【新疆ウイグル自治区】カザフ民家にステイ

新疆ウイグル自治区の内部には更にウイグル族以外の少数民族の自治州や自治県があり、 それぞれ特色ある文化を守り続けています。今回は西北部にあるカザフ自治州のとある民家をご紹介します。


遊牧民族の末裔が馬で行き交う イリ・カザフ自治州


ナラティ草原の向日葵

ポプラ並木に沿ってカザフの田舎町ゴンリューへ

今回訪れる民家は、イリ・カザフ自治州の州都・イーニンから車で東へ2時間のところにあります。イーニンからバインブルク草原などを訪れるコースでは、この民家があるゴンリュー県を経由して行くことができます。天山山脈の雪解け水が潤すイリカザフ自治州は新疆ウイグル自治区の中でも特に風光明媚なことで知られます。
砂漠にオアシスが点在する南新疆の風景をご存知の方は、全くそれとは違う牧歌的風景に驚くことでしょう。ラベンダー畑、ひまわり畑、コーリャンなど、日本の田舎とは また一味違った農耕の様子もが車窓を流れていきます。中でもラベンダーはイリの特産品。7月頃になると、紫色の絨毯のようなラベンダー畑から車まで花の香りが漂ってきます。
日差しはやはり日本に比べて強いですが、道の両側は背の高いポプラ並木に守られており、木漏れ日と風が気持ちいいドライブができます。 ゴンリューは小さなバスターミナルや招待所のある田舎町です。目指す民家はその町外れの素朴な集落にあります。


テラスでくつろぐカミラさんの家族

父さんとお母さんが家族のために作った家

私たちを迎えてくれるのはカザフ族のカミラさんとその家族です。カミラさんのお父さんが木を組みレンガを積んで家族のために建てたというこの家に、カミラさんはお父さんお母さんと2歳になる息子と共に暮らしています。家にはクルミやリンゴやアンズなどが植えられた中庭があり、それを囲むように棟がL字に建てられています。どの部屋にもお母さんが作ったカザフ族のラグマット・スルマックが敷かれ、レンガと木で作られた簡素な家を彩っています。布団や花の刺繍がされた枕もお母さんの手作り。まさに夫婦二人で作り上げた家という感じがします。家の横にはナンを焼く窯があり、月に1~2 度カミラさんがナンを焼きます。裏には菜園があり、いつでも採りたての野菜が食卓に上ります。


スルマックを縫うお母さん

カザフ族伝統の敷物スルマックの上で眠る

部屋に敷き詰められたスルマックは、カザフ族がもともとユルタ(パオ)の中に敷いていたもの。赤、緑、ピンクに紫。強烈な色ばかりを組み合わせたいかにも中央アジア的なデザインが特徴です。撥水効果のあるフェルトで作られたスルマックは草原の生活には欠かせない敷物でした。草原から街へと移り住んだ後も、カザフ族はスルマックを縫い、スルマックの上に寝起きをしています。カミラさんのお母さんはこのスルマック作りの名人。夏には刈り取った羊の毛をフェルトにし染色しておきます。そして冬の農閑期に近所の娘さんを集めてスルマックを縫うのです。お母さんの腕を聞きつけた街のカザフ族から注文を受けたものもあれば、10歳になる孫がいつか嫁ぐ日のためにと縫ったものもあります。カザフ族の家にはたいていこうした思い出の1枚があるものです。私たちもこのスルマックの上に布団を敷いてもらって寝ます。隣にはカミラさんの布団が敷かれていました。男性は男性同士、女性は女性同士。そしてお客さんを一人で寝かせないことがカザフ流のおもてなしなのだそうです。


ラグメンはおふくろの味

食事はカザフのおふくろの味を

カザフのお母さんはダルマストーブ一つで器用に家族のごはんを用意します。寒い時期には部屋の中で調理をすることで、暖房のために起こした火を有効利用します。ご飯の時間になると、カミラさんのお兄さんが薪を割り、カミラさんは野菜を菜園に取りに行って、お母さんが麺を伸ばします。麺をこねる木の台はお母さんがこの家に嫁いだときから何十年も使っているもの。黒光りする地肌が年季を感じさせます。娘のカミラさんも家事は万能のカザフ女性ですが、やはりお母さんの味にはかなわないとか。カザフの家で必ず食べたいのがその家自慢のラグメン。つるっとゆでた皿うどんに季節野菜の炒め物を載せて頂きます。お客さんには大盛りで出すのが常ですが、民家のラグメンは意外な美味しさにきれいに平らげてしまう方がとても多いです。それに冷菜や自家製ナンなどがつくのが一般的な家庭のごはんです。

季節を選ばないカザフ民家 行くならいつですか?

カザフの田舎の人々は季節の移ろいに身をゆだねて暮らしています。夏には草原へ遊牧に出かけ、冬には家でスルマックを縫います。いつ訪れていただいてもその季節ならではの暮らしをお楽しみいただけるのでベストシーズンは特にないのですが、せっかくならイリ・カザフ自治州の自然も楽しみたいという方には7 月~9月がおすすめです。イリ・カザフ自治州といえば中国でも有数の草原地帯。バインブルク草原やナラティ草原は夏には高山植物の花園となります。ここにはモンゴル族が草原の上に観光客用のゲルを建てています。カザフ民家であたたかいカザフの田舎暮らしに浸ったあとは、草上の暮らしで遊牧騎馬民族の昔に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。


カザフ民家の中庭 クルミの木の下で