天山山脈と草原の道 キルギス&カザフスタンの見どころ8選

中央アジアの東部、中国と国境を接するキルギスとカザフスタンは、天山山脈の雪嶺と遊牧民の草原が広がる、シルクロードの中でも特に雄大な自然が魅力の国々です。かつて玄奘三蔵がインドを目指して越えた天山の峠道は、いまも「幻の湖」イシククルのほとりを抜けてタシュ・ラバトの隊商宿へと続いています。
遊牧の民キルギス人の暮らしと、旧ソ連の面影を残すカザフスタンの近代都市。ふたつの国が織りなす「もうひとつのシルクロード」の見どころ8選をご紹介します。

1. ブラナの塔

ブラナの塔
草原にそびえるブラナの塔
写真:Bernard Gagnon(CC0) / 出典

首都ビシュケクから東へ車を走らせると、草原にぽつんと立つ一本の塔が見えてきます。9世紀末に建てられたカラハン朝の都バラサグンの遺構、ブラナの塔です。かつては高さ45mを誇るミナレット(尖塔)でしたが、地震により上部が崩れ、現在は25mほどが残ります。

塔の周囲には、遊牧民の墓標として置かれた石人像「バルバル」が並び、草原の民が積み重ねてきた歴史を静かに物語っています。塔の上まで登れば、天山山脈を背景にした360度のパノラマが広がります。

シルクロードの隊商たちもこの塔を目印に草原を進んだといわれ、キルギス観光の入り口にふさわしいスポットです。

2. イシククル湖

イシククル湖
「中央アジアの真珠」イシククル湖
写真:Valentina Dyptan(CC BY-SA 4.0) / 出典

キルギス語で「熱い湖」を意味するイシククルは、標高1,600mに広がる世界第2位の広さを誇る山岳湖です。周囲を天山山脈の雪峰に囲まれながらも真冬でも凍らないことから、この名がつきました。

「中央アジアの真珠」とも称される澄んだ湖水は季節ごとに表情を変え、夏は避暑地として、湖畔の村々はキルギスの人々の憩いの場としてにぎわいます。かつて玄奘三蔵も『大唐西域記』にこの湖を「大清池」として記しており、シルクロードの旅人たちが必ず目にした風景でもあります。

湖畔からは、対岸に連なる雪山と草原のコントラストが一望でき、遊牧の国キルギスを象徴する景観のひとつです。

3. カラコル ドンガン・モスク

カラコルのドンガン・モスク
釘を一本も使わない木造建築のドンガン・モスク
写真:Adam Harangozó(CC BY-SA 4.0) / 出典

イシククル湖東岸の町カラコルは、天山山脈トレッキングの拠点として知られる一方、多民族が暮らす国境の町らしいユニークな文化が息づいています。中でも異彩を放つのが、1904年に建てられたドンガン・モスクです。

19世紀末、中国からキルギスへ逃れてきたイスラム教徒の少数民族ドンガン人が、故郷の建築様式そのままに建てたこのモスクは、釘を一本も使わない中国式の木造建築。屋根の反りや彩色の装飾は、まるで中国の寺院を思わせます。

イスラム教の礼拝所でありながら中国建築の姿をまとうという、シルクロードが育んだ文化の混淆をそのまま体現する建物です。

4. ソンクル湖

ソンクル湖畔のユルタキャンプ
夏の高原に広がるユルタキャンプ
写真:Kondephy(CC BY-SA 4.0) / 出典

標高3,000mを超える高原に忽然と現れる湖、ソンクル。夏の間だけ牧草地となるこの一帯には、遊牧民たちが家畜とともにやってきて、白いフェルトのテント「ユルタ」を張って過ごします。

電気も水道もない、遥か昔から変わらぬ遊牧の暮らし。旅人はユルタキャンプに泊めてもらい、乗馬や搾乳、フェルトづくりなど、キルギス遊牧文化を肌で体験できます。夜には満天の星空、朝には湖面に映る朝焼けと、高原ならではの静けさに包まれます。

草を求めて移動を続ける牧畜の民の暮らしは、シルクロードを行き交った隊商たちの原風景そのものといえるでしょう。

5. タシュ・ラバト隊商宿

タシュ・ラバト隊商宿
標高3,200mの山中に残る石造りの隊商宿
写真:Peter Schepens(CC BY 2.0) / 出典

中国との国境に近い標高3,200mの谷あいに、周囲の山肌に溶け込むように佇む石造りの建物があります。10〜15世紀に建てられたとされる隊商宿(キャラバンサライ)、タシュ・ラバトです。

多くの隊商宿が日干しレンガで造られるのに対し、ここは珍しくすべて現地の石を積んで築かれています。ドーム状の屋根を持つ31の小部屋が中央のホールを囲み、天山越えに挑む隊商たちが、寒さと盗賊を避けて旅の疲れを癒した場所です。

今も周囲に人家はほとんどなく、静まり返った山あいに立つと、千年前の旅人の緊張と安堵が重なって聞こえてくるようです。

6. アルマティ ゼンコフ大聖堂

アルマティのゼンコフ大聖堂
釘を使わずに建てられた世界有数の木造建築
写真:Bernard Gagnon(CC0) / 出典

カザフスタンの旧首都アルマティは、天山山脈の北麓に開けた緑豊かな街。中心のパンフィロフ公園に立つゼンコフ大聖堂は、高さ56mを誇る世界有数の木造建築です。

1907年、釘を一本も使わずに建てられたこの聖堂は、その4年後に街を襲った大地震にも耐え抜きました。鮮やかなブルーと白の外観、金色に輝くドームが、旧ソ連の面影を残す街並みに彩りを添えています。

キルギスの草原地帯から一転、旧ソ連建築とロシア正教文化が息づくアルマティは、キルギス&カザフスタンの旅における「都市の顔」ともいえる存在です。

7. シャリン渓谷

シャリン渓谷
「中央アジアのグランドキャニオン」シャリン渓谷
写真:Bernard Gagnon(CC0) / 出典

アルマティから東へ約200km、中国国境にほど近い場所に、「中央アジアのグランドキャニオン」と呼ばれる大峡谷が口を開けています。シャリン川が1,200万年の歳月をかけて刻んだシャリン渓谷です。

全長154kmにおよぶ渓谷の中でも特に見応えがあるのが、風雨に削られた奇岩が続く「妖精の谷」と呼ばれる区域。赤褐色の岩肌が幾重にも折り重なる景観は、まるで異星の風景のようです。

草原と雪山だけではない、乾いた大地が生んだダイナミックな造形美も、シルクロードの旅の醍醐味のひとつです。

8. トルキスタン ホジャ・アフメド・ヤサヴィー廟

ホジャ・アフメド・ヤサヴィー廟
ティムール朝の威光を伝えるヤサヴィー廟
写真:Petar Milošević(CC BY-SA 4.0) / 出典

カザフスタン南部の町トルキスタンに、青と金のタイルに覆われた壮麗な廟が立っています。12世紀のイスラム神秘主義(スーフィズム)の聖者ホジャ・アフメド・ヤサヴィーを祀る、ホジャ・アフメド・ヤサヴィー廟です。

1389年、あの英雄ティムールが聖者を敬い、既存の小さな墓所に代えて建立を命じました。高さ38.7mのドームと、いまも未完成のまま残る正面部分が、ティムール建築の技術と威光を今に伝えています。

2003年に世界遺産に登録されたこの廟は、中央アジアのイスラム建築の最高傑作のひとつとされ、キルギス&カザフスタンの旅を締めくくるにふさわしい荘厳さです。

シルクロード「旅のよみもの」一覧

キルギス&カザフスタンツアー一覧