東北に吹く二つの風

つむじかぜ409号より

12/3、4の1泊2日で岩手県に行ってきた。実は、日本旅行業協会(JATA)が、東北復興支援「行こうよ!東北」1000人プロジェクトをこの両日で行い、弊社から、私を含め6名が参加した。私以外は、山形のコースになったが、全体では、東北6県、20数コースに分かれた。

本プロジェクトの趣旨は、JATA会員の旅行会社の人間が、実際に現地を見て、新たな商品開発に繋げ、今後の東北復興支援に繋げようということだ。

今、東北には、二つの風が吹いているという。一つは風化で、もう一つは風評だそうだ。私達、旅行会社は、風化と風評を払拭していくのに力を発揮できる産業である。人が訪れることで、東北を再認識して頂き、それを周囲の人々に伝えたり、新たな行動に結び付けたりして、風化、風評を吹き飛ばす力にしたい。それが、旅行会社にはできる。

私も、岩手県に弊社でツアーを作る素材はあるのか、という視点で見てきた。龍泉洞、まちなか水族館、瀬戸内寂聴が住職をしていた天台寺など、観光地や、震災で話題になった場所を歩いたが、大型バスでの観光ツアーをやるわけではないので、なかなか弊社で組めるような素材はない。

そんな中、陸中海岸国立公園にある断崖絶壁の景勝地「北山崎」に行ったら、なんと陸中海岸沿いには10kmほどのトレイルがあり、そこをNPO法人 体験村・たのはたネットワークのガイド付きで歩くことができるそうだ。更には、同NPOが、サッパ船漁師体験ツアーなども組んでいるという。

夜の懇親会でNPO法人 体験村・たのはたネットワークの方と、話をしたのだが、このトレイルの話はされていなかった。サッパ船だけでは、あまり興味を惹かれなかったが、これは、検討の価値があるかもしれないと感じた。早速、会社に戻って担当者にこの話をして、資料を送り、東京に出てきたら弊社に寄って貰うようにした。

震災から1年と8ヶ月、当初は、物見遊山で出かけるなんてとんでもない、といったことで、視察旅行やボランティアツアーが数多く行われた。暫くすると、大きな国際会議などが、あえて仙台に場所を移して開催されたりもした。しかし、そうした動きの中でも、秋田、山形などの観光地は、大きな被害が出ていないのに、観光客が行くのを控えたりする現象がずっと続いた。まさに風評の風が吹きまくってきた。

もちろん、今後も、ボランティアなどの現地支援旅行も形を変えて続くだろう。また、震災被害を教訓に防災を考える旅行や修学旅行、研修旅行なども組まれていくだろう。しかし、風化という現象が進む中で、そうした動きも次第に縮小していくに違いない。

やっぱり、東北の魅力を伝える観光旅行が復活してこないと、宿も観光地も本来の復興には繋がらない。そして、観光は、裾野の広い産業だ。その地域の労働市場にも大きな影響を与えることを私たちは自覚しなくてはならない。兎に角、旅行会社の力量が試されている。

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

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