トルファンの田舎の村で

つむじかぜ275号より


「え?この村では、各家庭がそれぞれテレビを持っているんですか。凄いですね」弊社のシルクロードツアーのコースに入っているトルファンのトユク村の民家を訪問した際にそんな話を聞いた。「中国では、各家庭で国営放送を見られるよう、国がテレビ購入を援助したりするのでかなり普及しています」そう、ガイドのヤリクンは話してくれた。なるほど、中国らしい話だ。しかし、やはりそこには、中国の近年の高度経済成長という経済的環境があるように思う。

私は、子供の頃、初めて家にテレビがやってきた時のことを思い出した。まだ、小学校に上がる前で、その“茶色の木箱”は、祖父母が暮らす離れの座敷に置かれた。テレビを見るときは、離れに行って祖父母の許しを得ないと見られなかったが、それでもわくわくしながらテレビにかじりついていた。うろ覚えだが、私が小学校に入学した頃には、一家に一台テレビがあるようになったと思う。

トルファンでは、他に2軒の民家を訪問したが、居間、台所、お手製のブランコが掛かった中庭、どれをとっても、私の7、8歳ころの雰囲気によく似ていた。そのころ日本は、高度経済成長期に入っており、家の中に、次々と新しい電化製品が登場した。家から土間が消え、お膳で食べていた食事がテーブルに替わり、飯を炊いていた大きな釜は電気炊飯器になった。家でも、食パンを食べるようになり、和から洋へが当然のように進んでいった。私は、当時は、まだ風呂に毎日入る習慣はなく、何日も、同じ服を着ていたから当然薄汚れていたが、それも全く同じである。

ネパールなどに行くと、私が経験したことのない貧しさが今でも横たわっているから共有できる感情は弱いが、トルファンでは、1960年くらいの日本の田舎の雰囲気を感じ、共感するものが沢山あった。

人々の笑顔は、豊かになりつつある生活を実感させてくれた。人々は底抜けに優しく、生活は質素である。そんな人々と触れ合うのもシルクロードの旅の楽しみだと思う。

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

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