添乗報告記

添乗報告記●マチュピチュ遺跡とペルーアンデス
ブランカ山群トレッキングの旅

 

2010年9月10日〜9月24日 文●古谷 朋之(東京本社)

ブランカ山群 麓の街 ワラス
ワラス市内から望むワスカラン

ペルーと言えばマチュピチュ遺跡。でも、山好きの人が思い浮かべるのは、実はマチュピチュよりも『アンデス』と言っても過言ではないでしょう。
登山家が恋焦がれる海外の山群は数々あります。「ヨーロッパ・アルプス」「ネパール・ヒマラヤ」「アラスカ」「カナディアン・ロッキー」「ペルー・アンデス」等々。個人差は勿論あるでしょう、でも『ペルー・アンデス』は、その音の響きと、鋭くとがった白き峰々から、登山家の心を大きくひきつける魅力を持っていると言えます。
今回私が同行したツアーは、今大人気のマチュピチュ遺跡、そしてクスコに滞在した後に、ペルー・アンデスの名峰が連なるブランカ山群のトレッキングを行う、2週間にもおよぶ贅沢な旅でした。その2週間があっという間に感じてしまうほど楽しく、更にはペルーの良さを改めて感じるものとなりました。
今回は、ツアーのハイライトである4泊5日をかけて歩いたブランカ山群のトレックについて、ご紹介したいと思います。

ペルー・アンデス「ブランカ山群」麓の街 ワラスへ

ペルーの首都リマから車で約8時間走ったところにある街ワラス。ペルー最高峰「ワスカラン(6,768m)」を抱くブランカ山群の麓にあるワラスからは、その最高峰ワスカランの他にも、白い頂の連なりも望むことが出来ます。その風景を見ているとペルー・アンデスの連なりにグッと近づいたことが肌に感じます。

ペルー・アンデスの懐に入り込む

ワラス到着の翌日は、4泊5日のブランカ山群トレッキングの前哨戦としてヤカ湖での散策に出かけました。ワラスを拠点として山を見、歩くコースはブランカ山群トレック以外にも沢山あります。中には車で4,400m地点まで行け、6,000m峰の直ぐ間近までさほど歩かずに行くことが出来る所もあります。
ヤカ湖もその内の一つ。車で4,400m地点のところまで行き、ゆっくりと30分ほど歩けば、6,162mのランラパルカ峰が目前に迫る氷河湖「ヤカ湖」まで行くことが出来ます。氷河湖の湖畔に垂れ落ちる氷河まで見ることも出来る絶好のロケーション。

ヤカ湖と目前に迫る氷河
ヤカ湖と目前に迫る氷河

単純に氷河湖と氷河を間近に見るだけであれば、他の国であってもこれくらい簡単に(1時間に満たない歩行時間で)行けるところはあります。例えばニュージーランドやカナディアン・ロッキー等々。でも、ここペルー・アンデスだと、その氷河湖と氷河の向こうに更に6,000mの高峰が聳え立っている。このロケーションが望めるところとなると、そうは無いでしょう。
日本では見る事が出来ない氷河の迫力と、覆いかぶさるように迫ってくる6,000m峰。空気が希薄な空間でこれらの景色を見ていると山に吸い込まれてしまいそうな気がしてしまいます。これは登山家を魅了してしまうわけだ、とつくづく納得してしまう程の空間がワラスの街から日帰りで行ける所ににあるのでした。
 

いよいよブランカ山群を5日間かけて歩く

ブランカ山群とはペルー・アンデスの北部に位置する山群で、ペルー最高峰のワスカランをはじめ、ワンドイ峰、チャクラフ峰、サンタクルス峰等、登山家を魅了してやまない秀峰の数々が聳え立ち、世界で最も美しい山とも言われているアルパマヨ峰すらも有する贅沢な山群です。今回のトレッキングは、これらの山群が一望できる谷あいの道を5日間かけて歩きます。

ブランカ山群トレッキング MAP
ブランカ山群トレッキングMAP

 


民族衣装を身にまとった村人
民族衣装を身にまとった村人

トレッキング1日目は、殆どが車での移動。アンデスの素朴な村々、カラフルな民族衣装をまといながら羊を追う女性達を横目に見ながら進んでいきます。時には6,000m峰を掠めるように4,767mの峠を越えていく道を辿っていくため、車窓からの眺めもあきることはありません。ネパールのトレッキングもそうですが、単純に山を見るだけではなくその国で暮らす人々の生活を垣間見ることが出来るのも、海外トレッキングの大きな魅力の一つでしょう。
さて、本来のこの日の予定は、車で6時間ほど走ったところから宿泊地点のパンパマチェまで約5時間ほど歩く行程でしたが、小雨が降り始めたこともあってパンパマチェまで車で一気に行く行程に変更しました。
 

アンデスの懐へ

この日から、本格的なトレッキングがスタートします。
先ずは1時間ほど車道を辿りながらバケリア村へと行きます。小さな小さな村ですが、アンデスの素朴さを感じるやさしい村です。バケリア村からはワリパンパ谷沿いに引かれたトレッキング道を歩くことになります。途中で休憩をしているとどこからか女性達が現れ、我々の目の前にお土産物を広げ始めました。のどかな谷あいの丘の上でこのような人達に出会えるのも楽しさの一つ。

全容が見えないだけに、不気味な迫力があるタウジラフ峰
全容が見えないだけに、
不気味な迫力があるタウジラフ峰

歩き始めてから4時間ほどたつと広々とした草原の向こうに、黒々とした大きなものが見えるようになってきました。その黒々としたものこそアンデスの山!天気が少し悪く山の殆どに雲が覆いかぶさっているため、下部の岩壁帯と氷河だけが不気味に迫ってきます。
更に歩みを進めると、「待っていたよ」とばかりに小さな池の向こうに、雲を取り払ったタウジラフ峰が、天に突き刺すように姿を現したのでした。この日は、比較的平坦な道を6時間程かけてパリア谷と呼ばれているキャンプ地まで歩きます。キャンプ地からはチャクラフ山塊から垂れ落ちる氷河が屏風のように左右に広がる雄大な光景を見ることが出来ます。

綺麗に姿を見せてくれたタウジラフ峰
綺麗に姿を見せてくれたタウジラフ峰
チャクラフ山塊が抱く氷河
チャクラフ山塊が抱く氷河

 

4,760mの峠を越えて

ウニオン峠を目指して
ウニオン峠を目指して

この日は、今回のトレッキングコースの核心とも言える4,760mのウニオン峠を越える行程。歩き始めるパリア谷の標高が約3,900m。ここから約800mを登ってウニオン峠を越え、標高約4,000mの宿泊地点タウジパンパへと辿る長丁場の行程となります。
歩き始めて、数十分もすれば標高4,000mを越える地点でのトレッキングとなる為、いくら高所順応が出来ているといっても、ここまで来ると息も切れやすくなります。アンデス山脈によって削られたU字谷に沿ってゆっくりと山に向かって歩いていきます。ウニオン峠の手前まで歩くと昨日顔を覗かせてくれたタウジラフ峰が目前まで迫り、雪すらも寄せ付けない黒々とした岩壁をあらわにして迫力ある姿を見せてくれます。
足元を滑らせないように気をつけながら花崗岩の道をゆっくりと登れば、そこは4,760mのウニオン峠!

雪すら寄せ付けない迫力のタウジラフ峰
雪すら寄せ付けない迫力のタウジラフ峰
ウニオン峠からの望むタウジラフの南西面
ウニオン峠からの望むタウジラフの南西面

峠からは、これまでの姿とは異なる雄大な氷河を抱いたタウジラフ峰の北西面が見渡せます。氷河のクレバスまで一つ一つ確認できるほど目前に迫る氷河。6,000m峰が抱く氷河がここまで間近に目視出来るところは、そうはないでしょう。
ウニオン峠からは、サンタクルス谷にそって下るだけ。今日の宿泊地点となる草原地帯へと目指し、膝に気をつけながらゆっくりと下っていきます。
 

小雨に打たれながら

山を覆い隠した雲間に、綺麗な虹が架かる
山を覆い隠した雲間に
綺麗な虹が架かる

アンデスの山々を眺める絶好の日となるはずだったこの日は、あいにく朝から雨。天高く聳えたっているはずであろう秀峰の周りには分厚い雲がまとわりつき、とても山が見られる雰囲気ではありません。本来であれば、名峰アルパマヨを始め、アルテンソラフ峰、キタラフ峰等の美しい山が見れるはずだっただけに、一同、心なしか下向きかげんで歩き始めます。
12月頃の雨季であれば辺り一面高山植物が咲き乱れるであろう、広大なU字谷をのんびりとやさしい雨に打たれながら歩いていきます。

 

ええっ! 今日に限って快晴

運が良いのか悪いのか、これまでは毎日雨が降っていたのが嘘のように綺麗な青空が広がっています。今日が昨日だったら、いやいや一昨日だったら。と、かなうことのない願望を頭に思い浮かべ、ゆく~っり出発の準備を整えて、最後のトレッキングへと歩みを進めます。
折角の快晴だというのに、ここまで歩くと残念ながら山は殆ど見えません。強いて言えば遠くにタウジラフ峰が輝いて聳えたっているくらい・・・。肌に突き刺すような日差しに耐えながら、暑い暑いとあえぎながらゴールを目指します。
この日は3時間ほどの短い行程で、トレッキング終了地点のカシャバンバへと辿りついたのでした。
 

やっと出会えた! アンデスの白き鋭鋒

トレッキング終了地点のカシャバンバからは、車でワラスへ戻ります。30分ほど車を走らせたところでフッと窓の外を見ると、奇妙な白いものが天高く聳えています。あれは何!?と思った瞬間、車中の誰もが「あれはサンタクルス峰だ」と声をあらげ、慌てて車を停めてもらったのでした。

そう、あの天に突き抜ける様に聳え立っている白い頂こそ、日本隊(長野県山岳協会隊)が初登頂をしたサンタクルス峰だったのです。しかも、今回のトレッキング・メンバーは、皆長野県の方々。一同写真を撮りながら、アンデスの青空に聳え立つ秀峰に感銘を受けていたのでした。
しかし、最終日は悔しいくらいに快晴。車中からはサンタクルスの他にもカラス峰やワンドイ峰等の山々が見渡せる絶好のドライブ・・・となってしまったのでした。

不気味なほど美しいサンタクルス峰
不気味なほど美しいサンタクルス峰
帰路の道中に望めたカラス峰
帰路の道中に望めたカラス峰


今回のトレッキングでは天候に恵まれず、期待していた秀峰の数々もほんの少ししか見られませんでした。しかし、4,760mのウニオン峠を越えた事、5日間にもおよぶ歩き応えのあるトレッキングが出来た事、手が届くように感じるほど間近に望めた氷河には、参加者の誰もが満足いくトレッキングとなったのでした。
また、ブランカ山群のトレッキングの前には、104km地点からのインカ古道ハイクやクスコ滞在と2,000~3,000m台に5日間滞在した後にワラスへと向かった為、高所順応が非常にうまく出来たといえます。

世界遺産のマチュピチュやクスコを訪れながら高所順応した後に挑むブランカ山群トレック。世界のトレッキング・コースを見渡しても今回訪れた行程の様に、高所順応もしやすく、そしてここまで間近に6,000m峰を望めるところは、そうはないでしょう。
ヨーロッパ・アルプス、コーカサス、カナディアン・ロッキー、パキスタン、チベット・ヒマラヤ、ネパール・ヒマラヤ等々の山域を歩いた私ですら、改めて山の迫力を感じた大感動のブランカ山群トレックだったのでした。