暦と季節

今年も、会社近くの中野通りのさくらは綺麗でした。交差点を渡りながら写真を撮っている人が結構いてあきれますが、年度変わりでもあり、改まった気分になります。

さくらは日本自生の在来種です。今は、さくらといえばソメイヨシノですが、私の田舎では山桜が多く、1か月ほど様々な桜が楽しめます。ソメイヨシノは接ぎ木で簡単に増やせる扱いやすさから、明治政府が学校や公園、軍事施設などに植え、街路樹としても採用し全国に広まったそうです。今年は、公園での倒木のニュースが流れましたが、ソメイヨシノの寿命は60年くらいと言われています。これだけたくさんのソメイヨシノをどうやって世代交代させるのでしょうか。他人事ながら心配になります。

ところで、さくらの開花は随分早まったように感じています。旧暦では、正月もお盆も何もかも1か月近くずれます。そんなにずれたら季節感が暦と合わないのではと不思議に思いますが、旧暦は太陰太陽暦ですから当然です。今も中国では旧暦と太陽暦が併用されています。

太陰太陽暦は月の満ち欠けを基準にしていますから、1か月は約29.5日です。したがって1年で約11日ずつ前にずれます。そのため数年に1回、閏月を入れます。「え?間隔は決まっていないの?」と不思議に思うのですが、2年、3年、たまに4年空くこともあるのだそうです。正確にいえば19年間に7回、閏月を入れます。
19年間とは、太陽暦では365.2422日×19年=6939.6日になります。太陰暦では1か月は正確には29.5306日です。7回の閏月を入れると235か月ですから、6939.7日となり、19年でずれがほぼなくなります。これを、紀元前5世紀に古代ギリシャの学者・メトンが唱えたので「メトン周期」というのだそうです。それでもわずかなずれが生じるため、西暦では100で割り切れる年は閏年にはしません。ただし、400で割り切れる場合は閏年になります。2000年は400で割り切れるので閏年でした。2100年は閏年になりませんが、経験することはできないですね。

ところで、どうやって19年の間に閏月を入れるか否かを決めるのでしょうか。それは二十四節気とのずれで決めるのだそうです。より正確にいうと、二十四節気には12の節気と12の中気があり、中気がその月(約29.5日)の中に入らない場合に閏月を置きます。二十四節気は太陽と地球の位置で決まりますから、太陰太陽暦となるわけです。節気とは季節の端の方、中気とは季節のど真ん中という説明ですが、どうも感覚的につかみにくいですね。旧暦を生活の中で感じたことはほとんどないので、暦で季節を感じることもできないのかもしれません。

ところで、イスラム暦は太陰暦ですから、毎年約11日ずれます。33年で元に戻りますが、季節と月は全く関係ありません。理由は、宗教儀式が月の満ち欠けで決められるため、コーランで閏月を設けることを禁止しているからです。ラマダンは暑い時期も寒い時期も巡り、イスラム教徒はそれを平等に経験します。それを優先させているのだそうです。

近年は、いくらずれを調整して太陽との位置と暦を一致させても、季節そのものが変わってきて、春や秋は短く、夏が長くなっていると感じます。本来、季節を日付という数字で固定して例年と比べてもあまり意味はなく、季節そのものには幅があると捉える方が、自然のリズムと感覚が合致するように思います。暦に限らず、数字や論理だけでなく、幅とリズムを基調に考えることで、見方や感じ方も変わり、より親しみやすくなるように感じます。

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