林業の“復活”

*風のメルマガ「つむじかぜ」653号より転載

日本の林業が“復活”し始めているのをご存じだろうか。戦後に植えられたスギやヒノキが今、伐採に適した樹齢を迎えていているが、伐採されないまま放置されていると、しばしば話題になっていた。ところが、韓国や中国向けの輸出が大きく伸びる中、日本の林業が復活してきたというのである。

また、最近は、全国各地で最新のテクノロジーやマネージメントを教える林業学校が相次いで開校している。2012年、京都府に西日本で初めて設置された後、昨年は秋田県と高知県にでき、今年は徳島県や大分県でもオープンする。(2017年8月13日、森林文化協会ブログより)未来に向かって大いに明るい材料だ。

戦後、日本では、薪炭林等の天然林を人工林に転換する「拡大造林」が進められた。その結果、日本の山は、スギやヒノキなどの針葉樹で覆われることになり、花粉症多発の大きな原因を作った。

丁度私が子供のころ、薪や炭から石油、電気に置き換わり、建築資材としての木材は、輸入の自由化で海外から流入する安い材に叶わず、日本の林業は、衰退の一途をたどることになった。

それが、ここにきて復活し始めたというのだ。なんだか嬉しくなる話ではないか。考えてみれば、木は、その管理さえ計画的に行えば、持続可能な資源である。逆に、乱伐によってこの循環を壊せば、林業はそこで途絶えてしまう。

オーストリアには、フォレスターと森林マイスターという制度がある。 フォレスターは、500ヘクタール以上の山林を、森林マイスターは、500ヘクタール以下の森林の管理を行っている。山林の資源量をコントロールし、伐採可能な木材の量、エリアの決定などを行い、販売先の確保なども行うのだそうだ。

『神去なあなあ日常』 (三浦しをん著 徳間文庫)を読んでみたが、そこに描かれている日本の林業は、昔のままである。山の神と共にある林業従事者の日常は、古き良き時代への郷愁であり職人の世界である。しかし若い世代が憧れるような産業かといえばそうではない。

どうも日本人は、すべてを精神世界に昇華してしまうところがある。そうではなくて、持続可能な最先端の産業として若者が誇りをもって担っていけるような産業にしてほしいものだ。

近年の林業の機械化はすごい。オーストリアで4年に一度開催される世界最大級の林業機械展の様子がYouTubeで紹介されていたのでご覧いただきたい。こんな機械があるのかと驚愕してしまう。オーストリア、スイス、ドイツに、持続可能な林業ができて日本ができない理由はなかろう。


★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。


シェアする