南大東島より中学生がやってきた

つむじかぜ487号より


南大東中学校から、二人の生徒がやってきた。きっと東京に来る前に研修を受けてきたのだろう。私が名刺を 差し出すと、大きな声で自分の名前をいいながら、手作りの名刺でしっかり名刺交換をしてくれた。きっと緊張して声も出ないだろうと思いきや、なかなか堂々としたものである。私の方がどぎまぎしてしまう。

沖縄の知人が「平成26年度地域型就業意識向上支援事業」に関わっていて、その事業で、南大東島の中学生たちで「ボロジノジュニアわくわく仕事し隊」を編成するから、受け入れてくれと頼まれたのである。都内数箇 所で職業体験をするのだそうだ。

さすがに、最初はたった2日間とはいえ、中学生では何を教えていいか分らない。仕事といっても、コンピュータでの入力作業などしかないから大した体験にもならない。せいぜい大使館にVISA申請に行くくらいしか考えられない。と申し上げてお断りしようと思ったが、「国際的な仕事をしたい」、「旅行会社で働いてみたい」そんな希望を持った子が二人いるのでなんとかお願いしたいと言われ、引き受けることにした。初日はそれぞれの部署がどんな仕事をしているのか、自己紹介を兼ねながら回って、スタッフたちから 説明を受けた。説明するスタッフの方が戸惑っている。幼児や小学生くらいの子供がいるスタッフはいるが、中学生など相手にしたことがないから無理もない。大人相手なら言葉で説明すれば分るが、中学生では、具体的に体を動かして説明しないと伝わらない。その後は、私が一時間ほど、会社の歴史や事業内容、旅行会社の役割や、この仕事の意義、働き甲斐などの話をした。ただ話しても飽きてしまうだろうと思いネパールやチベット、ブータン、モンゴルなどの写真を多用して話をした。質問を用意してきているというので、最後はそれに答えた。「一番つらいことは何ですか」という質問に は以下のように具体的に答えた。「お客様が、ツアー中に事故や病気で亡くなられたとき。そういうことが過去何回かありました。また、ツアーが上手くいかず大きなクレームを頂いたとき。私たちが怒られるのは仕方ないが、お客様のせっかく楽しみにしていた旅行を台無しにしてしまったときなどは辛い。経営者としては、SARSという新型 肺炎がアジアを中心に大流行した2003年に、何人かスタッフに辞めさせたとき」それが終わると昼食を取って大使館にVISA申請に向かった。帰ってきた時には大分疲れた様子であごが上がっていた。果たして、二人の中学生にどれだけ意義のある研修になったか分らないが、こういうことを引き受けるのも企業としての社会的な責任だと私は思う。実利に結びつくわけではないが、もっと大きな意味で私たちにとって有意義なことではないだろうか。私たちもまた、こういうことを通して勉強をさせて頂いたと思う。

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

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