天山南路最大の仏教遺跡であるクチャのキジル石窟壁画などを深堀り=
現在の中国新疆ウイグル自治区には、タクラマカン砂漠の北縁(天山山脈の南麓)に東西に貫くシルクロードが通っており、そこに点々とオアシス都市が栄えていました。それぞれのオアシス都市が擁する仏教遺跡を概観するとともに、中でも天山南路最大の仏教遺跡であるクチャのキジル石窟の豊富な壁画を、画題に焦点を当てて味わってみましょう。そして、遺跡を後世に大事に伝えるために、現代の人びとが試みる努力にも眼を向けてみましょう。
《配信形式》ZOOM 見逃し配信も予定しています
《参加費》3,300円/回 全5回一括申込の場合:15,000円
《見逃し配信公開期間》全回共通:2026年10月9日(金)迄
各講座の内容
第1回 天山南路の仏教遺跡とその美術
天山南路(西域北道)と呼ばれるシルクロードには、西から東に向けて、カシュガル、トゥムシュック(トックズサライ)、クチャ、カラシャール、トルファンなど、多くのオアシス都市がありました。天山南路にも地上に建てられた仏教寺院がありましたが、なんと言っても、天山を構成する山々の崖面に掘られた石窟寺院がこの地域を特色づけていました。それぞれの地域の石窟寺院の現状を概観し、遺跡毎の特徴を探すとともに、天山南路に共通する壁画の画題や遺構の特徴を抽出します。
第2回 現地に伝わる昔話や中国史書の記述から見たクチャの仏教遺跡
クチャには多くの仏教遺跡が残っていますが、その遺跡に関わる昔話、クチャで活躍した仏教僧の逸話、ここを訪れた玄奘三蔵が残した記録、中国史書に記述された史実などが沢山残っています。それらの記録によって、当時の住民が仏教に寄せた思いが露わになります。記録を基に、現存する仏教遺跡を訪ねて、当時の仏教受容の様子に思いを馳せてみましょう。
第3回 クチャの仏教寺院壁画に描かれた本生図(ジャータカ)
本生譚(ジャータカ)とは、釈尊の過去世における修行の物語です。ゴータマ・シッダールタとして、この世に生を受けた釈尊が、悟りを得て、完全なる死(涅槃)を得ることが出来たのは、ゴータマ・シッダールタ時代の修業が実っただけではなく、過去世においても、さまざまな善行を行い、その功徳を積んだおかげであるという考えに基づいて、さまざまな生を受けた主人公が行った善行の様子を語った説話です。それを絵画化したものが本生図です。クチャの石窟寺院には、これが豊富にあります。その画題と内容、時代変遷に伴う形式や様式の変容を示します。
第4回 クチャ地域の仏教寺院壁画に描かれた仏伝図 ―時代変遷に伴う意味の変容
クチャの石窟寺院壁画に描かれた仏伝図には、ガンダーラ美術の影響を強く受けた初期と、それが地域的に独自な展開を遂げた盛期とでは、取り上げた画題や形式、様式に明らかな違いが見られます。簡単に言えば、初期は釈尊の事跡(伝記)そのものに強い関心があるのに対し、盛期では釈尊が説いた法に関心が移っているのです。釈尊の死後も、彼が解いた法はこの世に残り、遍在して、我らを守ってくれると信じているようです。同じ画題でも、関心の持ちようが違うというのは、実に面白いと思いませんか。
第5回 クチャの石窟寺院壁画に描かれた音楽場面
音楽と仏教儀礼は、密接に結びついています。帝釈天が帝釈天窟に釈尊を訪ねる場面、釈尊の説法を讃歎する場面、釈尊のご遺体(これも舎利と呼びます)を供養する場面など、沢山の遺例が見られます。例えば、東京国立博物館が所蔵する伝スバシ出土の舎利容器を思い出してください、身や蓋に、舞踏場面や奏楽場面が施されています。この豊富な音楽場面を
丹念に見てみましょう。現代のシルクロード音楽とは違った。豊かな楽の音が聞こえてくるかもしれません。
第6回 クチャの石窟寺院の遺構を後世に伝えるための努力
2001年から10年間、ユネスコは日本信託基金を得て、クムトラ石窟の保存修復プロジェクトに取りかかりました。遺構の保存や修復、遺構を擁する岩盤に強化、遺跡に容易に近づくためのインフラの整備、過去に切除された壁画断片の修理など。遺跡や遺物の重要度に応じて、計画を作り、プロジェクトを遂行しました。私は、このプロジェクトに関わりました。限られた予算と機関では、プロジェクトを完全に実行するのは難しかったのですが、この試みを受けて、その後、現地の機関が保存修復を継続しています。遺跡修復の理念について考えてみましょう、

シルクロード仏教美術史研究家
中野 照男 (なかの てるお)
現在、東京文化財研究所名誉研究員。1950年福岡県に生まれる。1973年九州大学文学部卒業。1978年九州大学大学院文学研究科博士課程を中退し、東京国立博物館研究員となり、普及室長、建築室長などを勤める。1992年に東京国立文化財研究所美術部第一研究室長に転じ、美術部長、副所長などを経て、2011年退職。2014年~2019年成城大学文藝学部第二世紀特任教授。
専門分野は、東洋美術史、中央アジアの仏教美術史、文化財保護、博物館学。主な著書は、『中国石窟 クムトラ石窟』共著、1985年、平凡社、『仏画の見かた 描かれた仏たち』2001年、吉川弘文館など。




