50、60年前まで薬や薬草の知識は、祖父母から孫へ、親から子へ、またはガキ大将がいるような異年齢の子ども集団のなかで、意識せずとも暮らしの中で受けつがれてきました。しかし高度経済成長や核家族化にともない教育的な地域文化が失われてしまったいま、本講座では東秩父村のおばあちゃんたちと、その孫の世代にあたる西沙耶香さんを講師に迎えて暮らしのなかにおける“くすり”文化の再興を試みます。私、小川は田舎のガキ大将のように、また、薬剤師としてみなさんを懐かしい薬の世界に誘えればと思っています。
-協力・東秩父村 野草に親しむ会-
7月6日(土) 〇夏 「染める ~キハダのくすりと染色~」
縄文時代から現代に至るまで、日本人にとってもっとも馴染みのある薬(薬草)はキハダだといっても過言ではありません。内皮の鮮やかな黄色は胃腸薬や目薬としてだけではなく、紙や布の染色として重宝されてきました。本講座では村内で採取したキハダを用いてキハダ軟膏を製作するとともに細川和紙と布の染色を行います。そしてなぜキハダは薬として効果があるのか?なぜ簡単に染まるのか? キハダの歴史と化学について学びます。
※キハダ(黄檗):高さ5、6メートル。ミカン科の高木。日本の山地に生えている。黄色い内皮にベルベリンを含む。陀羅尼助、百草丸など古来より胃腸薬に用いられてきた。
和漢薬:中国から学んだ処方をもとに、日本人の体質にあうように開発された薬。江戸時代に発展した。
【行程】東武東上線・小川町駅10時集合。路線バスにて白石車庫へ。「東秩父村・野草に親しむ会」の方々と合流し、里山などを散策。白石農村センターにて、講師を中心に「黄檗軟膏」作り。15時半ころ、農村センターにて解散。(路線バスにて小川町駅へ)
※集合地からの往復バス代(片道650円、約40分)は各自負担となります。
東洋と西洋の医学を薬学で結ぶ情熱の薬剤師
小川 康 (おがわ やすし)
富山県出身。1970年生まれ。「森のくすり塾」主宰。東北大学薬学部卒。薬剤師。元長野県自然観察インストラクター。薬草会社、薬局、農場、ボランティア団体などに勤務後、 99年1月よりインド・ダラムサラにてチベット語・医学の勉強に取り組む。2001年5月、メンツィカン(チベット医学暦法学大学)にチベット圏以外の外国人としては初めて合格し、2007年卒業。晴れてチベット医(アムチ)となる。チベットの歌や踊りにも造詣が深い。2009年7月小諸に富山の配置薬を扱う「小川アムチ薬房」開店。(現在は「森のくすり塾」に改称、長野県上田市野倉に移転、開業)2015年3月、早稲田大学文学学術院を卒業。修士論文のテーマは「薬教育に関する総合的研究」 著書:『僕は日本でたったひとりのチベット医になった ヒマラヤの薬草が教えてくれたこと』(径書房)『チベット、薬草の旅』(森のくすり出版)
『チベット医・アムチ小川の「ヒマラヤの宝探し」』を風の旅行社社サイト内で連載中。
講師
西 沙耶香 (にし さやか)
元東秩父村地域おこし協力隊/地域コーディネーター
1990年埼玉県東秩父村生まれ。立教大学社会学部現代文化学科卒。”村育ち”を強烈にコンプレックスに感じていた中高時代を経て、”村も捨てたもんじゃない”と大学時代に大転換期が訪れる。「持続可能な地域づくり」に関心を持ち、自然体験ボランティアに関わる。都内で就職後、2015年にUターンし同村初代地域おこし協力隊員に。主に和紙フェスなどの和紙関連イベントの企画運営と体験交流事業を開始。山里の知恵を暮らしに生かす地域住民と一緒にプログラム作りから取組む。卒隊後は、任意団体NERYを立ち上げ近隣町村における体験交流プログラム開発に携わる。理事を務めるNPO法人あかりえでは民泊事業も開始し、等身大の地域らしい姿を体感してもらう機会作りに奮闘中。