崑崙山脈を望む

シルクロードMAP

遺跡や民族性が注目されがちなウイグル自治区ですが、実は景観も素晴らしいのです。今回辿った天山南路の北側には天山山脈、タクラマカン砂漠を挟むようにして南には崑崙山脈、さらに西のパキスタンとの国境にはカラコルム山脈が連なります。

これら山脈は常に街から見えるわけではありませんが、トルファンのように海抜マイナスの都市(市街南にあるアルディン湖の海抜は-154m)から7,000m級の山々までを擁するウイグル自治区では奇観と呼ばれる不思議な自然景観も多く、今回訪れた天山神秘大峡谷、ヤルダン地形などもその筆頭にあがります。日本では決して見られない壮大なスケールの自然は「さすが大陸」と思わずにいられません。また、この多様な地形から天然資源が豊富にとれることもあり、現在は石油、石炭、また風力発電など中国のエネルギー産業の重要拠点にもなっています。

天山神秘大峡谷の入口
天山神秘大峡谷の入口
(クリックで拡大)
天山神秘大峡谷
天山神秘大峡谷
(クリックで拡大)
ヤルダン地形
ヤルダン地形


トルファンといえば、葡萄。そして家庭料理に舌鼓

中国で一番暑い都市ともいわれるトルファン。その名に違わず、私達が訪れた5月初旬も熱かった! この暑さを伝えるのに同僚向けに使った表現は「真夏のラサの陽の強さ、7月の東京の熱気」。双方を体験したことのある方ならこれがどれ程強烈なものかお分かりいただけることでしょう。
しかし、トルファンの代名詞「葡萄栽培」はこの暑さあってこそ。土地の人々はこの気候を実にうまく生かし、カレーズ(地下用水路)を廻らしたオアシスを形成し、葡萄棚を造り、葡萄を効率的に干す小屋を建て、涼しく過ごすための工夫がなされた家で生活を営んでいます。葡萄作りを生業としている家が殆どで、それ以外の農作物を作っているお宅は極僅か、とか。今回、以前からよくしていただいている葡萄園を営む民家へお昼に寄らせていただき、家庭料理を作る様子も見させていただきました。この日のメニューはウイグル料理の王道 “お袋の味”ラグメン、ポロ(ウイグル式ピラフ)、シシカバブ(羊肉の串焼き)でした。美味しくておかわりする人多数!

【ラグメン】

ラグメン1
まとめておいた生地を
1本ずつ伸ばしていく
(クリックで拡大)
ラグメン2
糸巻きと同じように腕にかけ、
板に叩きつけながら伸ばす
ラグメン3
伸ばした麺を鍋へ

【ポロ、シシカバブ】

ラグメン1
ポロは石炭の釜で炊きたてをどうぞ。右はガイドのヤリクン
ラグメン1
ポロを取り分けるお母さん
アトラス(ウイグル絣)のワンピースが素敵
ラグメン1
シシカバブを焼く大黒柱アサンジャンさん


食事や昼寝は葡萄棚の下で。家の方も真夏の夜はこの台に並んで寝るそうです
食事や昼寝は屋外の葡萄棚の下で。
家の方も真夏の夜はこの台に並んで寝るそうです
自宅の裏には広大な葡萄園が広がる。手前のレンガ造りの小屋で干し葡萄を作る
自宅の裏には広大な葡萄園が広がる。
手前のレンガ造りの小屋で干し葡萄を作る


旅は自ら積極的に楽しんだ者勝ち(行動範囲ではなく、気持ちの上で)といつも思っているのですが、今回の旅はツアーメンバーに非常に恵まれ、参加された皆さん全員がhappyな雰囲気で旅行を楽しんで下さり、非常によい雰囲気で行程が進んでいきました。
参加者の中に若きお坊様がいらっしゃり、キジル千仏洞を訪ねた後は遺跡縁の鳩摩羅什(クマラジュ)のお経を、そして私達からの熱烈な(?)リクエストに応え高昌故城でもお経をあげてくださいました。ガイドのヤリクンさんも道中ウイグルの歌を高らかに歌ってくれ、どちらも旅の絶妙なスパイスとなりました。素敵な出来事だったので、一部を動画でご紹介させていただきます。



高昌故城の大僧院跡にて。遺跡に息が吹き込まれるようだった


お別れの歌を空港までの道中歌ってくれたヤリクンさん


土地のものを食べ、めずらしい景色や匂いや顔立ちの人々に刺激を受け、歴史に想いを馳せ、時にはしゃぎ、楽しむ。一期一会の出会いを楽しみつつ、やはり旅で一番心に残るのは人との出会いだと改めて感じた「民族の交差点シルクロード」への旅となりました。