特別記事

モンゴル ハンガイ山脈に育まれる高原 恵みの大地 アルハンガイ

 

文●竹嶋 友(東京本社)

モンゴルの人々が誇るアルハンガイの自然"
モンゴルの人々が誇るアルハンガイの自然

特別な場所 アルハンガイ

モンゴル国の首都ウランバートルから西へ400km。草原の中に敷かれた舗装道路を車で約8時間走るとアルハンガイ県に入ります。モンゴル語でアル(北)ハンガイ(自然に恵まれた土地)と呼ばれるこの場所は、ハンガイ山脈の北に位置し、国内でも「最も恵み豊かで美しい自然が残る土地」として、モンゴルの人々が憧れる場所のひとつです。夏になると緑濃く広がる草原や森林、咲き誇る花々、美しい湖に舞い降りる渡り鳥たち、湧き出る温泉、良質な乳製品など、その素晴らしさを挙げればきりがありません。アルハンガイを称える民謡が数多く存在し、現在まで歌い継がれているのも、この地が特別な場所であることを物語っています。
過去に目を向けると、アルハンガイの中でも特に肥沃なオルホン川流域は、この地を巡り民族間で幾たびも争いが起こりました。しかし、チンギスハーン率いるモンゴル民族によりこの土地が統一され、さらに1235年モンゴル帝国の首都・カラコルムが置かれると、多くの民族や宗教が一体となった国際都市カラコルムは東西交易の中心として約350年もの間、繁栄を見せました。
ハラホリン市周辺には、エルデニ・ゾー寺院をはじめ、かつてのカラコルム繁栄の面影が残る歴史的な遺跡や文化財が数多く残っています。そのため、遊牧民のゲルに置かれる机や椅子などの伝統工芸品や民芸品を作る職人や、今では数が少なくなった馬の鞍などの馬具を扱う職人、多くの若い僧侶が集まり、古都の保存や修復に大きく貢献しています。また、2004年に「オルホン渓谷の文化的景観」として世界遺産に登録されて以来、チンギスハーンの子孫が残した歴史的な遺跡をひと目見ようと、毎年春から秋にかけて、国内外からたくさんの参拝者や観光客が訪れています。

母なるハンガイ山脈の豊かな恵み

地図
モンゴル全体図
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地図
セレンゲ川流域地図
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ハンガイ山脈はアルハンガイ県の西側から南側へと約700kmを走り、モンゴルで最も愛され敬われる聖山・オトゴンテンゲル峰(4,021m)を擁する大きな山脈です。シベリアからの水分を含んだ北風がこの山脈で堰き止められるため、北側にあるアルハンガイは雨の少ないモンゴルでも比較的降雨量が多く、ハンガイ山脈から流れ出る多くの河川が周辺の大地に豊かな水を供給しています。アルハンガイの主要な河川のひとつであるオルホン川もハンガイ山脈を水源地としており、同じくこの山脈を源とするセレンゲ川に合流しバイカル湖へ、そしてシベリア中央部へと流れていきます。アルハンガイの肥沃な大地は、こうした自然環境に守られ、育まれています。
豊富な水源を誇るアルハンガイの代表的な湖には、ウギー湖とテルヒンツァガーン湖があります。ともに水鳥の重要な生息地を保護するためのラムサール条約の指定を受けている湖で、ハクチョウやアネハヅル、タンチョウヅルなど毎年多くの渡り鳥が舞い降ります。その他にもワシやタカなどの猛禽類も見られます。春から夏の終わりにかけて、湖の周辺に点在するツーリストキャンプはバードウォッチングを目的に訪れる観光客で賑わいます。

アネハヅルの親子
アネハヅルの親子
秋にはヒマラヤを越えインドを目指す

アルハンガイは鳥以外にも動物や植物の宝庫です。車や馬に跨って草原に出ると、様々な動植物に出会えます。川や大きな水たまりに集う水鳥や高い空をゆったりと旋回するワシやタカ、時々道を横切って我々を驚かせるリスやキツネ、林の中に分け入ると可愛らしく咲き誇るワレモコウやウスユキソウ、ナデシコなどの高山植物、水量豊かな川や湖にはイトウやマスが生息し、鮭の仲間で世界で一番大きい魚といわれているタイメンはモンゴルでは「河の狼」と呼ばれています。この地域の栄養豊富な草を糧とする家畜はよく育ちます。たくさんの良馬が育ち、夏に開催される国内最大のナーダム祭の競馬競技で毎年優秀な成績を収めています。また、牛、羊、山羊の乳からは良質な乳製品が作られ、遊牧民の生活に役立てられています。特に、平均標高2,000mの高原地帯であるこの場所に生息するヤクの乳製品は栄養価が高く、首都からヤクの乳を得るためだけに訪れる人がいるほどです。

アネハヅルの親子
湧き出る場所によって
様々な効能をもつ温泉
(上は耳、
下は目に効くという)

モンゴル随一の温泉郷

ハンガイ山脈一帯はかつて活発な火山活動が続いてきた事を示す溶岩台地が広がっており、数千年前に活動が止まった噴火口や、溶岩によって作られた特徴的な岩石などが今でも残っています。溶岩台地が川の侵食作用で削られ誕生した、モンゴルでは珍しい滝もあります。しかし、火山活動が現代の人に残す最大の恩恵は、アルハンガイに湧き出る温泉といっても良いでしょう。モンゴルの人々は、体の不調や病を治すために温泉を利用しています。療養地・保養地としてアルハンガイに滞在し、栄養価の高い乳製品を食べ、温泉に浸かればほとんどの不調は良くなると信じられているのです。

アルハンガイにある直営キャンプ「そらのいえ」

咲き誇る花畑で乗馬
咲き誇る花畑で乗馬

2010年、モンゴルで2つ目の風の旅行社直営キャンプ「そらのいえ」がグランドオープンし、たくさんのお客様にご利用いただきました。場所はアルハンガイ県東南に位置するツァガンスム川の畔で、ハラホリンからは車で約2時間の距離です。
「そらのいえ」での楽しみは大きく2つあります。
1つは周囲に広がる変化に富んだ地形や自然です。乗馬をするなら、林あり、一面に広がる花畑あり、断続的に現れる丘や小川越えもありという、変化ある地形と自然が、飽きることない乗馬時間を与えてくれます。もちろん「そらのいえ」に滞在し、のんびりとした時間と景観に身を委ねるのもまた良しです。
もう1つは温泉です。万病に効くと信じられている温泉の源泉から直接パイプで引いた露天温泉に浸かり、1日の終わりに疲れた身体を癒してください。木材を使用した温かみのある湯船に浸かりながら夕日を眺めたり、次第に現れてくる無数の星空を眺めてみて下さい。
「そらのいえ」の施設はもともと別の会社が運営していましたが、縁あって風の旅行社が運営することになったツーリストキャンプです。このキャンプの名前をモンゴル支店スタッフと相談した結果、「私の上にあるものは偉大な永遠の青空だけであり、我々はこの偉大な永遠の青空のもとに生きる力をもらっている」というチンギスハーンの言葉から「そらのいえ」と命名しました。テーマはズバリ、「アルハンガイの豊かな自然の恵みに浴すキャンプ」。数年かけて施設の改修を進めてきた結果、皆さまに心身ともにリラックスしていただける、自慢のキャンプになりました。

そらのいえ
そらのいえ
そらのいえ客室ゲル(一例)
そらのいえ客室ゲル(一例)
草原の中の露天温泉
草原の中の露天温泉

アルハンガイには上記で述べた以外にもまだまだモンゴルの人々も憧れるほどの、色濃い自然と数多くの恵みがあります。実際、弊社スタッフもアルハンガイに行くとなると喜びに顔がほころんでしまうほどの人気なのです。
「モンゴルに行くならアルハンガイに寄らないとね」。お客様にもそう思っていただけるよう、「そらのいえ」はアルハンガイを満喫するためのベースキャンプとして、今年も初夏から張り切って準備を進めていきます。

風通信」42号(2011年4月発行)より転載