特別記事

草原に馬頭琴を届ける理由

 

*現在募集中のコース、「NPOしゃがぁ理事長同行! 伝統楽器・馬頭琴を届けに行く旅8日間」に同行予定の特別講師西村氏に、このコースの肝である「なぜ馬頭琴を届けにいくか」について、インタビューしました。お申込みご検討中の方は是非ご一読下さい!

文・写真●西村 幹也 (NPO法人北方アジア文化交流センターしゃがぁ)

 

以前の報告の中で、ドンドゴビ・アイマグ(県)、ウルジートソム(郡)のオランサイハンチたちと会ってきた際の報告をしました。モンゴルにおいて、普通に歌を歌い、馬頭琴を弾く人の中でも特に優れた人のことをオランサイハンチと呼びますが、私はその文化的行為を担う全ての人々をオランサイハンチと呼びたいと思っています。
さて、以前の報告でも明らかなように、歌謡いも馬頭琴弾きも、馬頭琴弾きたい人もたくさんいました。今回はソム周辺の人々としか会うことが叶いませんでしたが、まだまだ沢山いることも確認できています。少々前のことになりますが、ユネスコの人が馬頭琴弾きネルグイさんの所を尋ねて来て、「弟子を取って、あなたの馬頭琴の技術を後世に伝えて欲しい」と言っていったそうです。これはこれで、素晴らしいことなのですが、これでは、「ネルグイコピー」が残るだけで、「気ままに、自由自在に、気まぐれに、好き勝手に弾く」というスタイルを持つ人は生まれにくいだろうとも思いました。

かつては、あちこちの家に手作りの、さまざまな大きさの馬頭琴があって、それを好き勝手にいじくり回している内に覚える、もしくは、年長者が弾いているのを横で聴いたり、ラジオから流れるのをまねて試行錯誤する人たちがたくさんいたはずです。「このように弾くべき」とかいうのは無くて、自由だったと思います。今回の調査ではっきりと判ったことは、以下の通りです。

  1. 50歳以上も演奏者の多くは馬頭琴を持っていないこと
  2. ソムの小学校には、馬頭琴を教えようにも、子どもの数だけ馬頭琴がないこと。オルティンドー(長唄)は授業で教えられるが、馬頭琴は楽器がないから無理。
  3. 演奏者の多くは馬頭琴を弾く親や兄弟から教わったということ。
  4. 馬頭琴は高価であり、子どもに買い与えるのは難しいこと。
  5. 馬頭琴を弾きたいという若者、子どもは沢山いるということ。

とにかく、馬頭琴を学びたい、弾きたいという気持ちがあるのに楽器が身近にないのは間違いがありません。このままでは、高名な在野の演奏者を生み出してきた土地から、そういった演奏者を生み出す環境が無くなってしまうと強く感じました。現地の年配のオランサイハンチたちも後継者が生み出されうる土地にしておきたいという気持ちを強く持っているようです。