Daisuke Murakamiのラサは今日も快晴

東京・丸の内にチベット茶館を [LHASA・TIBET]

 

今年のラサは雨がよく降る。

おかげでとても涼しい。
灼熱地獄の日本から来た身にとっては、まさに天国そのものだ。
乾燥していて、涼しくて、ちょうどいい。


(ラサ空港到着直前にて。最近の雨でヤルンツァンポ河が溢れている。)

しかしながら、朝方にかけて降る雨も昼前にはやみ、午後には鋭い直射日光が肌を射す。
これからラサに来られるみなさんは、日焼け対策と寒暖差対策は忘れぬように。

さて、半年ぶりのラサ。
特になにも感慨らしい感慨はない。
東京・成田から半ズボンできてしまったので、
飛行機から降りた瞬間、非常に寒かったぐらいか。

ラサ空港には、英語ガイドのペンバとゲンツェンが迎えに来てくれていた。
高倉健風のカム男・ペンバと、しゃべり好きのラサ男・ゲンツェンは、
二人で並んでいるのをみると、なんともいいコンビに見えてくる。
久しぶりに会うせいか、気心がしれているせいか、
久々のチベット語のせいか、心がほどけてくる。

そして、そのまま車でラサのKaze Tibetのオフィスへ。


(午後のラサは晴れることが多い。日焼け対策は必須。奥に見えるはポタラ宮殿。)

オフィスのそばでは、
社長のトゥプテンさんと日本語ガイドのダドゥン(和恵)が、
遊牧民が使うような大きなテントの下で、チャンガモ(スイートティー)を飲んでいた。
「Kazeのオフィス」とはいってもチベットの住宅街の民家を使っているだけで、
周囲には生活臭たっぷりの小さな茶館や食堂があるのだ。

「せんせい、おひさしぶり。お茶どうぞー。トゥクパ(チベット麺)も食べますか?」
と、和恵。

「もちろん!」

そして出てきたトゥクパ。
うますぎる!
三杯続けて食べてしまったが、どうにもこうにもうますぎる!
こんなに美味いものだったか。
だが、それよりもなによりも、茶館でうだうだゆっくりしている時間がなんともいえない。
仕事はたくさんあるはずなのに、茶館でゆっくりすることのできるチベット人の習慣に
心から敬意を払いたくなる。

どうでもいい噂話。そして、
英語ガイド・ゲンツェンお得意の仏教講釈が始まっては、
他のスタッフからその「いかがわしさ」を指摘され、みなで彼を小馬鹿にする。
お決まりのパターンだ。
また、僕がチベットの生活文化で疑問だったことをふと口にすると、
再び、ゲンツェンやら他の知らないチベット人が、
明らかに無責任かつ奇想天外な説明を自信ありげに僕にしてくれる(笑)。
だが、それでいいのである。


(ラサに到着した日はちょうど、法輪会だった。)

「どうだ、東京での生活は?慣れたか?」
と社長のトゥプテンさん。

「東京は面白いですよ、外国みたい。でも、このトゥクパがないから・・」

などと言うと、トゥプテンさんは笑いながら、
「よっしゃ、じゃあ、今度ふたりで東京にルグ茶館(ラサの有名茶館)でも作るか!」
(ルグ茶館についてはこちら)

それを聞いた瞬間、
僕はどういうわけか、丸の内のオフィスビルの一角にチベット茶館ができて
日本人とチベット人で賑わっているのを思わず想像してしまった。
なんとも素敵な光景ではなかろうか。
一分一秒を競うあの都心の空間に、
ゆったりとした時間の流れるチベット茶館が忽然と現われ、そこにサラリーマン・OLが集うのである。

夕方、見ず知らずのチベット人が、疲れたサラリーマンの隣に座り、
「いやなことは忘れて、まぁ、チャンガモでも飲みなさい。トゥクパでも食べるか?
ここのトゥクパは、ヤクの出汁が効いていてな、辛子を入れるとうまいぞ。黒酢は隠し味にいい。」
日頃のストレスやら心の穢れ(ディプ)やらが、この茶館で祓われていく・・。
これはまるで、都心のど真ん中に「心の足湯」ができるようなものではないか。

「あわてない、あわてない、ひとやすみ、ひとやすみ」の一休さんを
地で行くチベット茶館―、なのである。

茶館が東京にできるとしても、おそらく上野のアメ横あたりに押しやられるかもしれない。
いやでもやはり、丸の内にできるのに意味がある。

チベット茶館は、沼地に咲く蓮の花のようでなければならない。


(半年前、冬のゼト茶館。)

さて、どうでもいい茶館談義はさておき、バルコル近くのホテルにチェックインする。
荷物を置き、すぐ散歩に出かける。
すると、すぐ友達に会ってしまった。
「おお、久しぶり! 茶館でも行くか! そこのゼト茶館でいいな!」
僕は再び茶館に行くはめになり、
そこでトゥクパをまた二杯食べてしまった。

15年ほど前の話になるが、
ラサに一年滞在した後、香港に行った。
その初日。二時間おきぐらいにKFC→吉牛→マクドナルド→味千ラーメンと
ハシゴをしたことがあった。
当時はそのくらい、ラサには何もなかったのだ。

ほとんど無意識の行為だったが、自分の味覚がいかにキャピタリズムに占拠されてしまっていたか、
情けなくなったのをよく覚えている。

それと同じで、
ラサ初日から五杯もトゥクパを食べ、チャガモ(スイートティー)を飲みまくって
うだうだするとは、なんとも自分はやはり、
チベタニズムの味覚精神圏内にいるのだな、と改めて思い知らされる。


(バルコルにて。)

その夜。
ホテルのインターネットが使えないので、近くの珈琲屋に行く。
ラサ中心部には最近、珈琲屋がたくさん出来たのだ。

味はまあさておき、雰囲気だけはどれもこれも、なかなか都会的である。
僕の入ったインターネット珈琲屋には、ABBAからPerfumeまで、
いろんな曲が流れていた。なんか中国の都会っぽい。
十数年前、上海や北京で遊んでいたことを思い出す。
それにしてもこのような若者空間がバルコルのそばにできるなんて・・。

数年前までは、西郊外の商業地区にあるクラブなどに限られていた中国的若者空間は、
バルコル周辺にまで浸透し始めている。
この数年来、中国の若者のバックパッカーが増えてきていることも関係しているのだろう。
特に今年は、新疆ウイグルへの旅行を避け、その代りにチベットに来る中国人が多くなっているようだ。


(バルコル近くにできたインターネットカフェ)

それにしても、
perfumeはラサで聴いてもいいものだ。悪くない。
ABBAはなんか思想というか歴史がありすぎて、どうも落ち着かない、笑。

最後にお知らせ!

過去三か月、「巡礼日和」というタイトルを仮に使っていたが、
やはりここラサに来て改めて思った。
自分のブログは、東京にいても、ロンドンにいても、ラサにいても、
そしてたとえ月面上にいようとも「ラサは今日も快晴」だな、と。

さらにいうと、
単にこのブログの世界だけではなく、今まで書いてきた論文にしても、
自分が目指したい振舞いや考え方にしても、大切なものと繋がっていく感覚にしても、
「ラサは今日も快晴」の世界の浄化作用から多大なインスピレーションを受けてきたように思う。

情けない。
忘れていた。
原点も行先も、ここだということを。

ということで、全く一人相撲のようで申し訳ないですが、
本日をもって「ラサは今日も快晴」の再スタートとさせて頂きます。
これからも多分、とんだ寄り道をしたり、振り子のように行ったり来たりするかもしれませんが(笑)、
今後ともどうぞお付き合いくださいませ。

Daisuke Murakami


(今泊まっている部屋の窓からは、ラサの名山「ドゥク・リ」(傘山)が遥拝できる。)

8月5日
(ラサの)天気: 雲時々晴れ 朝方は雨。
(ラサの)気温: 14~25度(体感温度的には、12度~27度ぐらい。)
(ラサでの)服装: 昼間はシャツ、フリースなど。 夜は(厚手の)フリース、ジャンパーなど。 日焼け対策は必須。 空気は非常に乾燥しています。雨具は持ってきたほうがよいでしょう。また、風も強く吹くことも多いので、マスクなども役立ちます。