
初転法輪の地サールナート
聖地その3 初転法輪の地 サールナート
ブッダが成道を遂げたブッダガヤから北へ、ガンジス川流域の古都ヴァーラーナシー(バラナシ)近郊に広がる緑豊かな地がサールナートです。ここは古来「鹿野苑(ろくやおん)」と呼ばれ、釈迦が初めて教えを説いた場所として仏教徒にとって特別な意味を持ちます。
悟りを得たブッダは、かつて苦行を共にした五人の修行僧(五比丘)を訪ね、この地で「四諦(四聖諦)」(※1)と「八正道」(※2)を説きました。これが仏教布教の始まりであり、僧団(サンガ)の成立につながります。仏教史において「初転法輪」(※3)と呼ばれるこの出来事は、仏教の根本的な教えが人々に広まる最初の瞬間でした。
現在のサールナートには、初転法輪を記念して建てられたダメーク・ストゥーパがそびえ立ちます。高さ約43メートルの巨大な仏塔は、巡礼者が祈りを捧げる中心的存在です。また、マウリヤ朝のアショーカ王が建立した石柱の獅子像は、今日のインド国章の原型となっています。さらに、グプタ朝期に制作された「サールナート仏」は、柔和で静謐な表情をたたえ、仏教美術の最高傑作と称されています。
周囲には近代に建てられたムルガンダ・クティー寺院があり、日本画家・野生司香雪による壁画が参拝者を迎えます。考古博物館には数々の仏像や遺物が収蔵され、仏教美術の歴史を辿ることができます。
サールナートは、ルンビニー(誕生)、ブッダガヤ(成道)、クシナガラ(涅槃)と並ぶ仏教四大聖地のひとつであり、「初転法輪=仏教の始まりの地」として世界中の巡礼者が訪れています。静かな鹿野苑に立つと、2500年前に釈迦が語った法の響きが今もなお息づいていることを感じられるでしょう。

野生司香雪による壁画
ブッダが説いた「4つの聖なる真理」。苦諦(くたい)、集諦(じったい)、滅諦(めったい)、道諦(どうたい)のこと
苦諦:この世はすべて苦であり
集諦: 苦の原因は欲望や執着(煩悩)である
滅諦: 欲望や執着を消し去ることで、悟り(涅槃)の境地に到ることができる
道諦: 悟り到るには、正しい修行の道(八正道など)を実践する必要がある
※2 八正道(はっしょうどう)
悟りを得るための8つの正しい実践方法
正見、正思(正思惟)、正語、正業、正命、正精進、正念、正定
※3 初転法輪(しょてんぼうりん)
仏の教え(法)を車輪にたとえたもの。古代インドの武器である輪宝が、すべての障害や煩悩を打ち砕くように、仏の教えも人々の迷いを断ち切るとされる。また、車輪が止まらずに転がり、遠くまで進んでいくように、教えが広く伝わる意味もある。
聖なる河ガンガー流れる バラナシ

聖なるガンガー(バラナシ)
サールナートを訪れる際の起点となるバラナシ(ベナレス)は、インド国内の主要都市と空路や陸路(鉄道)で結ばれ、活気のある街です。そして、バラナシの象徴であるガンジス川のガート(河岸段丘)では、早朝から多くの人々が沐浴を行い、祈りを捧げる姿が見られます。

バラナシのガンジス河で沐浴する人々
アクセス
空路:
デリーからバラナシ空港まで約1時間半。コルカタからは1時間半~2時間。
バラナシ空港からサールナートまでは車で30-40分。
陸路:
ブッダガヤから車で5~6時間。
鉄路:
ブッダガヤ(ガヤ駅)から4~6時間。
ニューデリー駅、コルカタ駅から夜行列車も多数ある。
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