日本の観光業界では、未だにファックスが現役である。貸し切りバスの発受注、レストランの手配、その他の国内旅行の手配業務では、毎日、大量のファックスが送受信されている。確かに弊社でも、バードウォッチングや国内旅行のツアーで使うバスの受発注はファックスである。
流石に、海外とのやり取りにファックスはもう使わない。E-mailやLine、Mesengerなどである。その理由は、①費用が安い。②仕事の共有(ナレッジマネージメント)が可能。③業務システムと連動させデータ処理が可能。といったことだろう。中でも、③は効率化のカギになる。ファックスではできない。
例えば、ある旅行会社の例だが、取引先からバスの発注がファックスできたら、それを業務システムへ手入力しなくてはならない。件数が多いのでかなりな手間になるし間違いも起きる。取引先とオンラインで結ばれた発注システムがあれば、こういう手間が省け、かつ正確になる。しかも、バスの在庫管理もできるようになるし、合法的な料金の計算もできるようになるだろう。現在、全国に多数あるバス会社と旅行会社には、そんなシステムはなく、ファックスで結ばれているというわけだ。
こういう話題が出ると、直ぐに共通プラットフォームを作ろうという話になる。しかし、公的機関が作ってもなかなか上手くはいかないことは皆さんも経験済みではなかろうか。民間企業のゲームチェンジャーが登場することが望ましいと私は思う。
ファックスが消えない理由は、誰でも簡単に使えるからではなかろうか。規模が小さく家族でやっているようなバス会社は、手配担当者が、ファックスをファイリングし、ノートや黒板に、その内容をみんなが見やすいように表にして管理していれると想像する。そうすれば従業員が一覧できる。これこそが、この会社にとってのナレッジマネージメントである。つまり①は国内通信ならそもそも経費は殆ど掛からない。黒板で②もできている。③などこの会社にとっては必要がないからファックスのままで何ら不都合はない。
日本の生産性が低いのは、家族単位の小規模零細企業や個人事業主が多いことに原因があり、効率の悪い中小零細は淘汰されるべきだ、などと乱暴なことをいう人もいるが、日本から、そんなに簡単に中小零細はなくならないし、中小零細があってこそ、日本のきめ細かなプロダクトやサービスが生まれる。中小零細が、在り続けられるためのDXを考える必要がある。これが、ファックスについて考えた私なりの結論である。