映画『リンカリンカ あの夏の先』が9月11日よりロードショー

デプン寺の巨大タンカ(仏画)の御開帳 2026年8月

先日、チベットのラサの大祭「ショトゥン祭」を訪れるツアーが無事に帰国しました。
日本語でいうところの「夏安居(げあんご)」明けのお祭りのことです。夏安居とは雨期の期間に地面にはい出てくる虫たちを踏みつぶさないように、お寺にこもって座禅修行をする仏教の修行期間のことで、日本でも行われています。ショトゥンの「ショ」はヨーグルトのことで、チベットではチベット暦の6月30日に修行期間を終えた僧侶たちに周囲の人々がヨーグルトを捧げてお祝いするのです。チベットの夏といえば新鮮なヨーグルトが欠かせません。ヤク(※)の乳から作られたショは自然な酸味が優しくてとても美味です。(※正確にはヤクとはヤクのオスのことを指しメスは「ディ」という)

ショトゥン祭の期間中は、ラサ郊外のデプン寺に巨大な仏画(タンカ)が掲げられ、ダライラマ法王の夏の離宮ノルブリンカでは「アチェ・ラモ」という歌劇が披露されます。
ノルブリンカはノルブ=宝物、リンカ=庭園という意味で、ラサ郊外の広大な敷地の中に歴代のダライラマの夏の離宮(と言っても大きめの「邸宅」という感じ)が点在しています。それ以外の部分は、樹木が生い茂り、川や池もあり、ラサ市民の憩いの場として活用されています。お祭りの期間中、人々は思い思いの場所にテントを張り、酒を飲み、ごちそうを食べ、歌って踊って、ゲームやおしゃべりを楽しみます。このような夏の楽しみ方や、楽しむ場所自体も「リンカ」と呼びます。チベット人の夏の娯楽といえば「リンカ」なのです。

ノルブリンカでリンカ(ショトゥン祭)

ノルブリンカでリンカ(ショトゥン祭)


今回のツアーではノルブリンカに大きなテントを張って調理器具を持ち込んでチベットの「リンカ」気分を味わっていただきました。お天気にも恵まれ、現地のスタッフたちも最大限のおもてなしをしてくれたようでツアーは大成功。皆様満足されて帰国したようです。来年もツアーを設定する予定なので、興味がある方は是非ご参加ください。


リンカリンカ リンカ風景

© TIBETAN ANTELOPE FILMS CO., Ltd. ALL Rights Reserved

さて、そんな「リンカ」をタイトルにしたチベット映画『リンカリンカ あの夏の先』が9月11日から、ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク吉祥寺ほかで公開されます
監督は1995年生まれのチベット人女性監督カンドゥン。これまでのチベット映画といえば『巡礼の約束』『ラサへの歩き方』『草原の河』『羊飼いと風船』、『オールドッグ』など草原が舞台で、伝統と現代のせめぎ合いや葛藤を描くものが多かったのに対し、「90後」世代のカンドゥン監督は「現在のラサの若者のリアルな姿を描きたかった」と語っています。(「90後(ジュウリンホウ)」とは中国で1990年代生まれの世代のこと)

リンカリンカ クラス会ポタラ宮背景

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カンドゥン監督は、映画の主人公のサムキと同様、ラサ出身ながら中学校から広州に「国内留学」し、その後北京の大学で映画の勉強をしています。監督のインタビューなどを読むと現在チベットの子供たちの約2割が親元を離れて中国国内の都市部などへ留学しているんだそうです。彼らはそこで中国語で教育を受け、中国や海外の文化や情報に接することになります。つまりこの映画は監督の自伝的な作品でもあり、現在のチベットの若者を象徴する作品でもあるのです。

リンカリンカ 少女時代

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国内で留学する子供たちが故郷であるチベットに帰るのは夏休みの間だけ。そのため、夏の象徴である「リンカ」の断片が故郷の記憶の断片として積み重なります。そして、その自分の記憶の断片にある、幼なじみラモとの記憶をもとに映画を撮影しようとラサに戻ったサムキは、偶然再会した幼馴染のラモの記憶と自分の記憶が違うことに気づきます。サムキの記憶は映画の中でサムキ自身が撮影している映画の脚本の話だったのか、実際の出来事だったのか、見ているこちらも混乱してきます。

そんな物語が3つの時間軸を行き来しながら、美しい夏のラサの風景の中、展開していきます。そこにはチベット映画にありがちな大草原や雪山の景色、家畜に囲まれた遊牧生活や五体投地で巡礼する様子はなく、現代のラサ(と上海)の生活と「リンカ」の場面が繰り返されるのです。ラサの夏の強い日差しと、日差しが強いからこそ生まれる深い影。強すぎる光は、逆に何かを見えなくさせるのかもしれない。リンカはそんなことも象徴しているのかも知れない、そんなことを感じさせる映画でもありました。事前に監督のインタビュー記事などを読んでバックボーンを理解してから見ると、より理解が深まることでしょう。

参考東京国際映画祭2025 でのインタビュー記事(出品時のタイトルは「一つの夜と三つの夏」)

リンカリンカ 車

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2026年9月11日(金) ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク吉祥寺ほかロードショー
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【あらすじ】

映画監督を志す若い女性サムキが主人公。少女時代の友だちラモとの記憶を映画にするために、中学進学を機に離れた故郷チベットに戻ってくる。久しぶりに会う父。そして、映画の撮影が進むなか、突然、大人になったラモが彼女の前に現れるが、彼女の記憶が自分と違うことに気づく……

【解説】

本作は、アジアの若手監督の登竜門とも言われる香港国際映画祭ヤング・シネマ・コンペティションで「最優秀作品賞」「国際批評家連盟賞」をダブル受賞。そのほか数々の映画祭に選出されて高く評価された。日本で初めて公開されるチベット女性監督作品である本作は、同時に、チベットの都市ラサの若者たちの姿をリアルに描いた初めての映画でもある。
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監督/脚本:カンドゥン|エグゼクティブ・プロデューサー:ルー・シュー、ノルブツェリン|プロデューサー:ジャン・チェンチェン、リャン・イン|出演:ツェリンヤンチェン、ツェキメト 原題:⼀个夜晚与三个夏天|英語題:Linka Linka|2025|中国映画|カラー|100分|1:1.85|チベット語、中国語、英語|⽇本語字幕:両⾓和歌奈|字幕監修:星 泉|⼀般G:映倫番号61233|配給:ムヴィオラ

映画『リンカリンカ あの夏の先』公式サイト(外部)

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