~上州の名湯・四万温泉でアムチ小川さんに学ぶ、百薬の旅~
小川さんより
旅は緊張。私は外国へ出かける時や、講演の仕事で旅に出るときは、ワクワクするとともに少し不安も感じます。「かわいい子には旅をさせよ」の諺どおり、普段暮らしている安全なテリトリーから飛び出すことで、緊張感、すなわち交感神経が高まるのです。そうして昼はほどよく緊張し、夜は温泉に入ったり美味しい御当地の料理を食べることでリラックスし、今度は副交感神経が優位になります。こうして二つの感覚のバランスをとることで健康になる効果が期待できるでしょう。
旅は驚き。山や森に入ったらまずは薬草の名前を覚えてもらいます。忘れても大丈夫。道端に生えている一つ一つの薬草に「名前なんだっけ?」と頭を使いながら歩いていると、体の疲れを忘れて気がつくと目的地に着いてしまっていることも。赤信号で立ち止まっているときも足元の草花に眼を配っているとイライラしないという精神安定作用も期待できます。また、薬草をじっと観察していると地元の人から「何がありますか?」と話しかけられることがよくあります。こうした何気ない出来事にも、人はドキドキすることができる。意外なものに出会うと人は笑ったり驚いたり、感動したりします。そうすると、固まっていた心が動くのです。
旅は妙薬。旅に出て日常生活から離れるとちょっとしたイレギュラーなことも笑って過ごすことができる。そうすることで、将来や現状に対して抱いている不安をそのときだけでも忘れさせてくれることでしょう。だからといって、旅は人を健康にするか? と問われてもイエスとは言い切れません。でも、一緒に海外ツアーを旅したお客さんや、県外から信州の上田や小諸に来られたお客さんが元気になって帰っていく姿を見ていると、もしかしたら、旅は人を健康にする妙薬なのかも、と思えてくるのです。
今回の旅の舞台は群馬県四万温泉。その名はお湯の効能によって四万の病を癒したことに由来しています。講座初日、まずは四万ブルーに輝く四万湖を散策しながら地元の伝承に耳を傾け薬草を探します。二日目はヨモギ、枇杷葉、ドクダミ、ハトムギ、ハブ茶、サフラン、高麗人参など、多種多様の薬草に触れながら、薬草茶、薬用酒を試飲し、自作のブレンド茶を作ります。
(天候によって講座の内容、順番が変更になることがあります)
東洋と西洋の医学を薬学で結ぶ情熱の薬剤師
小川 康 (おがわ やすし)
富山県出身。1970年生まれ。「森のくすり塾」主宰。東北大学薬学部卒。薬剤師。元長野県自然観察インストラクター。薬草会社、薬局、農場、ボランティア団体などに勤務後、 99年1月よりインド・ダラムサラにてチベット語・医学の勉強に取り組む。2001年5月、メンツィカン(チベット医学暦法学大学)にチベット圏以外の外国人としては初めて合格し、2007年卒業。晴れてチベット医(アムチ)となる。チベットの歌や踊りにも造詣が深い。2009年7月小諸に富山の配置薬を扱う「小川アムチ薬房」開店。(現在は「森のくすり塾」に改称、長野県上田市野倉に移転、開業)2015年3月、早稲田大学文学学術院を卒業。修士論文のテーマは「薬教育に関する総合的研究」 著書:『僕は日本でたったひとりのチベット医になった ヒマラヤの薬草が教えてくれたこと』(径書房)『チベット、薬草の旅』(森のくすり出版)
『チベット医・アムチ小川の「ヒマラヤの宝探し」』を風の旅行社社サイト内で連載中。