アンデスの暮らしが息づく場所 ~聖なる谷・ピサック村~

文●中台雅子(東京本社)

ペルーのイメージといえば、赤土色の大地に、三つ編した風呂敷を担いだおばちゃんやリャマ、そんな「アンデス」の風景ではないでしょうか。クスコから車で約1時間ほどの場所にあるピサック村は、そんなアンデスらしさを感じて頂ける場所のひとつです。クスコやクスコ近郊に連泊されるなら是非、訪れて頂きたい、ピサック村の見所をご紹介します。

ピサック村の甘~い誘惑

ピサック村は毎週火・木に開かれる大きなメルカード(市場)が有名で、観光客もメルカード目当てにやってきます。広場を中心に路地に軒を連ねる露天では織物やセーター、陶器にアクセサリーなど、ペルーの民芸品がほとんど揃っているので目移りしてしまいます。民芸品がお好きな方は、大きな買い物袋のご用意を!

今は、観光客向けの民芸品を扱う店が多くなったのですが、昔は、人々が農作物を物々交換して市場は賑わっていました。今でも、村の中心の広場では、地元の人がピサック周辺で取れたジャガイモや豆類、野菜を売っていて、アンデスの農村の食生活を垣間見ることができます。特に1~3月頃、茹でたての甘~いとうもろこしを売る店が出てきます。そう、ピサックは、とうもろこしの一大産地。そして、ピサック産のとうもろこしはジャイアントコーン(チョクロ)で、ぷりっぷりの実の一粒一粒がなんと大きいこと!そして、塩味の利いたチーズと一緒に食べるのが地元流の食べ方。とうもろこしの甘みが引き立ち絶妙のコンビネーションなのです!でも、注意して頂きたいのは、1月~3月の時期以外にピサックを訪れる方、露天で売っているチョクロの味はあまり期待しないで下さいね。雨季(1月~3月)に取れる旬のチョクロが期間限定の甘~い極上の味なのです。

ピサックのメルカード(市場)
もっちり触感がおいしい「チョクロ」はチーズと一緒に

もう一つの見所 ピサック遺跡

ほとんどの人がこのメルカードを目的にピサックを訪れるのですが、メルカードの背後にあるもう一つの魅力に気づかずに立ち去ってしまいます。それは、インカ時代に作られた大きなピサック遺跡です。村のすぐ後ろに聳え立つ山の上にある遺跡で、その大きさはマチュピチュ遺跡に引けをとらないくらい。コンドルの形をしているとも言われるこの遺跡を訪れてみると、眼下の谷間を流れるウルバンバ川へのほうまで続く、数多の段々畑(アンデネス)は、山の形に添った見事な婉曲の描線が見事!主観的な意見ですが、ピサックのアンデネスの美しさはマチュピチュにも勝ると思います。見事な石建築の神殿部や、ミイラが安置されていたという山肌に作られた無数の穴など、見所も沢山あり、是非、時間に余裕がある方は訪れて頂きたいお勧めのインカ遺跡のひとつです。

曲線美が光るアンデネス(段々畑)は谷底まで続く
ピサック遺跡の神殿部

アンデス伝統音楽とカルロス一家

クスコより標高が低く温暖な気候と、谷間を流れる豊かな川の水の恵みから、農業に適した土地であるピサックは、インカの時代重要拠点地として栄えました。その繁栄ぶりが規模の大きな遺跡の建築物から伺えます。ピサック村に住む人々は、今も自然の恩恵に感謝しながら素朴な暮らしを営んでいます。

そんなピサック村に、アンデスの伝統音楽を追及し演奏活動をしている、音楽家・カルロスが暮らしています。「アンデス音楽」自体が伝統音楽ではないかとお思いかもしれませんが、街中で聴くアンデス音楽は、ショー的に演出された要素が強く現れています。演奏に使われる、ギターなどの弦楽器は元々アンデス音楽にありませんでした。弦楽器はスペイン人たちがもたらしたもので、それ以前はケーナやサンポーニャと呼ばれる「管楽器」が主な楽器だったのです。

カルロスたちが奏でる管楽器は、大きさも大小様々で、音色にとても幅があります。長すぎて手を思いっきり伸ばしても穴を押さえるのが大変そうな縦笛からは大地に響く深い音が奏でられます。演奏の始まりには、必ず大きなホラ貝が吹かれ、その場所(空間)を神聖な空気に清めるのです。雨季の雨の恵みを喜ぶ音楽、8月大地の神に感謝の儀式を行う音楽、彼らが奏でる音楽は全て、アンデスの農業カレンダーに沿ったもの。そう、元々のアンデス音楽は、厳しい自然環境の中で農耕生活を営む人々が、大地の神へ感謝の意を込めて奉納する音楽だったのです。カルロスたちの奏でる音楽を聴いた弊社スタッフは「日本の雅楽のようだ。」と例えていました。自然への畏怖の念から生み出された音楽は、文化は違えど私達の心にスーッと響いてきます。

家族みんなで奏でる音楽
村の祭りでも演奏します(右端がカルロス)

カルロスの兄弟、奥さん、子供たちを交えて家族総出で音楽活動をしています。子供たちはまだ実際にはうまく演奏できないのですが、「弾けなくてもいいんだ。こうやって自分から演奏の輪に入っていって、大人達の姿を見ることで自然に学んでいくんだよ。」とカルロスは言います。近代化の押し寄せる波の中で、脈々と受け継がれてきたアンデス文化が途絶えてしまうことがないよう、次の世代に伝えようとカルロスたちは村の若者達にも音楽を教えています。今は存在しないインカ帝国ですが、そのスピリットは、音楽を通じて人から人へと受け継がれています。都会では味わえないゆったりとした時間が流れるピサック村で「アンデスらしい」時を過ごしましょう。

ピサック村で待っています!

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