風の高山病対策

高所に宿泊するツアーでは、高山病の対策が欠かせません。急激な環境の変化に体が変調をきたすのはある意味当然のことです。でもこの変調の意味を正しく理解し、きちんとした順応行動を取らなければ、重い高山病にかかる可能性もあります。

風の旅行社では長年の高所トレッキング手配の経験から、ご出発前のレクチャー、現地でのフォローアップ、万が一に備えての対策まで、高い配慮で取り組んでいます。


高山病とは?

例えば、海抜3,700m(富士山の頂上程度)の空気中の酸素濃度は平地の3分の2になります。標高の上昇につれて、人体に生じる症状の総称が「高山病」です。一般的に初期の症状として手足のむくみ、めまい、体のだるさ、吐き気、頭痛、のどあれなど、風邪に似た症状があげられます。風邪と思って見過ごすと、重病、命取りとなる病気なので、早いうちからの対策が必要です。

高山病は人により症状が違い、体調により同じ人でもその症状が現れたり現れなかったりとやっかいな病気で、年齢・性別 ・体力等には関係ないとされています。ただ、高度が一気に上がれば、急激な環境の変化に身体が何らかの反応を示すのが普通です。症状が出ないからと言って安心することはできません。

以下、日本旅行医学会のWEBサイトより抜粋、加筆します。

高山病の症状

高山病は山酔い:acute mountain sickness (AMS), 高地脳浮腫high-altitude cerebral edema (HACE), それに 高地肺浮腫high-altitude pulmonary edema (HAPE)という大きく3種類の症候群に分けられます。

山酔い(AMS)は一番よく見られる症状で、1,200~1,800mの高度でも発症し、2,700m以上の高さに急にのぼったときによくおきます。症状は二日酔に似ていて、頭痛や倦怠感があり食欲がなく、吐き気があり時には嘔吐します。この山酔いの症状が現れるのは遅く、普通高地に到着後6時間~12時間後に始まります。

高地脳浮腫(HACE)は山酔いが激しくなった物です。山酔いの症状に加えて倦怠感が強くなり、考えがまとまらなくなり、縦列歩行テスト(タンデムテスト)で運動失調が見られます。縦列歩行テストとは、まっすぐな線上をかかととつまさきを交互に接触させながら歩く検査で、高地脳浮腫(HACE)があるかどうかを見分けるのにはもっとも良い検査です。この縦列歩行テストを行って線からはずれるようなら高地脳浮腫(HACE)があると考えて、すぐに高度の低い地点におろすべきです。

高地肺浮腫 (HAPE)は単独でおきたり、高地脳浮腫と一緒におきてきます。最初の症状は運動をした時の息切れが激しくなってくることです。そして、次第に安静時にも息切れがひどくなってきます。通常は数分安静にして息切れがなくなるかどうかで診断できます。この時点で、高度の低い地点におろすことが絶対に必要です。

高山病の治療

高山病の予防及び治療に効く薬は3種類あります。その中で一番使いやすい薬はAcetazolamide アセタゾラミド(商品名 Diamoxダイアモックス)です。この薬を高地に上がる前に飲んでおけば山酔いを防止することができます。

また、症状が現れてからでも服用すれば早急に改善されます。この薬の作用により、血液が酸性となるために呼吸が刺激されて増加し、その結果高地に順応することができます。通常の投与量は250mgを1日2回高地に行く前の日から服用します。

125mg1日2回でも同様の効果が得られて副作用が少なくなると言われていますので、私どもは125mg1日2回の服用をお勧めしております。この薬に対するアレルギー反応は稀ですが、Acetazolamideはスルフォンアミド化合物であるため、サルファ剤にアレルギーのある方の服用はおやめください。

高山病予防の一番良い方法は、ゆっくりとした計画

ほとんどの旅行者にとって高山病予防の一番良い方法は、ゆっくりとした計画を組むことです。もしこれが出来なければAcetazolamideを予防的に使用してください。

薬の入手方法

残念ながらこれらの薬は、処方箋なしで一般の薬局で購入することは出来ません。医師に相談して処方してもらってください。保険の適応にはなりません。

参考: 日本旅行医学会 「天国に近づく!! 高山病の旅行医学」(PDFファイル)

高山病への対策として

しっかりとした高山病に対する知識と現地での順応行動によって、より快適な高所トレッキングが可能です。高所に体を慣らす「高度順応」に必要な行動は以下などが挙げられます。

  • 「過呼吸」「深呼吸」の徹底
  • 十分な水分(1日3-4L)の接取
  • 安静時、休憩時の深呼吸と保温
  • 昼寝の厳禁、適度な運動(散歩など)
  • 呼吸を促す薬(商品名:ダイアモックスなど)や器具(商品名:ブリーズライトなど)の使用
  • ガイド、添乗員の指示に従う
  • リラックス

また、高所に行くのが初めての方には高所を疑似体験することができる低酸素室『ミウラ・ドルフィンズ』(東京都・渋谷区)をご紹介しております。エベレストの登頂を果たした三浦雄一郎、豪太親子のプロデュースする施設です。詳細はお問い合わせください。

参考: ミウラ・ドルフィンズ

風の旅行社の取り組みとお客様へのお願い

ご出発前に

数々の経験をもとに、急激に高度を上げるなどの無理な日程を避け、順応日を設けるなど高山病対策に配慮したコースを設定しています。また、事前の「健康アンケート」で健康状態をチェック。さらに特製『高山病(高所障害)と高所での対策について』の資料をお送りし、経験豊かなスタッフが高山病対策をレクチャーします。

お客様の健康管理に関して

高所では健康な方でも体調に何らかの影響を受けるものです。特に心臓、呼吸器系などに持病または既往症のある方、糖尿病、高血圧等で定期的に投薬を受けている方は、事前に主治医とご相談の上、ご参加ください。また、現地で体調が悪くなった場合は、速やかにスタッフにお申し出の上、必ず指示に従ってください。

健康アンケート&誓約書の提出

スタッフは少しでもお客様の健康状態を把握しておく必要があります。風の旅行社では、通常のツアー申込書と別に「健康アンケート」のご提出をお願いしています。また、判断力も鈍る高所ではスタッフの指示に従っていただく事が何よりも大切です。高所へ行くのだという認識をお持ちいただくためにも、「誓約書」のご提出もお願いしています。

現地での体調管理

現地ではガイドや添乗員がパルスオキシメーター(血中酸素濃度測定器)、体調管理表などを利用して常に体調の変化に気を配り、意識していないと忘れがちな深呼吸、水分補給といった順応行動を促します。