宮里藍の引退

*風のメルマガ「つむじかぜ」628号より転載

宮里藍が引退記者会見を開き、「モチベーションの維持が難しくなったのが一番の決め手」とその理由を語った。31歳。若すぎる引退である。

2012年、米国LPGA(Ladies Professional Golf Association)で勝てなくなったとき、 メンタルコーチから「誰にでもそういう時期はあるから、モチベーションを戻せるようもう少し頑張ってみよう。」と言われやってみたそうだ。しかし、「戻ってこなかった。自分と向き合えない。トレーニングでも自分を追い込めない。プロである以上結果を残したい。でも自分が理想とする姿はなかった。」と苦しかった胸中を吐露した。

高校生3年生の6月にプロのトーナメントで優勝し、10月にはプロ宣言。2006年には米国LPGAに挑戦し、2005年、年間5勝し世界ランキング1位になった。日本で14勝、米国9勝。2013年以降は優勝はないが堂々たる戦歴である。

身長は154㎝しかないのに、ドライバーの平均飛距離は240ヤードを超える。もちろん、女子プロの選手の中にはもっと小さな選手もいるが、ゆったりしたスイングで正確に飛ばす。特に、パターの名手で魔法のパターとまで言われた。

その得意だったパターが、2012年、米国LPGAで勝てなくなったときには、パターイップスのようになってしまったそうだ。パターイップスとは、パターが入らないと悩むうちに、パターを打とうとしても手が思うように動かなくなることで、多くの有名プロゴルファーが、パターイップスを理由に一線を離れていく。

私たちのような一般人の遊びゴルフの世界ならパターイップスなどにはならない。悩む前に練習しろということで終わる。しかし、プロの世界は練習もしつくし、やるべきことはすべてやっても、本人が自覚できない体調や精神状態の変化などで得意だったはずのパターが全く入らなくなる。ゴルフでは経験が上達に結びつくとは限らず、失敗と経験の積み重ねが恐怖心を大きくし、打てなくなるという現象が起きる。実にメンタルなスポーツである。

しかし、ゴルフは、年齢を重ねても上達するスポーツである。60歳代でも上達する。ボールは若い人の方が飛んでも、スコアでは年寄りが若者に勝てるスポーツでもある。しかも、自分の思うようにはならないし、飛ばしたい、入れたいという自分の欲と の戦いだから、いい大人が自分を見つめなおせる稀有なスポーツでもある。

ゴルフのように、考え方を変えれば違う世界が見えてきたかもしれない。一年、ゆっくり休んでリフレッシュしてみてもよかった。でも、ベテランになって力が落ちて多少 みっともなくても、自分の仕事にこだわり続けしがみつく姿を若い人に見せたっていいじゃないか。と私は思う。こんなこと言うと叱られそうだが、仕事とはそんなもんじゃあないだろうか。私もファンの一人だっただけに残念だ。


★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。


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