ありがとう、かけがえのない出会いに〜15年の軌跡

風の旅行社は、今年の11月1日で、1991年の営業開始から丸15年を迎えます。4月から1年間かけて様々な15周年行事を行なうことになりました。スタッフが選んだ15周年のテーマが「ありがとう、かけがえのない出会いに」です。弊社を支えて下さった多くの方々に「感謝」を伝えたい。そして、かけがえのない出会いを過去も現在も、そして未来も大切にしたい。そんな思いからこのテーマが生まれました。

1991年の11月1日、営業開始初日に事務所を最初に訪れてくれたのは、アリタリア航空の神保さんでした。営業開始と言ったって、お客様が来るわけじゃないし、電話だって鳴らない。本当に心細くて何となく不安に思っていたときに、朝一番で来てくれました。神保さんは、既に他界されましたが、あのときの嬉しさは今でも忘れません。

お客様に支えられて

この15年間で色々なことがありましたが、会社を支えて下さったのは、何と言っても、弊社の商品を支持して下さったお客様です。そんなの営業トークだと思われるかもしれませんが実際そうなのです。確かに、9.11米国同時多発テロ以前だったらそう指摘されても仕方なかったと思います。何故なら、弊社は、AB ロードや地球の歩き方などの雑誌に広告を出してツアーの販売をしてきました。こうした通販の世界は、どうしてもお客様との関係が希薄で、スタッフがお客様に感謝するといった感覚が生まれにくくなります。一生懸命やっているつもりでも、忙しい毎日の中でお客様から予約を受けるが辛くなってきて、その結果、ぞんざいになったりします。会社全体にそんな雰囲気が生まれてくると、新人スタッフもそれに染まってゆきます。また、売上が伸びていけば自分たちは力があるんだと傲慢になったりします。私も以前、全部で14便というかなり無理なモンゴルチャーターをやり、スタッフに随分しんどい思いをさせ怒られたこともありました。

そんな状態の中、9.11同時多発テロは、弊社のみならず旅行業界に、ドーンと大きな分厚い壁にぶち当たったような衝撃を与えました。しかし、その当時は、一時的な衝撃としか感じませんでした。ところが、9.11の約2ヶ月後の11.28にネパールに非常事態宣言が出され、弊社は大打撃を受けることになりました。年が明けて、9.11の影響も次第に薄れ、売上が回復していく他社を横目に、弊社は、益々売上が落ち込んで行きました。それでも、ネパールへ行って下さるお客様は少ないとはいえ、いらっしゃいました。「こんな状況の中で、なんとありがたいことか。目の前の一人ひとりのお客様を大切にしよう。」それが、カトマンズ支店NEPAL KAZE TRAVELのスタッフ達の気持ちであり、弊社のスタッフたちの気持ちでした。2001年の11.28の非常事態宣言から約5年、ネパールへ行かれるお客様の数はかつての五分の一位になってしまいました。それでも、ネパールへ行ってくださった方々がいらしたおかげで、弊社の現地支店NEPAL KAZE TRAVELのスタッフ達がなんとか仕事を続けて来られました。辛抱が報いられる日も近そうです。この4/28にネパール史上画期的な出来事が起こりました。ギャネンドラ国王が強権政治を止め民主主義が復活したのです。

2003 年のSARSでは、GW直前にチベットが観光客受け入れをストップし、殆どSARS患者は出なかったにも関わらず中国の内モンゴルと同一視されたモンゴルが、大きな影響を受けました。なんと、売上は70%も落ち込みました。弊社は、ABロードなどの雑誌広告をストップし、経費をできるだけ削って、じっと貝のように閉じて嵐の過ぎ去るのを待ちました。そんな状態でも、やはり、モンゴルに行ってくださる方がおられ、チベットも7月まではストップしたままだったのに夏の予約を入れて下さるお客様がいらっしゃいました。おかげで、8月には前年の50%、9月には70%ぐらいまで売上は回復しました。その間、弊社は、殆ど広告をしていません。この苦しいときを、リピーターの方々に支えられました。もう、感謝の気持ちで一杯でした。

現地スタッフとの出会い

弊社は、現地のスタッフと一緒に旅作りをしてきました。最初はネパールです。現在、風のツアーの企画造成の責任者でもある取締役の野村幸憲は、1991年の営業開始から半年後にはカトマンズに駐在しました。当時、彼は、随分苦労しました。今だから言えますが、“気のいいただのネパール人”にしか過ぎなかったスタッフ達に、仕事とは何かを教えるのは本当に大変だったわけです。時間を守れ。仕事がなくても会社に来い。仕事は、探せば幾らでもある。「ネパールだから仕方ない」という言い訳はするな。そんなことを地道に言い続けていくわけです。しかも、野村も弊社もやったことがないわけですから、果たしてそんなやり方で良いのか全く分からず手探り状態でした。

その後、二人のスタッフが都合3年間駐在しましたが、日本人の駐在がいなくなって初めて、彼等自身で責任をもって仕事をするようになり、今では、KAZEグループ(弊社と現地会社スタッフの総称)の手本になっています。彼等には、絶対にいい仕事をするんだという自負があります。プライドのない人間は進歩しないと言いますが本当です。現地のスタッフが自律的に会社を運営する。それが風流の現地支店の作り方になりました。野村が蒔いた種はしっかり花が咲き、チベット、モンゴル、ブータン、ペルー、モロッコ、ウズベキスタン、ウルムチ(中国シルクロード)、雲南などへ広がっています。これも、大きな出会いです。

スタッフのおかげで

考えてみれば、私は、設立当初、会社の将来像などあまり考えませんでした。幸いにも、そんなことを考えている暇もないくらい格安航空券の販売は忙しく、あっという間に3年半が過ぎました。しかし、格安航空券の販売は、競争が激化し利幅がドンドン下がって行きました。そして、何よりも辛かったのは、自分たちで価値を作り出せないことでした。風にしかない商品を作ろう。1996年に全員のミーティングでそう決めて今のようなツアー主体の会社に変貌してきました。これができたのは忙しい中でも、眠る時間を削ってツアーを作り続けていたスタッフのおかげでした。できることなら、一期一会のスタッフ達とずっと仕事をしていけたら良いのですが、色々な事情があり、会社を辞したスタッフも多数います。でも、ある一時とはいえ共に過ごしたスタッフは大切な宝でも有り、現在残っているスタッフも同様です。そんなスタッフのおかげで風のツアーができ、お客さまへ自信を持ってご提供できるのです。スタッフ一人一人の出会いにも感謝せずにいられません。

「旅を愛することを忘れないでこれからもやってほしい。」そんな声をしばしばお客様から頂きます。風の旅行社が、現地と直接つながり、スタッフが手作りで旅を作る職人であり続けるかぎり「旅を愛する気持ち」を忘れることはないと思います。15周年を迎え、これを節目により一層の努力をしていきたいと思います。どうぞこれからもよろしくお願い致します。

※風・通信No27(2006年夏号)より転載

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