
TBS「クレイジージャーニー」TBS公式サイトへ
突然、テレビ出演の話が舞い込んだのは昨年のこと(第346話)。切っ掛けは、とある著名人からの推薦だったというが、僕はそのお方と面識はまったくない。まったくもってどこにどんな御縁があるかわからないものである。そして同じディレクターによる企画で今回はTBS「クレイジージャーニー」に出演することになった。
収録は4月吉日。場所は巨大にそびえる赤坂TBSスタジオ。昼過ぎに控室に入ると隣の控室からマツコ・デラックスの大きな声が聞こえてきて、すぐさま(上田で留守番をしている)妻に「マツコの生声が聴こえるぞー!」と興奮しながら電話したらスタッフから注意された。すっかりお上りさん状態である。収録スタジオは、想像以上に大きなホールで、その片隅に小さなセットが作られ40人近いスタッフが取り囲んでいる。見上げると首長竜のようなクレーンカメラがかっこいい。まるでディズニーランドにでも迷い込んだかのように「ふわふわ」した感じに包まれた。とはいえ前もって台本が用意されていたので、正直なところテレビとはいえ緊張感はあまりなかった。
そして、いよいよ本番、と思って意気込んでいたら「鼻毛を切りましょうか」と女性スタッフからハサミとティッシュを渡されて赤面。でも、おかげでさらに肩の力が抜けたような気がする。「では、スタンバイしてください」と舞台袖に案内されたそのとき、ふいに、四部医典(チベット医学の教典)を担ぐようにして登場しようという遊び心が生まれた。チベット社会では知識への敬意を示す象徴として、ときに教典を掲げるように歩く文化があるからである(第173話)。これは台本には書いてないアドリブだ。すると、さっそくMCのバナナマン設楽さんがそこに触れてくれたので、つかみはOK。

鼻毛を切る筆者
いよいよ本番がはじまった。すぐ目の前に小池栄子さんがいて、僕をじっと見て話しくれている。さらにはプロデューサー、ディレクター、美術、メイク、フロア、カメラなど40人近いスタッフが、じっと僕を見守っている。一人一人の役割をこなしながらもじっと動かずにセットに向けて意識が向けられている。この「じっと動かない」ままの「静」の状態がすばらしい。その意識に動かされて僕の調子が上がってくる。約50分の収録を終えてセットを後にするとき、「ここは密教の曼荼羅的な場だなあ」と感じた。
普段の講演会は、1~2時間、最初から最後まで一人で任せられることが多いし、そのほうが気楽な面はある。もちろん主催者の方は会場設営や集客を頑張ってくれるが、MCや演出まで加わってくれることはごく稀である。そうして普段、たった一人で「場」を作り上げているからこそ、プロの人たち40人が必死になってこの場を作り上げようとしていることに感動するとともに、だからこそ肩の力を抜いてプロのスタッフたちに流れを任せればいいと思えた。まさにあの暗誦のときに感じた立体曼荼羅の中心にいるような状態である(第291話)。最近のテレビ業界は「つまらなくなった」とか「信頼が揺らいでいる」などと批判されることが多いけれど、いやいや、「とはいえ、テレビの世界ってやっぱりすごいなあ」というのが僕の率直な感想である。

収録後
ちなみに、番組名をチベット語に意訳すると「ンゴツァル(驚くべき)チェウェー(すごい)ディムドゥル(旅)」となる。ただし、チベット社会には余暇としての旅文化は、もともとはないためにディムドゥルは普段は耳にしない単語である。そこで、ジャーニーを仏教的に「精神的成長の旅」と捉えるならばニャムレン(修行)、もしくはネコル(巡礼)のほうがチベット人にとってはしっくりくる。
いまこうして振り返っていると、2年前の2024年に逝去したチュペル先生が思い出されてきた。番組内では「教師はみなさんこうしています」と発言したが、本当のことを言うと、他の5人の先生はそうでもなく、チュペル先生だけがいつも必ず教典を肩に担いで教室に入ってきていたものだった。2009年4月、先生は、チベット医になった僕が日本社会からまったく注目されないことへの失望を口にしていたけれど(第328話)、もしも、17年の時を経て日本のテレビ番組が僕を取り上げてくれたことを知ったなら、誰よりも喜んでくれたに違いない。いや、待てよ、もしかしたら先生の見えない力のおかげでテレビ出演の話が来たのでは……、そんなロマンチックな想像が脳裏に浮かんだ。

チュペル校長
チュペル先生の逝去を伝える番組
小川さんの講座・旅行
アムチ・小川康さんの「百薬」講座
| 出発日 | 旅行代金 | 出発場所 | 催行状況 他 |
|---|---|---|---|
| 2026/08/05(水) | ¥3,300 | オンライン | 第1回 飛鳥、奈良、平安時代 |
| 2026/08/14(金) | ¥3,300 | オンライン | 第2回 鎌倉、室町、戦国時代 |
| 2026/09/02(水) | ¥3,300 | オンライン | 第3回 江戸時代 |
| 2026/09/16(水) | ¥3,300 | オンライン | 第4回 明治、大正、昭和、平成時代 |
| 全4回 | ¥12,000 | オンライン | 一括申込(見逃し配信あり) |
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