添乗報告記

充実の9日間! 旧知の山岳ガイドと歩いたランタン谷トレッキング

 

ツアー名:〜樹林帯から氷河に迫る!〜 山岳ガイド・風の谷 ランタン谷トレック9日間
2010年3月3日〜3月11日 文●古谷朋之(東京本社)

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なるべく短い日数で、ランタン谷を歩きたい。

これが、問合せの第一声でした。問合せの元は、私が20歳の頃からの知人である山岳ガイドの山田哲哉さん。山田さんが主催する登山教室のメンバーを募って海外トレッキングを企画したいが、働いている方でも参加しやすいように9日間以内の行程が希望との事でした。
さてさて、9日間以内でランタン谷トレッキングは出来るのか・・・。


今、風の山人・ネパールトレッキングで企画しているランタン谷トレッキングは日本発着12日間で組んでいますが、これはタイ国際航空を利用した日程です。これを9日間にするには、先ずは利用航空会社を乗継地での宿泊が無いキャセイパシフィック航空に変えます。すると1日短く出来ますが更に2日間削る必要があります。ランタン谷トレッキングのルートは同じ道を往復辿る行程ですので、復路は歩かずにトレッキング終了地点から一気にカトマンズまでヘリコプターで戻るようにします。こうすることによって日本発着9日間で組める上、フライト予備日も1日含められるので、何かがあった場合でも安心です。
こうして、山岳ガイド山田さん同行の、日本発着9日間でのランタン谷トレッキングが実現したわけです。


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ヒマラヤの大地を北へ200km

ランタン谷トレッキングの玄関口は、チベット国境から南へ13km離れたところにある『シャブル』。ネパールトレッキングの多くは飛行機を利用して近くの村まで移動しますが、ここランタン谷トレッキングの場合は、陸路をひたすら走りトレッキング開始地点のシャブルを目指します。時間にして、およそ8時間。移動時間を聞くと気が重くなりがちですが、陸路だからこそ感じられる風景の移り変わりが楽しめます。
いくつもの街を越え、のどかな農村風景を辿り、時にはヒマラヤの山々が展望出来る。途中からは舗装されていないガタガタな道を行き、道路工事をしていれば数十分も工事が終了するまでその場で待つこともあります。決してスムーズでも楽でもないネパールの陸路移動。でもそれがネパールであり、魅力でもあるのです。

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のどかな農村をいくつも通り過ぎていきます

ガネッシュ山群等の山々が望めます

ランタン谷の森を往く

イギリス人の探検家・ティルマンが「世界で最も美しい谷」と絶賛したことで、有名になった谷『ランタン』。このランタン谷は氷河によって削られた大きなU字谷で、更にはモンスーンの豊富な雨によって緑豊かな森を蓄えている谷です。
トレッキング口のシャブルの標高は、1,460m。日本の奄美大島と同じくらいの緯度にあるネパールだと、この高さではまだまだ緑の濃い森に囲まれています。ヒマラヤの山々は中々見えないけれど、この大きなU字谷に育まれた豊かな森を歩くと心も豊かになります。樹木の合間から、時折姿を見せるヒマラヤの峰。下から見上げるからこそ、よりいっそう大きく感じられます。



石楠花の森

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真っ赤な石楠花

ランタン谷は石楠花が多いことで知られています。シャブルの手前からゴラタベラ位までは、多くの石楠花の木があります。特にラマホテル~ゴラタベラ付近の石楠花は大木の為、沢山の真っ赤な石楠花が咲き乱れます。
でも、石楠花が咲く時期は、3月下旬から4月中旬。私たちが歩いたのは、3月上旬ですので石楠花を見るには少し早かったようです。標高の低いシャブル付近では真っ赤な花を咲かせていたものの、ラマホテル付近からは、大きな蕾を蓄えている状態でした。けれど、それも山の表情のひとつ。この蕾が開花したらどんなに奇麗だろうかと想像をするだけでも楽しいものです。



おぉ!視界が開ければそこには雄大なヒマラヤが

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標高2,992mのゴラタベラまで歩くと、これまでの濃い森から一気に視界が開け広い谷底へと風景ががらりとかわります。視界が開ければ、真っ先に目に飛び込んでくるのは巨大なヒマラヤの山々。谷底から見上げるヒマラヤの山々は手に届くほどの距離にすら思えます。
ここからは、左右にヒマラヤの山を見上げながらのトレッキングです。荷を運ぶゾッキョ、マニ石などを見ながら、のどかな風景に心を和ませ歩いていきます。


いよいよランタンリルン(7,225m)の麓へ

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ランタンの村まで来ると、これまでの光景がまるで嘘のように荒涼とした大地に変わります。3月は乾季であるため赤茶けた大地を踏みしめ歩きます。茶色い大地と白いヒマラヤのコントラスト。この一寸違和感にも感じられる光景が、マニ石やタルチョーと合い重なって、より一層神々しい風景をかもし出しているのかも知れません。
標高も3,000mを超えているので、ゆっくりとゆっくりと、ひたすらに山を眺め、目に焼き付けながらゆっくりと歩いて行きます。左手には、本当に覆いかぶさるようにヒマラヤの山々が迫ってきています。その迫力に圧倒されながらキャンジンゴンパを目指します。


ランタンリルンが目の前だ

キャンジンゴンパ(3,730m)まであがると、ランタンリルンはすぐ目の前に迫ります。今回のトレッキングでの最終宿泊地点は、このキャンジンゴンパです。ここには2連泊して、更にランタンリルンが目前に迫るところまで歩きます。キャンジンゴンパからリルン氷河の左岸側を歩き上流へとゆるやかに登っていきます。途中振り返れば、ナヤカン峰が迫力ある姿を見せてくれます。前にも後ろにも圧巻の山々を見ながら歩くので、飽きることはありません。
さてさて、キャンジンゴンパを出発してから3時間程歩くと、かなりランタンリルン近づいてきたので、左側にあるサイドモレーンをよじ登ります。サイドモレーンに登れば、ランタンリルンの根元から頂上まで隅から隅まで見渡せます。ここまで、一つの山の全てが見渡せるというのはそうはありません。
あまりにもの迫力に吸い込まれていると、そのうち「どどどどど」と轟音が耳に入ってきました。何だと思って、ランタンリルンをみると、懸垂氷河が崩壊していたのでした。爆風ととともに雲のような雪煙をあげリルン氷河に迫ってきます。圧倒的な自然の脅威と美しさの、この2つが垣間見れた瞬間でもありました。


雪崩とランタンリルン
 

堂々たるナヤカン



これほど短い日数でここまで迫力ある山が見られる場所は、ネパールにですらそうはないでしょう。同行した山岳ガイドの山田さん曰く「なんだエベレスト街道よりもよっぽど山は近くに見られるし、山らしい空間が広がっているじゃないか・・・」間違いなくこれは本音でしょう。


えっ!もうカトマンズ

今回はキャンジンゴンパから一気にヘリコプターでカトマンズへ戻ります。ヘリコプターが宿泊しているロッジの目の前にあるヘリポートにつき荷物とともにヘリコプターへ乗り込むと、落ち着いたのもつかの間、すぐにヘリコプターは離陸し高度をあげていきます。これまで歩いてきたランタン谷にそって、猛スピードで南下していきます。左右に山々を見ながらも、どんどん山は後ろへと遠ざかっていきます。しばらくすると、ヒマラヤの山々が視界から消え、眼下には森と畑と道路が広がっていました。
ふっと気づいたら、そこはカトマンズ空港。なんとキャンジンゴンパから25分の空の旅でした。私達が、往路にカトマンズからキャンジンゴンパまで行くのに費やした日数は4日間。それがたったの25分で移動出来てしまうとは、文明の力とは怖いものです。
とはいえ、キャンジンゴンパから離陸した時に望むことのできたランタン谷の山々の姿は、同じ目線で見れたからこその美しさでした。下から山を見上げながら登り、そして山と同じ目線で空を飛ぶ。二つの視線でヒマラヤ展望が楽しめるトレッキングだったのでした。