「風のいえ」の話

つむじかぜ450号より


先週は、風ダルバール・カマルポカリを紹介させていただいた。「ダルバール」とは館のことで、「カマルポカリ」とは、蓮の泉という場所の名前である。

昔の王族の朽ちて使わなくなった館が、カトマンズには多く残っている。その館を利用して、できるだけネパールの伝統的でオーガニックなもの
を使い、その良さを未来に引き継ぎたい。NEPAL KAZE TRAVEL(NKT)の社長プリスビーが、そんな思いで、ホテルに改造して11月からオープンする。

ネパールには、「つきのいえ」と「はなのいえ」という山のロッジがある。弊社の旧オーナーの比田井博が建てた。「つきのいえ」は、ネパール第二の都市、カトマンズから飛行機なら30分ほどのポカラから、車で1時間、歩きで2時間半ほどのダンプス村にある。現在は、車ですぐ近くまで行くことも可能になった。「はなのいえ」は、同じ尾根のもう少し手前にある。

1991年11月に弊社は営業を始めたが、それ以前から、比田井は、「つきのいえ」の建設を始めた。自然農法を使った農場の中に宿泊施設を作りたい。そんな思いだったが、そもそも農場も宿泊施設経営もしたことがない素人である。農場建設はすぐに頓挫した。だいたいヒマラヤが望める斜面は、宿泊施設には向いているかも知れないが、北向きだから日が当たらず農地には不向きである。

農場は諦めたが、宿泊施設は残った。この「つきのいえ」には、食事のメニューがない。村の人に管理をお願いし、村の人が作る美味しいダルバート(ネパールの一汁一采の食事)を食べてもらう。そう、比田井が目指したのは、日本の民宿の様な宿である。

今流行の「おもてなし」ということになるのかもしれないが、比田井は、よく私に言っていた。「村人が慣れない料理を作っても美味しいはずがない。自分が美味しいと思わないものを愛情こめて作れっこないよ。愛情がない料理は美味しくないさ」

そして、「つきのいえ」にはなんと五右衛門風呂がある。風呂に入りながらヒマラヤを見たい。こんなことは日本人しか発想しないだろう。一昨年、改修してヒマラヤの峰々が綺麗に見えるよう、露天風呂の形式にした。たった5部屋しかない「つきのいえ」だが、今は、NKTのスタッフ家族が常駐してお客様をお迎えしている。

それにしてもネパールで何かするということが、どんなに大変か、私たちはこの、「つきのいえ」建設で学ぶことになった。

 つづく

関連よみもの
[re id=”nktnews20130828″]
[re id=”nepal_kiji015″]
[re id=”nepal_kiji004″]

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

シェアする