添乗員報告記●大草原縦走キャラバン8日間

2008年8月10日~8月17日  文●嶋田京一(東京本社)


羊、山羊の群れに突入

バヤンウンジュールにあるツーリストキャンプをスタートし、ゴールである風の旅行社直営キャンプ『ほしのいえ』を目指し、馬で大草原を移動。のんびりと景色を楽しみながらいくこともあれば、風のように駆け足で草原を駆け抜けもする。草原に暮らす遊牧民と同じ目線の高さで馬と共に旅をする醍醐味と、ゴールである『ほしのいえ』に辿りつく達成感、馬だけで移動するアドベンチャー的要素が詰まったこの旅は、モンゴルツアーの決定版といっても過言ではない!!

どこまでも広がる大草原を駆けるのです!

見渡すと広がる大草原、遠くまで続く丘、広い、とにかく広い。余計なことを考える必要もないくらい広い、シンプルに広い、くどいほど広い。果たしてこの先に本当に『ほしのいえ』があるのか、不安になるほどです。広大なスケールに圧倒されていると、遠くにぽつんと人工物のような点が見えてきます。あそこが今日のお昼のポイントか!? 先行しているバスが見えたときの安堵感は、なんともいえません。よし、あともう少しだ! 標識も目印もない広大な草原を進むとき、先行しているスタッフの車が見えると本当に安心したものです。


広い!

寝転んで見上げた空


騎馬トレックキャラバン中の衣・食・住


昼食と休憩はこんな感じ

食事はキッチンスタッフが先行し、用意して待ってくれています。目的地に到着し、ほっと一安心、お腹を空かせた我々の元には、スープ、メインの料理などの温かい食事が運ばれてきます。さらにメニューも毎回変えてくれるため、今日の昼食、夕食は何だろな?と毎回楽しみになっていきます。


テントの中(一例)
絨毯を敷いています

宿泊は三人用のテントを二名で利用します。もちろん、寝袋やマットなども用意されています。テント泊の間、シャワーはありません。でも、空気が乾燥しきっているため、日本で味わうような不快感はほとんどありません。その点は楽なのですが、風があるときなどは、まるでドライヤーをずっとあてているかのように皮膚も乾ききり、知らず知らずのうちに日射病となる恐れもあります。唇などあっという間にひび割れしてきますので、リップクリームは必須アイテムです。また、真夏であっても気温差が激しいので、防寒着と乾燥対策が重要です。

草原では水がとっても貴重品

ところで、人間の飲料水はミネラルウォーターを一日二本ずつ用意して車に積み、毎日補給していましたが、馬たちはどうしていたのでしょうか?草原を見渡しても川などありません。ところが、行く先々で遊牧中のヒツジ、ヤギたちが集まっている場所があり、そうしたところには井戸が掘られていて、水場になっているのです。我々も、そうした水場で馬に水を飲ませます。馬に水を飲ませるのは、これから出発!という朝と、一日の役目を終えた夕方(といっても日が長いので20時近く)の2回のみというのがほとんど。馬たちは日中の強い日差しの中、水の補給なしで歩き、休憩時も日陰のない草原で過ごさなければならないのです。水飲み場に着いたら、「ご苦労さん!たっぷり飲んでくれ」という気持ちです。


大草原の井戸、家畜への水やり

冷たいのだこれが


休憩中は・・・


逆に暑そうだが・・・

キャラバン中の昼休憩は、バスの屋根から日よけを張り、下にはシートを敷き、食事の後は昼寝をします。正午過ぎの日差しはあまりにも強烈なため、暑さがピークに達する午後2時前後は休息の時間。その間、馬たちはお互いを繋がれ、暑い日差しの中、草原に立ったまま。そう書くと、かわいそうな気がしますが、なにせ日陰などない草原では、人を乗せないときでも、放牧されている間はいつも日向にいて当たり前の状態なので平気のようです。モンゴルの馬たちがずっとこうした環境の中で生きてきたことに気づき、生き物の持つ力強さを改めて見直しました。でも、お互いに向き合い首を乗せあって楽な体勢を探りあったり、他の馬が作る日陰にまわってるようにもみえる行動には、「やっぱりしんどいのだろうな」と思わずにはいられません。

モンゴル時間はこうしてゆったり流れるのです

昼寝を終え、夕方4時ごろにむくりと起きだしたら午後の部がスタートです。夏の草原は日が長いため21時過ぎまで明るいのです。一度昼寝してからまたスタートしていると、一日のなかで2回スタートがあるため、行程が倍の日数に感じられたという声もありました。
夕暮れ時、草原で日が傾きはじめると、夕陽が草原に長い影を作ります。他に影になるものが何もない草原では、馬に乗った我々の姿だけがくっきり写り出されるのです。
影がもっとも長くなったあたりから、肌にあたる風が急に冷たく感じられるようになり、「そろそろ宿泊地が見えないかなぁ」という気持ちになってきます。周囲の色がどんどん変わり始める頃、テントが見えると本当に安心したものです。


影のキャラバン隊

キャンプ地にて


草原での出会い


草原の出会い

草原の移動中、すれ違うのは放牧されているヤギやヒツジ、馬、牛、そして遊牧民。
他の旅行者に会うことはまずありません。そんな中、同じように旅するものに出会いました。草原の中にアネハヅルが二羽、越冬のために南下してインドに渡る途中なのでしょう。


アネハヅル

以前、このツルがいよいよインドに迫り、最後の要衝であるヒマラヤ山脈を群れごとに越えていく姿を追ったドキュメント番組をテレビで見たことがあります。 7,000~8,000m級の山々を越えるには、上昇気流にうまく乗らなければならず、自らの羽ばたきだけでは、とてもそんな高い高度は得られないのだそうです。リーダーを先頭に上昇気流の中、螺旋を描きながら徐々に徐々に上がっていくも、一瞬気流からそれると一気に下降してしまい、もう一度チャレンジ。何度も何度も飛行を繰りかえす姿には心を打たれたものです。この二羽もこれから、仲間と集結してヒマラヤを越えるのか…。どうかヒマラヤを越えてくれという思いで、羽ばたき去っていく姿を見送りました。

そして草原では、もうひとつのささやかな出会いも我々を癒してくれます。広大な見渡す限りの大草原の足元に目をやれば、そこには可憐な花が「見つけてくれてありがとう」といった面持ちで佇んでいました。


草原と馬たち、そしてたまには逃亡も…


休憩中は
こんなふうにしています

どこまでいっても同じように見える草原も、よくよく注意してみれば、それぞれの場所に咲いている花や、生えている草が少しずつ変わっていくことが分ります。馬にも好きな草があるそうですから、そうした草の生えているところに馬も行きたがることでしょう。そういえば、宿泊地に着いて本日のお役御免となった馬たちは前足同士を結ばれた状態で放され、やっと草を食むことができます。とはいえ、どこにも固定されているわけではないのに翌朝見える範囲にはいるので、皆で「なんで逃げないのかねぇ」、なんて話していたものでした。

ところが、最終日の朝だけは、この状態で思いのほか遠くまで行ってしまい、朝、乗馬スタッフがいくら探しても馬たちが見つからず、捜索に1時間以上かかったことがありました。見つかった馬たちは、4~5kmも離れていたところにいたそうですから、一晩あったとはいえ、あの状態でよく移動できたものだと、一同驚きました。この一件が最終日に起きたこともあり、馬たちがもういやになって遠くに逃亡したように思えてなりません。


草、食べ放題?

モンゴルの夏は短く、馬たちはその間に草をたっぷり食べ、過酷な冬に備えなければなりません。本来ならば、とにかく食べて肥えさせなければならないところを、我々の旅に協力してくれている馬たち。騎馬トレック中は、ずっと駆け足しっぱなしでは馬もまいってしまうので(人間もですが)、メリハリをつけながら駆け足をします。先へ先へと走りたがる馬、とにかく仲良しの馬とくっつきたい一心でそばに寄ろうとする仲良し同士の馬、ペースが遅れ、追いつきたいと鳴く馬、などなど旅も進むうちにそれぞれの馬の個性が見え、参加者それぞれが自分の乗っている馬のことを話すときなどは、まるでダメなわが子を愛しむような感じで、とても微笑ましいのでした。

馬とともにモンゴルの風になる!

ゆっくりのんびり馬の背に揺られているときは、旅しているなぁという気分ですが、駆け足のときは、旅とかモンゴルとか、そんなことを考えているヒマはありません。馬と一体となり風になる、その瞬間に身を委ねるのみ。


ほしのいえにゴール

走り続けるなか、各自の馬の間隔があいていきます。チョー!チョー!という馬を煽る周りの掛け声も遠くなっていき、目の前には、前後に揺れる馬の頭、蹄が大地を蹴る音よりも、ハフゥハフゥという馬の荒い息遣いだけが耳に残る。風切り音も聞こえない。まるで、馬と自分が風になったかのような瞬間。

自分だけではなしえない、馬がいてくれてこそもたらしてくれる感動がそこにありました。
モンゴルの草原に生きる馬と共に旅する喜び、この感動を体験しない手はありません。

行きましょう草原へ! 駆けましょう馬と!
逞しく草原に生きるモンゴルの馬たちがアナタを待っています。

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