働きながら人生を楽しむ時代

時々、なんて損な世代に生まれたのかと思うことがある。1956年生まれの私は、「ポスト団塊世代」と称され、常に団塊の世代の後塵を拝し、祭りの後の虚しさを味わってきた。別名「しらけ世代」とも呼ばれ、無気力・無関心・無責任の三無主義と揶揄された。しかし、言い分はある。あれだけ激しかった学園紛争が敗北に終わった後に大学生となった私たちにが、反作用のように個人主義に傾いていったのは当然の流れだったと思う。

もう退職後などといってられない

60歳を過ぎてそろそろ定年。のんびり過ごそうと思っていたら、65歳どころか70歳までは働ける。そんな雰囲気が広がってきた。もともと、年金だけでは暮らせないから、働こうとは思っていたが、それが当然だといわれると、なんだか騙し討ちにあったような気分になる。
本来、60歳定年で退職金を手にして年金を貰えば、個人差はあるにしても70〜75歳くらいまで、すなわち10〜15年は元気な体と心さえあれば、趣味に旅行に熱中できたのだ。だから第二の人生といわれもした。しかし、働く生活が5〜10年も伸びてしまうと、健康上の不安も出てきてそんな気分にならない。
今年の夏に発表されたJTB総合研究所の調査レポート「海外観光旅行の現状2018」では、ポスト団塊世代(同調査では1951年〜1959年生まれ)は、海外旅行を増やしたいという意識が高まっているそうだ。年齢で見ると、59歳から67歳までになるから、たいていは週に3日程度ではあっても働き続けている人が多いはずだ。もう、退職後などといっていられない。働きながらでも第二の人生を楽しもうという人が増えているのだと思う。実は、私もその一人である。

ちょっと贅沢にビジネスクラスで

では、今までと何が変わるのか。時間もお金も潤沢だった従来のシニアとは明らかに違うはずだ。『レジャー白書2018』では、国内旅行が7年連続第一位となった。70歳まで働くようになれば、尚更、1〜2泊程度の国内旅行は増えていくに違いない。
また、当然かもしれないが、一回のレジャーに使う単価が上がっている。その現れだと思うが海外旅行では、ビジネスクラスを利用する人が増えている。従来は、ビジネスクラスはお金持ちに限られていたが、今は、ごく一般的になってきた。仕事を持つ60代の女性たちが、友達数人でビジネスクラスを使って100万円前後のヨーロッパ旅行を楽しむようになったのである。仕事をしていると年に何回も行けないから、たまに行くときくらいちょっと贅沢をしたい。子育ても終わり今まで頑張ってきたのだからこれくらいいいでしょう。そう思うのは当然だろう。その需要に応えて、弊社でも、今回の季節便からビジネスクラス料金を掲載することにした。中には、それ程高くない料金もある。是非、ご利用願いたい。

下の世代は尚更だ

一方、私たちより下の世代はどうなっていくのだろうか。昭和36年4月2日(女性の場合は昭和41年4月2日)生まれ以降の人たちは、年金の受給年齢はすべて65歳以上になる。健康寿命が延びたのをこれ幸いに、高齢者を65歳以上から75歳以上にしようという議論も出てきた。破綻しそうな年金問題も、受給年齢を75歳以上にすれば殆ど解消されるとまでいわれている。ならば、ますますリタイア後の第二の人生など考えるのは虚しい。若いうちから、働きながら人生を謳歌するしかないだろう。
4月から5日間の有給休暇付与が義務化される。休みが取れなければ何もかも絵空事に終わる。せめて5日間、土日とつなげて9日間、連続で休みが取れるような仕組みにしてほしい。

考えてみると、定年制とは合理的な首切りである。働き続けたい人にとってこれほど酷なことはない。損な世代に生まれたと書いたが、定年制が伸びるのだから、むしろ、いい巡り合わせに生まれたのかもしれない。ONとOFFを切り替え、生産性を高め労働と余暇を両立させる。日本人もそういうライフスタイルに変えていくべきだ。私も、そういう方向で頑張ろうと思う。


※風の季節便 vol.12より転載

シェアする

コメントを残す

※メールアドレスが公開されることはありません。