添乗報告記●最近のエベレスト街道の様子(2013年12月)

コース名:山歩き実践講座 エベレスト展望トレッキング9日間
2013年12月28日~2014年1月5日 
文●川上哲朗(東京本社)

エベレスト街道の現在をお伝えします!

「ラッキーボーイ!」
3年ぶり4度目になるエベレスト街道のトレッキングを終え、カトマンズのネパール支店に戻るなり、私に新しいあだ名が誕生しました。
エベレスト街道の玄関口・ルクラへの国内線は、強風や朝もやを理由に遅延や欠航をする事が多く、我々の出発前のフライトスケジュールも乱れに乱れている状況。しかしそんな事情にも関わらず、我々のパーティーは定刻どおりにルクラへ出発し、快晴続きの大展望を楽しみ、大きなトラブルもなく帰国する事ができました。ここまでスムーズに行ったツアーも珍しく、今回は本当に幸運だったと言うしかありません。

当ツアーは例年この時期に催行されますので、トレッキングの様子や道中に見られるヒマラヤの峰々については、過去の記録をご覧ください。
添乗報告記●エベレスト展望 シャンボチェ・トレッキング9日間(2011年10月) 
添乗報告記●エベレスト展望! シャンボチェ・トレッキング9日間(2012年12月)

今回の報告記では、最新のロッジやインフラ事情をご紹介したいと思います。


●ロッジについて

トレッキング中に宿泊するロッジは、4畳半程度の部屋に小さめのベッドが2つ並んでおり、その上に寝袋を敷いて寝るスタイルが一般的。トイレは共同制で、和式のようなネパール式便座の事が多いです。しかし、今回のツアーで宿泊した所では、「ホテル」と呼んでも差し支えないような設備を備えたロッジもありました。その中でも、最近建てられたばかりで最も綺麗だった、パクディンの「シェルパ・シャングリラ」の様子をご紹介します。


各部屋に洋式トイレとシャワー付き。

日本のプラグもそのまま
使えるコンセントタップ

ふかふか布団に枕、ティッシュまで完備!


さすがに大人数で使用するとシャワーの温度は一定しませんでしたが、通常のロッジと比べると、設備は格段に充実しています。共有スペースである食堂にはテレビが設置されており、スタッフ達はサッカーのヨーロッパリーグを観戦していました。

※全てのツアーで「シェルパ・シャングリラ」に宿泊するとは限りません。


●電気・通信事情

太陽光やマイクロ水力発電が頼りの山間部では、ロッジの各部屋には暗い豆電球がひとつだけ…という事がままありますが、今回宿泊したルクラ・パクディン・ナムチェ・シャンボチェでは電気不足を感じることはほとんどなく、ロッジによっては、電力消費の激しいハロゲンヒーターや電気毛布が使い放題の所もありました。現在も大きな水力発電施設を建設しており、今後も電気事情は更に良くなっていくと思われます。


各部屋に用意されたハロゲンヒーター
(シャンボチェ「エベレストシェルパリゾート」にて)

発電所の導水路。ただいま建設中。


また、最近ではシェルパやポーター達も「スマホ」を操り、音楽を聴きながら物資の運搬などをしています。見通しの効く場所は大体どこでも電波の圏内のようですが、日本のSIMカードでは使えない事もありました。ルクラやナムチェバザールでは、Wi-Fiが使用できるお店が増え、通信速度も以前よりだいぶ速くなっている印象です。


●変わらなかった事

逆に、‘変わらない’という点で印象的だったのは、すれ違う際に笑顔で挨拶を返してくれる人々や、写真を撮ってもお金やお菓子をせびらない子供たち、塗装が剥げるたびに塗り直しているのであろうマニ車(回すと経文を読むことと同じ功徳が得られる仏具)、そして、圧倒的なほど雄大なヒマラヤの山々の展望です。それらに出会うたび、「またここに来れて良かった」と感じたものでした。


水汲み場でお婆ちゃんの
手伝いをする子供。

トレッキング途中で出会うマニ車。

標高が高いほど最後まで夕陽が当たる。


インフラが発展する事は、地元民にとって大変有意義な事なのでしょう。「ロッジでヒーターが使えた!」「ポーターがスマートフォンをいじっている!」なんていちいち驚くのは、私達が先進国の優越感に浸っているだけなのかもしれません。ただ、ネパールで‘昔の日本のような生活’を垣間見ることを楽しみにしている我々にとっては、便利になるほど一抹の寂しさを覚えてしまうのが正直な所です。「昔は良かった」なんて事にならず、いつまでも、「またここに帰ってきたい」と思えるようなエベレスト街道であって欲しいものです。


エベレストを眺める

ナムチェバザールを見下ろす



●おまけ

今回のガイドだったネパール支店スタッフ「テク」は、バードウォッチングをライフワークとしており、歩きながら国鳥のダフェ(ニジキジ)、ガビチョウ、ハゲワシの仲間など沢山の鳥を見つけ、その生態を教えてくれました。面白かったのは、猛禽類の‘ノスリ’を発見した時のこと。双眼鏡を覗きながら「あ、ヨーロッパノスリがいます!」と叫ぶテクに対し、妙な雰囲気になりつつも、我々はお互いに貴重品を確かめ合ったのでした。(すれ違った欧米系のトレッカーに挨拶を交わしつつ)