東京の街

つむじかぜ471号より


「あれ?何でやってないんだ?」新井薬師前駅の高田馬場方面行きの改札を出たところに、芳林堂書店がある。時々立ち寄るが、何時もなら夕方のこの時間には開いているのに何故か閉まっていた。降ろされたシャッターには、「長年ご愛顧いただきましたが、西武新宿線・新井薬師前~野方駅間鉄道地下化工事のため閉店いたします」と貼り紙がされていた。

工事は7年間を要し、その間、新井薬師前駅と沼袋駅の2駅周辺は、大きな影響を受けるらしい。現在、最も大きな影響を受けているのは、沼袋駅周辺で、とんかつ屋の「さぼてん」がなくなり、改札を出てすぐ目の前にあったパン屋も閉店し、「西友」の撤退も取りざたされているそうだ。

中井駅と野方駅の間2.4kmを地下化するらしいが、総工費は726億円。実は、こういう高架化や地下化の事業は、東京都の建設局が管轄している。公費負担がほとんどで、鉄道会社の負担は、極わずかだそうだ。
東京都建設局報道発表資料 [2013年4月掲載]

「開かずの踏切5箇所(ピーク時1時間あたり40分以上遮断)を含む、合計7箇所の踏切を除却」されるとのことだが、それにしても、随分お金がかかるものだ。

この工事は、2020年の東京オリンピックに向けてということではないだろうが、東京を造りかえるには、多くの時間と費用が掛かるに違いない。以前にも触れたが、首都高は、もう限界に来ていると感じる。

『東京灰燼(かいじん)記』大曲駒村著(中公文庫)を読みながら、東京の街をどう変えていくのか考えた。関東大震災の当時と比べたら、東京は遥かに大きな都市になっている。前回、東北の被災地の防潮堤や町づくりに関して触れたが、東京という街に置き換えたら、どうだろうか。到底私の考えが及ぶようなことではない。

シャッターが降りた芳林堂書店を離れ、ちょっと呑んで帰ろうかと、いきつけの飲み屋に行ったら、シャッターが降りていた。「おいおいお前もか?」と思ったが、貼り紙も定休日の看板もない。「こりゃ、潰れてしまったかな?貼り紙くらいしてあってもいいのに」そのままおとなしく帰路に着いた。

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

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