特別記事

<大川健三 特別寄稿>
雪と黄葉の季節を撮る! 秋の四姑娘山

 

珍しい高山植物で有名な中国四川省の四姑娘(スークーニャン)山には夏の間多くの観光客が押し寄せ、美しい花々を楽しんで行きます。夏が終わると観光客は激減しますが、今度は四姑娘山がまったく違う新たな表情を見せてくれる季節がやってくるのです。
9月下旬頃から1週間位の周期で雪が降ったり晴れたりするようになり、紅葉したナナカマドの仲間等が新雪の峰々に映えて奇麗になります。そして 10月中旬から11月初旬に掛けて、黄葉したカラマツ等が谷を埋め尽くして、カメラを持つ手が震える程に心を躍らせてくれるのです。
四姑娘山の一般的な撮影場所はホテルがある日隆(約3,200m)の町から、シャトルバスの終点である双橋溝奥の紅杉林(約3,800m)や、騎馬で日帰りできる長坪溝の木騾子(約3,700m)、或いは同じく騎馬で日帰りできる海子溝の大海子や花海子(約3,800m)です。幾つかの写真を例に取りながら撮影のポイントをご説明しましょう。


【四姑娘山 撮影ポイントMAP】

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① 双橋溝側から見たセルデンプー山
双橋溝側から見たセルデンプー山
撮影地:双橋溝上流の道路際3800m
 
 
双橋溝の入口からシャトルバスで約40分。シャッターチャンスは午後です。道路と山の麓の間に渓流があり、この渓流に沿って桟道が続いています。この桟道に沿って下って行くと数年前の土石流で堰き止められて出来た広い湖があり、周囲の山々を映します。こちらは早朝にシャッターチャンスがあります。右手の稜線に有る陽の当らない大きな垂直の岩壁は著名な日本人登山家が2005年夏に初登頂しています。
 

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② 四姑娘山の北西壁を仰ぐ木騾子(もくらし)
四姑娘山の北西壁を仰ぐ木騾子(もくらし)
撮影地:木騾子の渓流西岸3,700m
 
 
木騾子は草地と湿地が渓流の両側に広がっていて主峰北西壁やプニュー山東壁を仰ぎ見る事ができます。また羊満台奥の双耳峰(キャメルピーク)も遠望できます。長坪溝の谷は南北方向に広がり、川や湿地を前景にして、朝は逆光で、午後は順光で周囲の峰々を撮影できます。この写真は午後に撮影しています。
 

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③ 海子溝の大海子周辺
海子溝の大海子周辺
撮影地:大海子北東側山腹3,800m
 
 
この写真は大海子という湖に隣接する山腹から湖と周辺の山を広く撮影した所謂観光写真ですが、湖岸にカメラをセットして黄葉したカラマツ林や山陰を効果的に画面に入れると様々な面白い写真が取れます。
 

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④ 鍋荘坪の丘から見える四姑娘山の峰々
鍋荘坪の丘から見える四姑娘山の峰々
撮影地:鍋荘坪3,500m
 
 
鍋荘坪は主南稜線上に有る丘で、稜線に沿ってカラマツが生えています。低い角度で入って来た朝の光を使って立体感を出しています。鍋荘坪の丘へは日隆の町から歩いて1時間~1.5時間位です。
 

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⑤ まとまった雪の降った四姑娘山の峰々
まとまった雪の降った四姑娘山の峰々
撮影地:猫鼻稜観望台周辺3,500m
 
 
日隆の町から巴郎山の方向に車で10分位戻った所に展望台があり、条件の良い日はカメラの放列が出来ます。時間と雲の出方によって展望台から道路沿いに下ったり上がったりして構図を決められます。また道路東側の山腹を登って行っても幾つか撮影ポイントがあります。
 

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ここから先は日帰りできない場所に露営して撮影した例ですが、今後山小屋や道路等が整備されれば楽にこのような場所で撮影できるようになるでしょう。

⑥ 新雪のキャメルピークを仰ぐ長坪崖穴
新雪のキャメルピークを仰ぐ長坪崖穴
撮影地:長坪溝の長坪崖穴3,800m
 
 
木騾子から騎馬で片道1時間半位の長坪崖穴周辺では、谷が南東から南へ大きく曲がっているため、朝夕の両方にシャッターチャンスがあります。長坪崖穴は広大な湿地と草地が入り混じった場所で川が大きく蛇行しています。この蛇行している川を前景に入れれば、構図の決め方は光線の具合や時間に応じて自由自在です。この写真は、川に映る羊満台奥のキャメルピークの揺らぎをアクセントに使うため、川幅が広く流れが緩やかな場所を探して撮影しています。
 

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⑦ 長坪溝側から見たセルデンプー山
長坪溝側から見たセルデンプー山撮影地:長坪溝上流3,900m
 
 
長坪溝上流は北西から南東に向かって川が流れているため、一般的には朝よりも午後の光線の方が撮影に適しています。少しだけ陽が傾いた午後の光を使って、全体的に明るい黄葉を撮影しています。
 

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⑧ 夕照の四姑娘主峰
夕照の四姑娘主峰
撮影地:長坪溝の羊満台4,600m
⑨ チュプー山と倒溝山
チュプー山と倒溝山
撮影地:長坪溝の羊満台4,600m
⑩ 新雪を被ったプニュー山
新雪を被ったプニュー山
撮影地:長坪溝の羊満台4,600m
8,9,10の写真は長坪溝東側山腹の上部に有る羊満台で撮影しています。羊満台は氷河期に作られた広いモレーン地帯で、あちらこちらに大小の湖や池があります。四姑娘山の主峰を撮影する場合、秋は西向きの岸壁だけに光線が入るため夕方にシャッターチャンスがあります。秋は西向きの風が晴れで、東向きの風では雲が多く出て主峰のピークを隠してしまいます。
 

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風通信」34号(2008年6月発行)より転載