サウジアラビアへ行ってきました
先月の5日から10日まで、日本旅行業協会(JATA)の用務でサウジアラビア(以下、サウジと記す)を訪問した。その時から不穏な話は聞いていたが、まさかイスラエルと米国がイランへの攻撃を始め、イランの指導者を狙い撃ちして殺害し、それを大統領自らがSNSで自慢げに発信するとは思わなかったが、驚きを通り越して恐怖すら感じる。平和ボケしていた自分の感覚の甘さを痛感した。
しかも、イランは即座に中東諸国の米軍基地へ報復攻撃を行い、その中にはサウジの首都リヤドも含まれていた。おそらく私たちが訪問していた時には、イランへの攻撃準備は着々と進められていたのだろう。
3月5日現在、中東系の航空会社が使えず、アフリカ、中東、ヨーロッパを扱っている会社は苦慮している。まだ、コロナの傷が完全に癒えない中、旅行会社は厳しい状況を迎えている。それでも、私たち旅行会社は情報を得て冷静に状況を判断し「正しく恐れる」必要がある。こうしたことは、しばしばあるが中々しんどい作業だ。
サウジは2016年に「サウジ・ビジョン2030」という経済改革構想を発表し、開放政策を開始している。観光客に門戸を開き、女性の人権にも配慮し、女性の自動車免許取得も2018年には解禁になった。女性の服装も原則として自由化された。かつては外国人女性であっても、飛行機を降りる時点でアバヤ(体を覆うロング丈の上着)とヒジャブ(髪を隠すスカーフ)を着けなければ入国できず、滞在中も着用が必要だった。
今回は9人の日本人女性が同行したが、レンタルしたのは3名で、6名の方はアバヤとヒジャブを購入され、サウジを代表する聖地メディナで「民族衣装試着体験」として楽しんでおられた。意外に安価で、およそ5千円から1万円程度だそうだ。もちろん肌の露出が多い服装は避けるように言われたが、ムスリムの国なのだから、その程度の配慮は良識の範囲だろう。
しかし、制度は変わっても習慣は簡単には変わらないようだ。街で出会うサウジの女性たちは、真っ黒なアバヤにヒジャブ、さらに目以外の顔を隠すニカーブを着けている。その格好で数人が一緒に歩き、お茶を飲み、食事をしている姿には確かに異文化を感じた。もちろん、誰もが同じ格好なので、どんな女性なのかはまったく分からない。
今回は到着翌日にリヤド市内を視察(マスマク城塞、アル・ザル・スーク)。その後、18世紀に最初のサウジ国家が誕生したディルイーヤ(リヤド中心部から西へ約10km)へ移動した。伝統的なナジュド様式の土レンガ建築や博物館群が並ぶ世界遺産アット・トゥライフを視察した。
歴史的な世界遺産もさることながら、サウジ王国発祥の地・ディルイーヤの名を冠した巨大プロジェクトによって建設中の「未来都市ディルイーヤ」を大きなジオラマで見せられ説明を受けた。まさにサウジという王国の権力を象徴している。次の国王と目されているムハンマド・ビン・サルマン皇太子がその先頭に立ち、巨額の国家予算を投じて「サウジ・ビジョン2030」の実現に向け、この国は走っている。
加えて2030年には「リヤド万博」、2034年には「FIFAワールドカップ」の開催が予定されており、否が応にもこの国は活況を呈しているようだ。脱石油を目指し、観光やスポーツ産業を新たな国家経済の柱にすることが目標となっている。
3日目の午後、国内線でアルウラへ移動。サウジで最初に世界遺産に登録されたナバテア王国の墳墓、ヘグラ遺跡(アル・ヒジュル)を視察した。ヨルダンのペトラ遺跡を想起させる。なかなか見応えがあったのは巨大な岩、エレファントロックだ。夜にはライトアップされるそうだ。サンセットのカフェタイムを楽しんだ後、アルウラ・オールドタウンを散策した。
4日目は陸路でメディナへ移動。女性はバスの中でアバヤとヒジャブを身に着け、預言者のモスク(アル・マスジド・アン・ナバウィ)とクバ・モスクを視察した。いずれもムスリムでないとモスクの敷地には入れず、門の外から眺めて写真を撮るのみであった。
サウジに限らないが、イスラム世界という普段体験できない異文化に触れたいという欲求はある。仕方ないことだが、やはり消化不良にはなる。さらに言えば、ここまで来たのだからメッカ(マッカ)へ行けないものかとも思ったが、メッカの町に入る手前の道でムスリムとそれ以外に分けられ、ムスリムでなければ町にすら入れないそうだ。
最後に一言。やはりサウジではアルコールは一切手に入らないので、まったくお酒は飲めなかった。3泊目のホテルの部屋には、お酒もないのにミニバーがあった。冷蔵庫を覗いてみると、見るからにノンアルコールビールと思しき茶色の小瓶が2本入っていた。即座に飲んでみた。あんなにノンアルコールビールが美味しいとは思わなかった。つい2本飲んだら、1本1400円もした。サウジではそれほど物価は高くないが、泊まったホテルは高級リゾートホテル。これまた仕方がない?