添乗報告記●人気の秘密はココにあり。青蔵鉄道を楽しもう!(2009年12月)

コース:青蔵鉄道で行く 聖都ラサで迎えるお正月7日間
2009年12月27日〜2010年1月2日 文●池内明穂(東京本社)

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標高4,057mのナクチュ駅にて

開通3年を向かえ、今なお根強い人気の青海チベット鉄道。世界最高所のタングラ駅(標高5,072m)や永久凍土地帯にある世界最長の清水河特大橋(全長11.7km)など6つの世界一を有し、青海省の西寧とチベット自治区のラサを結びます。その全長は1,956km。開通から今まで、数多くのテレビ番組や旅の情報誌で紹介されてきました。普段鉄道にそれほど興味がない方にとっても、一度は乗車し、その魅力を体感したいと思っている方も多いのではないでしょうか?
今回年末年始をラサで迎えるため、真冬のチベットへ向かって10名の皆様と出発いたしました。憧れの列車の旅のスタートです。


何をする? 何が見える? −寝台列車の過ごし方−

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西寧駅の待合室にて
列車到着を待ちます
ツアーで利用する車輌は、硬臥(2等寝台車)で上・中・下の3段ベッドが向かい合わせで並んでいます。本来6人で1つのコンパートメントを使用するのですが、私達が乗り込んだ車輌は、北京始発(西寧出発は夜7時頃)だったためか、乗客もまばら。皆様全員が一番下のベッドを広々と使用することができました。荷物をベッドの下や天上棚に収納し、ひと段落です。その後、食堂車で夕食をとり、夜10時近くの消灯前に、寝る準備を整え、就寝。
寝台列車は、騒音がうるさく、寝る時も振動が気になるのでは?と心配しましたが、そんな心配は全く無用。あっという間に眠りに落ちました。


翌日は8時に朝食です。7時半頃、皆様起き始めてゴソゴソと準備をしていましたが、まだ車内の灯りは点かず、窓の外は満天の星です。空が近いせいか、地平線ぎりぎりまで星が瞬き、鉄道に沿ってラサへと続く道路を走るトラックのライトも闇夜を照らし進んでいました。
段々と空が白み始め、ようやく朝日が顔を出したのは、8時過ぎ。乾いた大地が白く輝き、青蔵高原のダイナミックな風景がどこまでも続きます。

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遠くにヤクの姿も!

車内は、コンパートメントのベットの他に、通路には折りたたみの椅子も用意されています。皆様、のんびりと車窓の景色を堪能したり、同じツアーになった方とのおしゃべりを楽しんだり、現地の方との交流を楽しんだり、車内探検をしたりと、穏やかなゆったりとした時間が流れていました。


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大きな窓から広大な
景色が広がります
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ベット(下段)は日中、椅子代わり
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人懐っこいチベット族の少年との交流

 


真冬の澄み渡ったスカイブルーの大空と、標高5,000m級の山々が連なる白銀の嶺が絶妙なコントラストを生み出します。荒涼とした大地に、時折登場するヤクなどの動物達。世界最高の標高を誇るタングラ駅、道中の最高到達地点であるタングラ峠(標高5,072m)、一面の氷が外界の寒さを物語るツォナ湖など、終着駅ラサまで見所は尽きることなく続きます。約20時間の鉄道の旅は、想像していたよりもあっという間に過ぎました。

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河もご覧の通り、凍ってます
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標高4,594mのツォナ湖駅
背後に見える湖も凍っています

旅の楽しみは食にあり -食堂車で本場の中華料理に舌鼓−

“旅先で何を食べるか” 旅に出ると、せっかく海外に行ったのだからと、一食一食に対しての思い入れも殊更強くなります。今回の私達が乗車した列車では、観光客の姿はほとんど見かけない状態だったので、列車での食事は全て食堂車で頂くことができました。(通常は食堂車では1回食事提供をし、その他はお弁当になります)

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清潔な食堂車で待ちに待った夕食です
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1日目夕食:野菜たっぷり熱々料理

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2日目朝食:お腹に優しい
とうもろこしのお粥(奥)が嬉しい
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2日目昼食:前日とは異なる野菜炒めの品々

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食堂車のお姉さん

北京始発の列車だったこともあり、料理も北京出身の調理人が腕を振るいます。落ち着いてとても清潔な食堂車。料理が運ばれてくるのを待ちながら、広大な車窓の景色を楽しみます。しばらくすると、熱々の野菜炒めがテーブルを埋め尽くしました。中国では「趁熱吃(温かい料理は温かい内に食べなさい)」とよく言われます。高所の体調ケアにおいては、胃腸の働きが弱くなるので食べすぎに注意が必要ですが、作りたての色鮮やかな野菜を中心とした本場の中華に、知らず知らず箸も進みます。がらんとした貸しきり状態の食堂車では、ウエイトレスのお姉さんも、また各車輌の乗務員の方も休憩時に集まってきておしゃべりを楽しむような、のんびりとした雰囲気でした。観光客の少ないオフシーズンの穏やかな一面を垣間見ることが出来ました。

ふらっと訪ねて −巡礼者で賑わう硬座(2等椅子席)−

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2等椅子席車輌の様子

現地の方との交流も旅の大きな楽しみです。1両目の寝台車輌からぐんぐんと進み、食堂車を抜けると、そこは硬座(2等椅子席)の車輌が続いています。ラサを目指すチベット族の巡礼者、僧侶、また仕事の為、家族に会う為に乗車している漢族の方、他様々な民族の方々で賑わっていました。

特に普段農耕・放牧をして生計を立てているチベットの方にとって、冬は農閑期にあたり、巡礼者の乗車率も高くなります。今回椅子席の車輌に外国人観光客の姿はなく、私達が通路を通り「タシデレ〜」と挨拶すると、ものめずらしさからか、にこっと笑顔が返ってきました。
※2等椅子席の車輌と食堂車の間の扉は施錠されている場合が多いため、移動したい場合は乗務員に一声かけましょう。

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ヤク肉を切り分ける
お母さん
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素朴な笑顔がまぶしい

「行くなら冬?」 −答えはNOそしてYES!その季節を感じて列車を楽しもう−

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2等寝台車にてラサへ向かう巡礼者

今回私達のツアーは、真冬の観光客が少ない時期だったことが一番大きなポイントとなりました。広々と使え気兼ねすることなく使用できた寝台車輌のコンパートメント、のんびりと食堂車で中華料理を楽しめたことは、これ以上ない贅沢となりました。また青く澄み渡った蒼天と、輝く雪山を飽きることなく眺めながら、身も心もリラックスできた鉄道の旅。そして多くの巡礼者で賑わう2等椅子席の活気と皆さんの素敵な笑顔に、これから始まる聖都ラサでの観光をより期待させ、引き立ててくれました。

それでは「他の時期はどうなの?」と疑問を持たれる方もいらっしゃることでしょう。一般的にツーリスト目線でのベストシーズンは、寒い冬ではなく、夏が挙げられます。その季節によって見せる大自然の表情は、それぞれ異なった魅力がありますが、例えば雨季にあたる夏(6月〜9月頃)は、その雨の恵によって緑の絨毯を敷き詰めたかのような大草原が広がります。また世界各国からツーリストが訪れるので、コンパートメントや椅子席でも、様々な国の方に出会うことができ、楽しい交流も可能です。

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午後の日差しを浴びて
ラサ到着を待つ

車窓から見える雪解けの新緑美しい春や、秋の黄色に色づく草原も美しく、また穏やかな気候で観光にも適したシーズンです。一概に「この季節が一番!」とは言えず、チベットは1年中楽しめる地域と言えるでしょう。

鉄道の旅は、いつの時代でも、どこの国でも人々を惹きつけます。今回の青蔵鉄道では、車輌も新しく設備面での快適さはもちろん、乗務員さんの明るい対応にも好感を持ちました。そして車窓から広がるダイナミックな景色、各所各所で通過する見所ポイントに、他の季節はどんな様子なんだろう?と興味を持ちました。
さあ、皆さんも広大なチベット高原を体感し、巡礼者と同じ空間を共有し、聖都ラサを目指してみませんか?


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Q1.高山病がやっぱり心配。車内の設備はどうなっているの?

A1.車輌は中国とカナダの合弁会社が設計、製作しており、気圧調整は行っておりませんが、各車輌に酸素供給口がございます。車内の酸素濃度は平地の80%(標高約3,000mに相当)に保たれており、高山病のリスクも大幅に軽減されます。緊急用に酸素マスクも装備され、車内には医者も同乗、トイレにも緊急呼び出し用ボタンが設置されています。成都から飛行機で一気にラサに入るよりも、身体への負担は少なく高度順応もしやすいといわれております。
★また風の旅行社のツアーでは、列車の中もガイドが同行し、参加者の皆様の健康管理もお助けいたしますので、安心してご参加ください。


Q2.席を離れることは多いけど、車内の治安は大丈夫?

A2.各車輌に乗務員がいて、時々巡回しています。寝台席、椅子席とも事前に購入する指定席で、列車内を移動しても席がなくなることはありません。
海外では(鉄道乗車に関わらず)貴重品は「肌身離さず」が原則ですし、席を離れる場合は、同じコンパートメントの方に一言伝えて、大きなお荷物を見てもらうなどの対策をされると安心です。


Q3.途中の駅でホームに降りられるの?

A3.今回(北京始発18:08西寧発の場合)、日中の時間帯で唯一ホームに降りられた駅は那曲(ナクチュ)駅でした。チベット語で「黒い河」の意味を持つナクチュは標高4,057mに位置し、終着駅ラサまではあと約2時間半。ナクチュはチベット自治区北部最大の都市で交通の要となっています。
駅前に町が広がっているわけではありませんが、ラサまでの線路沿いには民家や工場など建物が目立ち始めます。約5分の停車時間では、カメラを片手に、4,000mの世界へ一歩踏み出しました。皆様も空気の薄さを実感した様子でした。
   
また青海省のゴルムド駅でも停車時間によっては降りることも可能です。ちなみに今回は真夜中だったため、皆さん降りずに夢の中でした。


Q4.車内で快適に過ごす為のお勧めグッズは?

A4.私のお勧めグッズベスト3をご紹介します。

①マグカップ(または水筒)とティーバッグやインスタントコーヒー等
各車輌に給湯器があります。いつでも温かい飲み物が飲めます。車内は乾燥していますので、水分補給も大切です。
②スリッパ(サンダル)
車内でくつろぐには欠かせません。私は前日の西寧のホテルにあった布製のスリッパを持ち込みました。
車輌を移動する際や、洗面所でもそのまま使用できるようにしっかりしたビニール製をお持ちになっても良いかと思います。
③乾燥対策グッズ
車内はエアコンが効き、乾いた酸素を供給しているので、非常に乾燥しています。保湿クリームや、リップクリームはもちろん、のどの渇きを潤す飴などもあると更にgood!


【番外編】
・双眼鏡(ヤクやチベット・ガゼルなども見えるかも!)
・メモ帳とペン(中国の方とはなんとか筆談で交流も出来ちゃいます)
・文庫本(ゆったりとした贅沢な時間に、じっくり読書もいいのでは?)

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皆さま元気に無事ラサ到着です!