「チャンドマニ」という映画のこと

 
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その作品から得る時間そのものが幸せで、存在を全肯定したくなる性質の映画があると思います。素直に、画面に広がる時間(あえて時間と言いますが)をみつめて心を委せればよいという意味では、実際の音のあるなしに関わらず音楽的に心地好いと言えるものかもしれません。
今回ご紹介する「チャンドマニ」という映画もそういった映画のひとつです。

「チャンドマニ」は、モンゴルは西の端にあるホブド県チャンドマニ村という、ホーミー(喉歌)の故郷を辿っていくロードムービーです。監督の言を借りれば、「モンゴルでのホーミーは日本で言うところの田植え歌のようなもので、今や本来の姿を失いつつある」もの。だから、ホーミーは遊牧民のもので、それは都会の劇場ではなく草原で歌われるものだ、という趣旨のもと、美しい映像とともに物語(=旅路)は進んでいきます。

お歳を召した遊牧民が歌うホーミーやオルティンドー(長唄)、奏でる馬頭琴、ツァガンサル(旧正月)のゲルの風景はもちろんの見どころですが、わたしが特にご紹介したいのは、乗り合いバスでチャンドマニ村を目指す一連のシーンです。長い陸路移動のつらさや、乗り合いバスの狭い空間から生まれるひとときの友情にも似た関係性などは、モンゴルという土地に限らずとも、旅を愛する人ならきっと、それぞれの人生がほんの僅かな時間だけ交差するあの忘れがたい「感じ」を追体験されると思います。
そしてなんと言っても一番は冬のモンゴルの美しさ。一面雪に覆われた広い大地、そこを歩いてゆく家畜と遊牧民のシルエット、はき出される息の白さや寒さで赤くなった皮膚などのひとつひとつが何とも美しく清浄なものに見えてきます。
モンゴルでは白は清らかな色とされていますが、それがすとんと腑に落ちる光景ではないでしょうか。

映画に込められたたくさんの要素が非常に心地好く、是非、多くの方に観ていただきたいおすすめの作品です。

▼チャンドマニ公式HPはこちらから。
画像集では、美しい冬のモンゴルや、ツァガンサルの風景に出会えます。

▼3/20(土)から渋谷アップリンクX他、全国順次ロードショー予定だそうです。