生まれ変わる旅行条件

2005 年4月1日に新旅行業法が施行され、「約款」およびそれを具体化してパンフレットに掲載している「ご旅行条件」が変わります。ポイントだけですが、以下、ご説明させていただきます。適用は、4月1日以降の契約からになります。4月1日以降の出発でも3月末日までの契約は現行の「ご旅行条件」となります。正直、面 白い内容ではありませんが、皆様にとっても大切なことになりますので、是非ご一読下さい。

手厚い補償が拡大!

今までの「主催旅行」は「募集型企画旅行」という名称に変わります。一方、従来の「企画手配旅行」が「受注型企画旅行」に変わり、現在の主催旅行と同様に旅程保証と特別補償が旅行会社に課せられます。手配旅行は一切補償はありません。ツアー(募集型企画旅行)や、お客様からの依頼で航空券やホテル、観光などを組み合わせ、ご旅行代金○○○円と包括料金で契約するオーダーメード旅行(受注型企画旅行)は、日程表と異なれば一定の保証料を旅行会社はお客様に支払わなければならないし、もし、旅行中にお客様が事故に遭って(疾病は除く)不幸にも死亡または後遺障害を負われた場合は、旅行会社は2,500万円(現在は 2,000万円)を支払うことになります。逆に、同じ旅行でも、航空券代○○円、ホテル代○○円、手配手数料○○円とばらばらに依頼しばらばらに買った場合(手配旅行)は、旅行会社は事故があっても何も払わないということになります。

今回のスマトラ沖大地震と津波において、旅行会社のツアーに参加し被災された方々には、この特別補償が付きます。また、今回は、捜索のために時間と費用が掛っています。殆どの旅行会社が事故対策保険を掛けていますから、親族が現地に行ったり、捜索のためにヘリを飛ばしたする救援のための費用も限度はありますが出ます。勿論、お客様が任意で加入される海外旅行傷害保険が最も大切です。これらが全部揃えば費用面ではまず問題はありません。また、旅行会社が契約している現地手配会社も動き、保険会社が契約している救援活動を専門的の行うアシスタンス会社もすぐに動きますから迅速な救援が可能です。一方、航空券だけ買って現地に行かれた方や、ご自分でインターネットなどで手配された方々に対しては旅行会社は何も出来ません。たとえ海外旅行傷害保険に入っていても、保険会社は、被災された本人か親族の方などから申告が無いかぎり動けません。1月に入っても、日本人で行方の分からない人が600人以上もいらっしゃったのはこのためです。今回ほど、ツアー参加者とそうでない方の差が歴然と出たことはありません。私ども、旅行会社の価値は、単に旅行を販売するに止まらず、リスクを軽減し、事故に遭った場合の救援、補償の役割も果 たしています。

お客様の自己責任も明示

このように、旅行会社の責任が益々大きくなったことと同時に、以下のように、お客様の自己責任も明示されたのが今回の新旅行業法の特徴です。

●「○○が起こる可能性あり」だけじゃキャンセル無料は不可!
今回のスマトラ沖大地震と津波において「旅行会社は無料でキャンセルを受け付けています」と報道されました。確かに、あの状態ではツアーを実施するのは不可能です。よって旅行会社は一定の期間ツアーキャンセルをします。この場合、お客様は取消料を払う必要はありません。
しかし、全く津波の影響を受けていない「バリ島ツアー」なども、お客様が津波を理由にキャンセルされるケースが今回も生じました。この場合、お客様によっては「テレビで無料と言っていた」と主張され取消料を払っていただけない方もいらしたそうです。9.11米国同時テロでも、全く関係ない場所が「テロが起きるかもしれない」といった「不安や恐れ」によってキャンセルされ、取消料を戴けないというケースが多く発生しました。これは、現在の「ご旅行条件」は天災や暴動などが起こりそうならお客様は無料でキャンセルできると解釈出来るような条文になっていることに大きな原因がありました。しかし、新しい「ご旅行条件」では天災や暴動などが「生じた場合」と明記され、該当地域でもないのに、単に「起こるかもしれない」といった「不安や恐れ」だけでは無料でキャンセルすることは出来なくなりました。

●ツアー中に天災に遭った時の追加費用は?
一方、既に出発してしまったツアー中にこうした天災に遭い日程が変更になった場合の追加費用などは誰が負担するのでしょうか。9.11米国同時テロで多くの方々が日程変更を余儀なくされましたが、その際のホテル代や別 途掛かった飛行機代はどうだったでしょうか。今までの「ご旅行条件」では、この点が明示されておらず、結局、旅行会社が負担するケースが殆どでした。4月からは、これは、お客様の負担となることが明記されました。

●「ご旅行条件」は事前に理解を!
新たに、お客様は、パンフレットや「ご旅行条件」などの契約の内容を理解するよう努めなければならないという条項が加わりました。パンフレットの記載内容や「ご旅行条件」を事前によく理解して頂くことがお客様の義務として明示されたのです。後になって「知らなかった」はダメということです。

●クレームは現場で!
「日程表と違うと思ったら、速やかに申し出て下さい」という主旨の条項も新たに加わりました。帰国してからクレームしてもダメでということです。一般 的に、ホテルが日程表と違うといった場合などは、その場でクレームを上げて変更してもらってください。帰国してからクレームを上げても旅行会社は、お客様が速やかに申し出る義務を怠ったということでクレームに応じなくなります。

悔しいかな、9.11の時のように、どんなに弊社が「ご旅行条件」通り対処しても、大手旅行会社などで「すべて無料でキャンセルOK」などという「顧客サービス」を「大手の信頼の証」として実施してくる場合があります。体力差と言えばそれまでですが、「そんなことだから、旅行会社は何時まで経っても当たり前の事が主張できず地位が確立されないんだ」と私は思います。「主張すべきことは主張する」でなければ、自分の仕事に誇りがもてません。誇りが無ければ、良い商品なんか出来ません。一方、最初から旅程保証で1〜2%返金すれば良いんだからホテルなんか違ってもいいんだなどと考えている旅行会社もあります。「安いんだから質が落ちるのは当たり前。文句いうならもっと金払え」などと思っている会社だってあります。しかも不利な時は法を盾にとるのが常です。法は両刃の剣です。弊社は「ご旅行条件を守れば事足りる」とは考えていません。より質の高い旅行でお客様に満足していただくことが第一義です。時には、ご旅行条件を越えてお詫びすることもあります。しかし、原則を主張させていただくこともあります。どうぞご理解ください。
今年は、世界に「災い転じて福」が齎されことを祈るばかりです。

※風・通信No22(2005年春号)より転載

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