人間圏

つむじかぜ422号より


「人間圏」というあまり聞きなれない言葉を聞いた。理学博士の松井孝典氏によれば、産業革命以降、人間は駆動力を持つようになり、自らこの人間圏を膨張させることができるようになった。そして、革命以前に比べてその膨張のスピードと規模は、とてつもないものになり、このまま進めば、人間圏が全地球を覆い様々な歪が出てくるという。

以下「at home 教授対談シリーズ こだわりアカデミー」のサイトから転載する。

【松井】 われわれ人間は、地球というシステムの中に人間圏を作って生きています。人類は、狩猟採集という生き方をしている間は、あらゆる生命と同様に生物圏に属していました。しかし、農耕牧畜という生き方を選択したことで、地球システム全体の流れを変えることとなり、それは生物圏を飛び出して、人間圏という新しい構成要素を作り出すことに相当したのです。人間圏は、これまで続いてきた地球の秩序とは、全く異なる秩序を持ち込みました。

 ──人間圏ができたことで、地球上にいろいろな問題が起きたわけですね?

【松井】 そうです。人間圏は、地球システム内の物質エネルギーを利用することで維持されています。人間圏が誕生して数千年の間は、地球システムの駆動力の範囲内で生活するフロー依存型の時代が続きました。しかし現代の人間圏は、原子力、石油、石炭、天然ガスといった駆動力を人間圏の内部に持つストック型であり、地球上で自在に物を動かすことができます。つまり、地球全体の物質やエネルギーの流れを変えてしまい、さらにシステムの構成要素までも変えてしまっているのです。これでは地球上のものやエネルギーの流れが、われわれの欲望によって決まってしまいます。私達はもっと地球固有のフローの範囲内で生きていくことを考えなければいけないのです。

 ──フローの範囲内での生活とは、具体的にはどういった生活になるのですか?

【松井】 分りやすい例を挙げれば、江戸時代の生活です。江戸時代の人間圏では、降りそそぐ雨や太陽の光など、自然エネルギーを利用して生活していました。これにより、約3,000万-3,500万人が生きられる人間圏を維持していたわけです。こうした時代には、人間圏の大きさが変らないため、地球システムと人間圏のバランスがよく、すべての流れは地球が決めていたのです。

──われわれは一見豊かに暮らしているように見えますが、実は地球エネルギーを食いつぶしながら、ある意味これが豊かさだと、誤った思い込みをして生活しているわけなのですね。
(抜粋終わり)

100万年以上の長いスパンと宇宙規模から地球を眺めると、こんな考え方も出てくるらしい。とても分かり易く心の中にすっと入ってくる考え方だ。そして、私が、当たり前の事のように思うのは、3.11以降の気持ちの変化なのかもしれない。

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

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